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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

異世界と青い鳥シリーズ

リオの回想録1 ―― 異世界と青い鳥番外編1

作者: グランロウ

 ボクはリオ。青い鳥の形をした魔法疑似生命体だ。


 これは、ボクの活動記録というか、回想録のようなものだ。

 人だって、日記という記録を残す慣習がいるだろう?

 それと同じだよ。


 ボクは、この世界で約二十年ぶりに眠りから覚めた。

 だから、これを機会に、少し記録を残しておこうと思う。


 誰かに見せるつもりなんかないけど、ボクは長い時間を生きるからね。

 いつか、この記録を読み返して、思い出に浸るってことをしてみようかと思ったんだ。


 だから、これは、未来のボクに向かって書く記録ということになるのかな?


 見ているかい? 未来のボク。

 君は、覚えているかい? この時のことを。


 そう、マイコの息子、トーヤに会ったときのことを、さ。


 ボクが眠りから覚めて彼に会ったとき、すごく甘くて美味しそうな匂いがしたんだ。

 だから、その時のボクの第一声は、こうだった。


「なんか、甘いおいしそうな匂いがするね。ボクにも一口くれる?」


 トーヤは固まってたね。

 ボクのことは、マイコから聞いていなかったみたいだから、仕方ないよね。


 眠りに付いていたボクは全く動かないのだから、彼にしてみればたんなる置物にすぎなかったと思う。

 それが急に動き出してしゃべったんだから。そりゃあ、びっくりもするさ。


 もっとも、ボクのほうは眠っていたといっても、様子は全て見えていたんだけどね。

 後日トーヤにそう言ったら、かなり動揺させてしまったみたいだけど。

 ふふふ、あの時のトーヤの動揺はすさまじかったね。

 落ち着かせるのに苦労したよね。


 マイコもちゃんとボクのことを教えておけばよかったのにね。

 ビックリさせようと思っていたのかな?

 いや、マイコのことだから、きっと素で忘れていたんだろうね。

 うん。きっとそうだ。


 でも、その後にマイコがトーヤに、あっちの世界を旅しておいでと言ったのは、実はボクもびっくりしたよ。


 いや、まあ、マイコがそう考えていることは薄々気付いてはいたんだけどさ。

 なにせ、マイコは以前、自分があっちの世界を旅したからね。


 それに、トーヤは十四歳の時だったかな、右目を悪くしてしまったからね。

 あっちの世界でなら、魔法を使って治癒できると思っていたんだろうね。

 もちろん、ボクもそう思っていたし。


 最初トーヤは、目の治癒には飛びついたけど、異世界の旅には消極的だった。


 トーヤって、実は引っ込み思案というか、一言でいえばヘタレなところがあるからね。

 でもそれを表に出さないように頑張る姿は、微笑ましいね。

 実際、トーヤのスルースキルとポーカーフェイススキルは、かなりのものだと思うよ。うん。


 トーヤが旅を渋るだろうことは、マイコもちゃんと分かってて、エサをちらつかせてたね。

 猫耳とかウサ耳の娘がいるんだよって。

 それですぐ乗る気になるトーヤもアレだとは思うけど、

 そうやってあっさり相手を誘導しちゃうマイコの方がちょっと怖いと思うな、ボクにはさ。


 まあ、ともかく、こうしてトーヤとボクは異世界に旅立つことになったわけだ。

 ボクにとっては、元の世界に帰るんだけどね。


 着いた場所は、ラカの東の草原地帯。マイコが指定した場所だ。


 まずはここで、トーヤの目の治療をしてあげたんだ。

 特に問題はなく、トーヤの目は治ったよ。

 トーヤは、しばらくそのことに感動していたみたいだ。

 ボクも嬉しかったよ。ホントに嬉しかった。

 ボクまで感動して、泣きそうな気分だったことは秘密だ。

 絶対秘密。だって恥ずかしいじゃん?


 荷物を整理しているとき、マイコから譲り受けた剣を見て、ちょっとトーヤが戸惑っているように見えた。

 この世界では、獲物を狩って食べ物にする。

 または、盗賊が出れば自衛のために相手を殺すことだってある。


 トーヤは平和な日本で暮らしてきたから、そういう世界の倫理観を持っているから、

 もしかしたら生き物の命を奪うということに抵抗があるのかもしれないと、それを見て思った。

 だから、まずは大足兎の狩りをしてみたんだけど、杞憂だったみたいだ。

 ……と、その時はそう思った。


 その後は近くの村に行ったんだ。

 小さな村で、最初にちょっと治癒魔法を使うハプニングもあったけど、

 その後は、トーヤもすぐに打ち解けていたみたいだ。

 村の子たちと薬草取りとか、若者たちと狩りだとかしていたね。


 で、問題はその後だ。

 村に五人の盗賊が現れた。

 この五人は、正直、雑魚だったよ。全然大したことなかった。


 最初は人質なんて取っていたけど、

 結局は、支援魔法のかかったトーヤにあっさり殺されていたからね。


 でも、ここからトーヤは苦しむことになってしまったんだ。

 そう、人を殺してしまったということに。


 あの時、ボクはもっとうまくトーヤを慰めてあげたかった。

 もっとうまく、苦しみから解放させてあげたかった。


 未来のボク。見ているかい?

 未来のボクになら、もっとうまく、もっと上手に、相手を慰めてあげられるのかな?


 ミリアと出会ったのも、ちょうどその時だったね。

 彼女は強かった。すごく強かった。

 あんなに強い人種に出会ったのはいつ以来だろう。


 トーヤだけではもちろん、ボクがトーヤに加勢しても、結局彼女に傷どころか、

 一撃も入れられなかったんだからね。正直、ちょっとへこんだね。


 だから、その後の彼女への言葉には、ちょっと意地悪が入っていたかもしれない。

 大人げなかったかもと、ちょっとだけ反省しているよ。


 でも、ここで彼女に出会えたことには感謝してる。

 いや、いくら感謝してもしたりないくらいだ。

 日本語の僥倖ぎょうこうって言葉は、まさにこういうことだと思ったよ。


 だって、この後、彼女と一緒に盗賊の本隊をあっさり壊滅させ、

 そして、最後にはトーヤを完全復活してもらったのだから。


 本当に感謝している。


 もし彼女に会えなかったら、もしかしたらボク達の旅は、

 始めて数日で中止とになる可能性だってあったんだから。


 トーヤが彼女に傾倒けいとうしていったことも当然だよ。

 それだけ、彼女の存在は、トーヤには大きいものだったから。

 彼女との別れ際には、トーヤは師匠とまで呼んでいたしね。


 それと、トーヤは、ボクのことを相棒バディって言ってくれた。

 なんか、ちょっと嬉しかったかな。

 ……ちょっとだけね。


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本編はこちらです。宜しかったらご覧ください。


異世界と青い鳥

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