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怪しげな動き

二日目の開始です。クラス転移ものではとっくに迷宮に入っていそうですが……迷宮の出番はまだ無いです……。


あ、偏見ですね。

◇◇◆◆◇◇ 

 一日を跨ぐ時間帯であっても王城の明かりは落ちない。実は、この城の蝋燭の灯りを消すことを禁じる決まりがあったりする。その蝋燭の火は魔力で燃やしている、かなり燃費がよく一度魔力を充填すると一月は持つ。


 そんな優しい明かりで満たされた廊下を一人の女性が歩いていた。金髪碧眼のメイドだ。何度も曲がり、階段を上がり下がりした後、あるドアの前に立った。

 それは分厚い扉だった。分厚い布や金属を合わせ、限り無く音漏れ対策を施したものだ。耳を当てたとしても扉の奥の音が聞こえることは無い。


 門とも言えるような扉を彼女は片腕で開ける。既に三十人ほどのメイドが集まっていた。彼女たちはイスに座って会話をしていたが、彼女が部屋に入るなり立ち上がり押し黙る。


 碧眼のメイドは彼女たちの上司、メイド長の役割が与えられている。彼女は部屋の奥にあるイスに腰掛け、ジェスチャーで座らせた。


「第一回情報交換会を始めます。では、クレールから右に続けてください」


 金髪碧眼のメイド長は右端にいるクレールを指名した。クレールは立ち上がり、報告を始める。


「はい、私はコウセイという少年の監視となりました。彼は『すまほ』なる板を用い、内部に人間や動物を取り込んでおりました。写真の一種だそうですが詳しくは分かりませんでした。そして先程の夕食会で使った睡眠薬は効いておりました。しかし、洗脳魔法の方は効かず、魔力ごと霧散させられました。魔力炉が活動していると考えられます。――私からは以上です」


 そう報告するとざわめきが起きた。異世界人が来てすぐに魔法に対抗したのだ。それは彼が魔法の存在する世界から来たことを示している。すると、同じ世界から来たと思われる十数名が魔法を扱える可能性が出てきたのだ。


 洗脳魔法は対象の霊的器官である霊核に作用し、思考回路の一部に影響を及ぼす魔法だ。霊核は精神や生命力に深く根付いている。それだけを聞くと凶悪な魔法に思えるが、実はそうでもない。


 なぜなら、洗脳魔法を含む精神魔法は他人に掛けられるものでは無いからだ。正しくは、条件が厳しすぎるために掛けることができない、だ。


 一つ目に術者が精神魔法の術式を知っている必要がある。そして、それを完璧に魔法陣へ変換する技能が求められるのだ。術式を魔法陣に変換することができるのは修練を積んだ魔法師だけだ。才能が重要で、出来ないものは一生出来ない。


 条件の二つ目に洗脳魔法は意識レベルが低い必要がある。睡眠や昏倒程度でなくては効果が現れない。


 三つ目に魔法の才能が全くない、あるいは魔力炉を稼働させていない生物であること。ここで全人類の九割以上が脱落する。人類にはもれなく魔法の才が与えられる。入らないのは赤ん坊や、魔力炉を壊した者だ。


 魔力炉は霊核を守る壁と魔力を精製し増幅させる役割を持った霊的器官だ。魔力炉の壁で外からの魔力を防ぐ。

 魔力炉を稼働させると内部では魔力の嵐というべき状態になる。そうなってしまえば精神魔法を使うための、無理矢理に注いだ他人の魔力はかき消されるのだ。たとえるならば暴風の中で紙飛行機を飛ばすようなものだ。

 

 既に煌生は魔力炉を使っているので洗脳魔法に対抗できたのだった。魔力炉が発現すると身体能力が向上する。異世界人はそれが顕著で一騎当千の強者にもなり得る。



 しかし、王国にとっては信用のできない爆弾であるため、メイドたちには洗脳魔法で鍵を掛けるよう大臣の一人に指令されたのだ。


 クレールの報告を聞いたメイド長は大きく頷いて、

 

「ありがとう、ではコウセイ様をどうにかして王国の益になるようにしてください」


「はい、了承しました」


 クレールは表情を変えず、お辞儀をした後一歩下がった。その後も報告会は続く。ほとんどの報告が洗脳魔法が成功していることを知らせた。その報告を聞く度にメイド長は頷いて、手元の紙に情報を書き込む。



 最後にリーナの番となった。


「私はアインという少女に付きます。彼女に洗脳魔法は効きませんでした。それどころか、術者である私を昏倒させる謎の魔法を返されました。昏倒したのは十分程度でしたがどのような系統の魔法なのかも分かりませんでした。それの影響のためか彼女に懐かれることになりました。――以上です」


 どこか無機質な声でアインのことを報告する。メイド長は不可解だというように、表情を変える。


「なつかれる……?」


「はい、依存されるほどでした。洗脳魔法が失敗したために魅了魔法に変質したのかと思われます」


 少し嬉しそうな声でリーナは答えた。

 

 アインに掛かっている魅了魔法というのは対象の霊核を通じて、精神に自身の魔力を与えるものだ。


 メイド長は彼女の様子を気にせず、淡々と答える。


「そうですか、反逆させないよう立ち回ってください」


「承知しました」


 感情のこもっていない声で返答をする。そうしてイスに座った。



 メイド長はしばらく手元の紙をにらみつけてから、顔を上げた。


「コウセイをはじめて洗脳魔法が効いていない人について、王国に反逆の予兆があれば容赦なく消してください。これはあなたたちの判断に委ねます。以上です、解散」


 メイド長の声と共に立ち上がり、メイドたちは部屋から出て行く。


「はぁ、何人消すことになるのでしょうか……」


 気怠げな独り言は誰の耳にも届かなかった。



◇◇◆◆◇◇


◆◆◇◇◆◆

 メイドの朝は早い。日が真っ赤に燃える時間帯には着替えを済ませて、掃除や衣服の選択を始めるのだ。

最初、王城に連れてこられて働き始めたころはよく寝坊したものだ。



 リーナは一人、綺麗にされた廊下を歩き、ある少女の元へ行く。可愛らしくどこか親友を思い出す少女だ。


「ああ、止めましょう。今は仕事に集中しなければ……」


 顔に陰りを作らないよう、にこりと口角を上げた。



 それからしばらく歩き、ある三桁の数字が刻まれたドアの前に立った。彼女の部屋だ。


 不思議と幸福感が溢れる。


――楽しいのでしょうか……いえ、私は彼女の……


 自分の感情を押し殺す。


 ドアを四度叩く。部屋の中から返事は来ない。寝ているのだろうと予想し、鍵を開けてドアを開ける。


「おはようございま――きゃっ」


 リーナは突然の衝撃に驚く。胸のあたりを見ると綺麗な黒髪が見えた。彼女は顔を上げて、煌めく双眸をリーナに向ける。


「おはようっ!」



「はい、おはようございます」



 にこりと微笑むと、ちくりと心が悲鳴を上げた。


感想や意見はいつでも送ってください。あと、批評してくだされば嬉しいです。文章がくどい、とか。


ポイントや、ブックマークの方も……(小声)


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