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マ王のパンツはナニ色かっ!!  作者: サブまる
1/1

剣とバランス

数ある作品の中から本作をお選びいただきありがとうございます。

お楽しみいただけると幸いです。

 魔王、それは言わずと知れた魔の王。

 魔物という強大な怪物を従え、人を害することを喜とする厄災。


 長年魔物による甚大な被害を出していた人類にとって、魔王討伐は、悲願であった。


 人類は何度も魔王攻略を試みたが、死体の山を作るばかりであった。

 悲嘆にくれ、諦めムードが人類を支配していく中、一筋の光が現れる。


「必ず、皆の仇をとって帰る! どうか俺に力をくれ!」


 男の名はユズル。

 歴代の冒険者たちを圧倒する鬼才が、小さな村で誕生したのだ。

 村が長年苦しめられてきた魔物を粉砕し、周囲の村村を魔物の恐怖から解放して回った。


 人は彼を、勇気ある者、勇者と呼んだ。


 急激な成長と、驚異的な生命力を武器に脅威を払い除け、誰もたどり着くことの出来なかった魔王の城へとたどり着く。


 迷子になりながらも何とか魔王の元へ辿り着いた勇者。


「魔王!! 人類の誇りにかけ、貴様を討伐する!!」

「よくぞここまで来たな、その勇気を称え、貴様に褒美をくれてやろう」


 魔王は勇者を懐柔するつもりだ。予習復習バッチリの勇者は、魔王の傾向をバッチリ把握していた。

 何がなんでもその手には乗るまい、みんなの思いが託されているんだ、と、頭の中でみっちりと対策をしてきた勇者。


「……押し黙ってどうした?」


 勇者は赤面した。


 出るとこは出る、引っ込むところは引っ込む、の完璧なボディ。それを覆うのは、服としてはあまりに心もとない、申し訳程度に局部を隠す衣装のみ。スラリと伸びた脚は無防備に晒されている。


 魔王の格好は、田舎からでてきた少年には、少々過激であった。

 その結果、勇者は頭が真っ白になる。今まで積み重ねてきたものが、勇者の頭から消えてしまう。


「パンツを! パンツを見せて欲しい!!」

「……は?」

「魔王のパンツだ!!」


 勇者は男であった。

 そして、その男は1点の陰りもなく、まさしく勇気ある者、勇者であった。


「(……何を言っておるんじゃこいつは?)お前、何しにここに来た?」

「パンツを見せてもらいにだ!!」


(絶対違うじゃろ……)


「そのために、剣の腕を磨いてきた!!」


(な、なんじゃこいつ、やはりやる気か!)


「ほう? やはりわらわをころすつもりか? その鉄1本で何が出来るというのじゃ? にんぜんふぜいが調子に乗りおって」

「俺がゲームに買ったら、パンツを見せて欲しい!」


(ほんまにこいつはなにをゆうとるんじゃ?)


 おもむろに勇者は剣をだす。魔王は一瞬構えたが、それを他所に、勇者はその剣を床に置き出した。


「バランスゲームだ!」


(ほんまにこいつはなにをゆうとるんじゃ?)


 言うと、勇者は床に置いた剣に片足をのせ、


「こうして、」


 もう片方の足を持ち上げ、


「こうだ!!」


(いやわいの字バランス…)


「お前に誇りは無いのか……?」

「そんなものは無い! あったらパンツを見たいだのと抜かしていない!!」


(なんじゃこいつ、)


「誇りもへったくれもないヤツよのう」

「どうした。次はお前の番だぞ魔王!」

「王であるワレがすると思っているのか?」

「なんだ、逃げるのか? 負けるのが怖いのか」


 魔王の頬がピクンと痙攣した。

 勇者の挑発は成功したらしい。勇者が剣の上から降りると、魔王は一瞬で剣の上へと移った。

 今まで戦ってきた魔物とは明らかに違う異質な動き、勇者は一歩あとずさる。


「ふん」


 その間に、魔王は一瞬でYの字バランスを完成させた。

 これでわかっただろう、とその体勢を崩そうをした時、勇者が声を上げた。


「待て!! お前がほんとに成功しているのか、判定が必要だろう!」


 そういうと、足が上げられている方へと周り、腰を落とした。


「おい……これはなんの時間じゃ」

「お前がなんらかの不正を働いていないか、じっくり観察しているところだ」

「その割には一点しか見つめておらんようじゃが」

「うるさい!」


(は?)


「貴様、ワレを倒すのではなかったのか? 人類の誇りにかけだのなんだの威勢を張っていたじゃろ、今は絶好の機会だと思うが?」

「パンツを見た後に、倒したい!」


(決意から願望に下がっとるがな)


「パンツが見えない……」

「誇りもクソもどこに置いてきてしまったんじゃろうな。もうよい」


 次の瞬間、振り下ろされた魔王の脚は闇を纏い、突き出された勇者の頭に強烈にヒット。

 轟音と共に床がひび割れ、勇者の体は光となり霧散した。


「何じゃこれは!? まあ、居なくなったようで何よりじゃ」

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