全裸
またもやプロット置き
タイトル通りでセッ〇スという文字列も出てきますが直接行為の描写は一切ないのでたぶんR-15でも大丈夫だと思います。
大丈夫だよね・・・?
その日は雲一つない快晴だった。満点の青空が広がっていた。
「少年、君は私好みだ。セッ〇スをしよう」
ヤバい人に出会った。
不審者だ・・・と僕は思った。
発言もさることながら、そのお姉さんの恰好が問題だった。
お姉さんは黒髪のロングでとってもきれいだった。モデルさんみたいだ。
ただその身に下着すら身に付けてなかったのだ。
いわゆる全裸だった。
「あ!そこにいたか!!」
「待て!少年を襲うな!!」
向こう側からおまわりさんが追いかけてきた。
「ちっ、もう追いかけてきたか!検挙率目当てに適当な因縁をつけおって!」
現在進行形で現行犯だと思う。
「逃げるぞ少年!!」
「なんで僕まで!!?」
僕は全裸のお姉さんに抱えられ誘拐された。
「ふぅ、もうここまでは襲ってこないだろう」
お姉さんに連れてこられたのは薄暗い廃ビルの中だった。学校の先生が危ない人がいるから近寄っちゃあいけませんと注意する場所だ。
「よし、少年。セッ〇スをしよう」
お父さんお母さん先立つ不幸をお許しください。
「む、なぜそんなに嫌がる?まだ通っていないのか?心配するな。動いていればそのうち通うから」
お母さん助けて!!!!!!!
「嫌です、したくありません、助けてください」
か細い声だけどやっと声を出すことができた。正直に言うと、お母さんに隠れてネットで女の人の裸を検索したことは何度もある。その時はごくりと唾を飲み込んだけど今はそんな状況じゃない。危ない目に合うとエロより危険を告げる本能の方が勝つと今この身で学んだ。
「助けるも何も、私は怪しい者じゃあない。ただキミとセッ〇スがしたい女だ」
十分怪しい、というか100パー犯罪者だ。
「怪しいです」
「なぜだ」
お姉さんが聞き返してくる。こっちがなぜだと聞きたい。
「だってお姉さん、服着てないから・・・」
「服を着ていないとなぜ怪しいのだ?」
「普通に犯罪だと思います」
「なぜだ」
だからこっちがなぜだと聞きたい。
「みんな服を着て出歩いています。法律でそう決まってるからです」
「法律で決まってるから、みんながそうしているから普通なのか?もしかしたら法律やみんなが間違っているかもしれないのに?」
こういうの、聞いたことがある。危ない人の理論の常套句だ。
「大勢がそうしています。だから普通なんです」
「大勢がそうしてるから普通なのか?隣の人がそうしているから普通なのか?」
屁理屈をこねられて押し黙ってしまう。
「人間以外の生物は服なんか着ていない。みんな全裸だ。でもお互いを変だと言ったりしないぞ」
「動物は人間じゃないです。だからいいと思います。でも人間は動物とは違います」
「どう違うんだ?」
「計算ができます」
「動物だって我が子の数くらい数えられる」
「本が読めます」
「動物にも文字に似たやりとりがあるかもしれんぞ」
「お互いを思いやれます」
「動物には心がないというのか?」
何を言っても通じない。だんだん自分の方が間違っているように思えてきてしまう。
「君は案外自分勝手なんだな」
お姉さんはせせら笑うように言う。
「人間なんて金勘定ができるだけの獣なんだよ」
動物と何ら大差ない、とお姉さんは真剣に言う。
「それを理性だの尊厳だのといった屁理屈で隠して、自分たちだけが特別と無意識に思ってる。逆に動物以下の知性だ」
淡々と言う。でもどこか哀しそうだった。
「でも人間社会で生きてる以上、”普通”には従った方がいいと思います。全裸で歩いてエッチなことするなんてダメだと思います」
「なんでエッチなことがダメなんだ?」
「みんな嫌がるからです」
「食事、睡眠は良いのに?性欲だって生きるため、子孫を残すために必要なものなのに?」
僕はまた押し黙ってしまう。
「少年、よく聞け。今はそれが普通かもしれない」
お姉さんがその深い瞳で、僕を見つめてきて言った。
「今日の”普通”が、明日の”普通”とは限らない」
いや、あと10分もすれば大災害が起きて普通が壊れるかもしれない、とお姉さんは言う。
「たかが人間が数千年で紡いできたものなんて脆いものなんだよ」
お姉さんは未だ僕を見つめたままだ。
「でも今日はやめておこう。君もやりたくなさそうだし、私も萎えてしまった」
どうやら僕を解放してくれるらしい。不審者の言うことだけど、なぜか信頼できた。
「次合う時はもっとマシな世界で合おう」
そう言ってお姉さんは去っていった。
その日以降、そのお姉さんは現れなかった。通学路に不審者が現れた、なんて情報も聞かない。
もしかしたらお姉さんは存在しなくて、僕の中の異常が見せた幻影だったのかもしれない。
僕は退屈な授業を受けながら、快晴の青空をただボーっと眺めていた。
その数か月後だった。巨大隕石が落ちてきて、文明が崩壊したのは。
「お父さんムラムラするよー」
「お父さん。お姉ちゃんがセックスしてる最中にうるさいの」
「違うよ。この子が下手だからだよ」
「お兄ちゃん。次は私がお姉ちゃんとセックスするんだよ」
「お父さんとも久しぶりにセックスしたいな」
「お父さん」
「お父さん」
「お父さん」
「お父さん」
「お父さん」
「分かってるよ。順番にね」
僕は微笑みながら幾十人もの我が子たちを諫めた。
あれ以来、世界は変わった。今まで学校の授業で習ってきた道徳や倫理などは全く役立たなくなった。
様々なことが変わったが中でも変わったのは性倫理だった。今までタブーとされていた親子同士での性交、兄弟間での性交、同性同士での性交、他の家族間での性交をみんな恥ずかしげもなく行うようになった。人間としての道徳より、元来持っている動物の本能に皆従った。初めの頃は人間としての倫理を守ろうと言う聖職者めいた人物や団体が現れたが瞬く間に押しつぶされた。
世界は。常識は。普通は変わったのだ。
「今日の”普通”が、明日の”普通”とは限らない」
僕は昔あったお姉さんの言葉を思わず呟いていた。
「あなたどうしたの?」
「いいや別に」
「今日は私たちとやるんでしょ」
「早く、私もっと子供が欲しいわ」
「こんな世の中だし楽しい事なんてこれくらいしかないしね」
「早くしよ。今日はお向かいの旦那さんも入れてやるから気持ちいいわよ」
「ああ、今行くよ」
余計なことを考えている暇はないな。
幾人もの妻たちを満足させなきゃいけないんだから。
「久しぶり、ですね」
「前よりかはマシな世界で合えたな」