一日目 〜宣言〜
体育館に全校生徒が集まった。
いつも以上にザワザワしている。
「ねぇ、本当なのかな
【Skill Of World】できるって?」
「早くやりたいぜ!!」
「まだかなー」
「説明って何だろ」
どこもかしこもゲームの話題ばかりだ。
そうだよな。
さっき、いきなり話をされたばかりなのだから。
「あーあー
これから、緊急集会を始める」
放送で声が聞こえた。
そして、壇上のスクリーンに映像が流れ始めた。
映像には一人の男の人が映っていた。
何処かで見たことがある。
確か、有名なIT会社の社長だ。
「未来ある若者達よ!
こんにちは
私は【Skill Of World】の開発者、工藤総一朗だ」
工藤………総一朗……。
そうだ。
【才能】を可視化する装置を発明したプロジェクトの責任者だ。
そんな凄い人が作り出したのか、このゲームは。
周りの人達も気付いたようで、ひそひそと声がする。
「まず初めに言っとこう
夏休みの一ヶ月間、全国の高校生だけでゲームをしてもらう」
その言葉に不思議と全ての人が口を閉ざした。
全国の高校生………。
なんでだろう。
別に高校生じゃなくても良いと思う。
だって、【才能】は発現してしまえば、後は本人の努力次第。
だから、高校生より大学生とかの方がタフだし、頭だって良いはずだ。
「この映像は全国の高校に対して一斉に配信されている
何故高校生なのか、疑問に思った者も居るはずだ」
ドキッとした。
まるで、僕の考えを見透かされたようだった。
「それは、高校生が一番【才能】に苦しめられる時期だからだ」
胸がチクリと痛んだ。
心を奪われたかのようだった。
だって……その言葉は僕の今までをわかってくれたようだったから。
「小学生でみな、様々な【才能】を発現する
時期は人によって違う
それゆえ、小学生の頃はそこまで【才能】の差に苦しむことは少ない
しかし、中学はどうだっただろうか?」
中学……。
ーあいつ、【才能】ないんだって
ーえ、そんな人居るの?
ー『能無し』だ、あいつ『能無し』だよ
そうだった。
中学のときに『能無し』と呼ばれるようになった。
「だからこそ、そんな者達を救いたい
中学でその苦しみを味わっている高校生の諸君達よ
自分の【才能】の無さに苦しんだ者、悲しんだ者、絶望した者は居るだろうか?
この【才能】があれば、あの【才能】があれば、そう願った者は誰しもあるであろう
そんな者達の願いを叶えるために!
我々はこのゲームを作った!
己の力で【才能】を勝ち取り、伸ばすことができる夢のようなゲームを!!」
僕にも勝ち取ることが出来るのだろうか。
【才能】を……。
「さぁ、全国の高校生よ!
立ち上がるのだっ!!
夢と希望に満ちた未来へ!!
更なる【才能社会】の幕開けだっ!!」
その宣言と共に割れんばかりの歓声が響いた。
今までの静寂が嘘のようだった。
………くだらない。
夢と希望?
そんなもの、僕にはない。
次回からチュートリアルとなります。