一日目 〜セッティング〜
チュートリアルまで行くつもりでしたが、予定より長くなってしまったので、一度切ります。
教室に戻ると、それぞれの机の上に真っ白い箱が置かれていた。
机と同じくらいの大きさで、高さも70センチくらいありそうだ。
あの中にゲームが入ってるんだろうか。
「皆、席に着けー
各自目の前の箱を開けてみろ」
先生の言葉通りに箱を開けてみると、中からは一枚の紙、VRゲームをするためのヘッドマウントディスプレイとそれに繋がっている機械、PCとスマホを繋ぐためののケーブルが一本、そして輪っかのようなものが四つ入っていた。
「説明書が入ってるはずだから、それに沿ってセッティングをして始めていいぞ」
説明書……この紙か。
〜手順〜
1.接続デバイスにスマホを接続
2.感覚同期デバイスを両手首、両足首に装着
3.ヘッドマウントディスプレイを装着
4.接続デバイスの電源をオン
ふーん……。
接続デバイスってのがヘッドマウントディスプレイに繋がっているコレか。
よく見てみるとUSBの刺さる穴がある。
ここに自分のスマホを接続すればいいのか。
ケーブルを取り出し、接続デバイスとスマホを繋ぎ合わせる。
そうすると、スマホの画面が切り替わり、『読み込み中』と表示されていた。
ゲームをするためのアプリでも読み込んでいるのだろうか。
ま、いいや。
次の手順に行こう。
えーと、感覚同期デバイスってのが多分この輪っかみたいなのだよね。
輪っかを手に取ってみると、金属で出来ているのに意外と軽かった。
どんな素材で出来ているのか気になりまじまじと見てみると、表面に何かが書いてあることに気づいた。
『Left Wrist』
左手首?
あ、これ左手首用なのか。
他の三つも確認してみると、それぞれ『Right Wrist』『Left Ankle』『Right Ankle』と書いてあった。
危ない危ない。
これ間違えたら大変なことになっちゃうからな、うん。
……うん?
なんで大変なことになるんだ?
記憶を探ってみるが特に思い当たることもない。
何故、大変なことになるのか。
全くわからなかった。
「どうした、神原」
思考に割り込んでくる声が聞こえた。
佐原先生だ。
辺りを見回してみると、思ったよりも僕の作業が遅いようでほとんどの人がゲームのセッティングを終えていた。
「いえ……なんでもないです」
特に言う必要もないのでそう答えとく。
「……頑張れよ」
「え……?」
先生はそう一言だけ言って、立ち去って行った。
何だったんだろうか………。
……考えても仕方ないか。
気を取り直して、セッティングを続ける。
それぞれにあった場所へと感覚同期デバイスをはめていく。
不思議なことにサイズはピッタリであった。
特に拘束感も感じることはなかった。
次が確か、ヘッドマウントディスプレイの装着か。
ヘッドマウントディスプレイは頭全体を覆う程の大きさだけど、持ってみるとそんなに重さを感じることはなかった。
装着すると、目の前には透明なディスプレイでまだ何も映っていない。
当たり前か、電源入れてないのだから。
最後に接続デバイスの電源……と。
接続デバイスの電源に指をかけたが、指が動かなかった。
本当に僕はこのゲームを始めていいのだろうか。
そんな考えが頭の中を過ぎった。
僕には【才能】がない。
そんな僕が【Skill Of World】で【才能】を勝ち取ることが出来るのか。
いや……出来る訳がない。
だって……僕は『能無し』なのだから。
ー……頑張れよ
ふと、先程先生に言われた言葉を思い出した。
頑張れ………か。
そんな言葉言われたの、【才能】がないことがわかってから幼馴染のあいつ以外では初めてだった。
何を頑張れば良いのか、僕にはわからない。
けど……誰かが応援してくれるなら僕はそれに応えたい。
僕は指に力を入れて、電源をオンにした。
『ようこそ、【Skill Of World】へ』
そうディスプレイに表示されていた。
次こそチュートリアルです。