わんダフルオンライン 4匹目
唐突な話であるが、とてもごきげんである。それというのも遂に転職可能なレベルまで上がったのである。
「尻尾が千切れそうですねー」
現在草原の道を歩いてる最中、青空が俺の気持ちを表しているようだ。本来であればアフロさんが案内してくれるはずだったのだが、準備している最中に来たエルフさんをからかい、アフロの中に埋めたリンゴに当てるという、ウイリアムテルごっことは名ばかりの拷問を受けて再起不能となってしまったのである。ハリネズミもびっくりするようなアフロになって倒れ伏したアフロさんを背景に私が案内するとにっこり笑うエルフさん、断る勇気はありません。
「遂にわんちゃんもポメラニアン終了なのかな?」
道を歩きながら声をかけてくるエルフさん、見上げると青空に浮かぶ雲が、今日は白か。
その後、見られたことに気付いたエルフさんが矢だの魔法だのを放ち続け、全速に近い速さで草原を駆け抜ける事態に。なんか外に出るとこうなる呪いでもかかってるのか俺は。
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そんなこんなでたどり着きました転職神殿、早速手続きを始めようとしたが、NPCに首筋を掴まれて外に連れ出されました。いや、違うし、俺プレイヤーだし、違…いや、撫でんな。助けてエルフさん!
そんな惨状を見て慌てて駆け寄って来て抱きあげてくれるエルフさん、いいぞ、がつんと言ってやれ。
「犬じゃありません!」
…いや、犬だよ。周りの視線があからさまに何言ってるんだ、あいつ的な勢いだよ、抱かれながら見上げると凄いドヤ顔。よく見ろ、神殿の人が凄い困った顔してるだろ。
困った時は呼ぶしかないな。メニューを開いてぽちぽちっとな。
「私用で呼び出すのはどうかと思いますよ?」
早いな、GMさん。そしてこれは踏まれる流れだが今日はエルフさんの抱っこ状態だ、隙はないぞ。
普通に手渡された。違うんです、仕様がおかしいから呼んだのですよ、犬と言われ…いや、犬なんですけどね、あ、待って足上げないで、踏まないでくだぷぎゅる。
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「調整完了っと、これで大丈夫なはずですよ」
ありがとうございます、GMさん。願わくば足を退けて頂けると大変嬉しく思う訳なのですが。
「迷える子羊…?子犬…?今日はどのようなご用件でしょうか?」
お前が迷うな。とりあえず筆談にて要件を伝えると、転職専用の記入用紙に確認事項を書いて番号札を取って待っていてほしいと言われた。どれどれ…
Q1.貴方は転職したいですか?
はいに丸印
以上で終了。…口頭じゃだめなのかこれ。
書類を書き終えて神殿(ほぼ役場)のロビーで待機、エルフさんに転職後のメリットなどを聞いておく。凄いと強いしか情報が増えない、薄々気付いていたけど残念な子なのを再確認しといると呼ばれたため、急いで指定された窓口へ向かう。
「お待たせ致しました、こちらが貴方の転職先一覧となります」
なんか受付のお姉さんがぷるぷるしながら見せてきたウインドウを覗くと…
芝犬
ビーグル
プードル
三毛猫
ちょっと理解が追いつかない。上3つは分かりたくないが分かる、犬だからね。最後の三毛猫ってなんだ、なんでレアなんだ。あれか、オスの三毛猫になるからか?なんだその無駄な細かさ、クリックして職業情報見てもどんな犬種なのか書かれてるだけだぞ。
受付のお姉さんがぷるぷるしすぎて腹筋が大変そうなのでサクッと決める、せっかくだから俺は芝犬を選ぶぜ!
《転職しますか?》
はいをポチッと
《今までの装備が使えなくなる可能性がありま…》
はいはい、おーけーおーけー
《本当に…》
おーけーおーけー
《仔犬からスタートとなりますが…》
おーけーおーけ…いや、ちょっと待って!?
《光が溢れた。
可能性を秘めた新たな旅立ちの始まり。
貴方の行く先が輝かしいものであるように…》
そんなメッセージと姿が変わり俺は…芝犬になってしまった。目線がポメラニアンより微妙に低い。
GMさんが指差しながら全力で笑っている、エルフさんは可愛いのが好きなのか目付きが怖い、受付のお姉さんは笑いすぎ、腹筋を壊してしまえ。
とりあえず動いてみるが、ポメラニアンより頼りない感じしかしない、これ戦えるのか…?
そんな事を考えていると我慢が効かなくなったエルフさんに抱きしめられる、見た目は美少女、膨らみもそれなりだが忘れてはならない、俺たちは冒険者だ。つまりどういうことかというと金属の胸当てに押し付けられて抱きしめられる、なんだこの拷問は、つか、おま、出る!出ちゃいけないもの出そうだから力緩めて!助けて、誰か!
転職
プロットが息をしていないのを感じます