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骸骨と薔薇
辺り一面、雪景色。
空はどんより曇っており、小さな雪も降ってきた。
まるで世界に色が無くなった様だ。
もう100年は足跡が付いてないような雪の上を僕は歩く。
少し歩くと人間ほどの大きさの岩があった。
よく見ると、それにもたれ掛かるように座る白い人がいた。
骸骨だ。
その骸骨は動くことはなかった。
魔物にはなっていない様だ。
僕は骸骨に驚くことはないが、彼が大切そうに持っていた一輪の赤い薔薇には驚いた。
その赤い薔薇は、先程摘まれたと言わんばがりに艶を発している。
世界に赤が産まれた。
薔薇の花弁が一枚剥がれ、ゆたゆたと落下し雪に落ちる。
その瞬間、雪にふわっと溶け込んで消えた。
また花弁が一枚剥がれ、雪に落ちる。
ふわっと溶け込む瞬間だけ、雪が淡い桃色になる。
薔薇に目を戻すと一切の変化がなく美しいままだ。
確かに花弁は剥がれているはずなのに。
この薔薇が枯れることは永久にないのだろう。
骸骨が持っている限り。