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一日目 〜始まり〜

僕の名は神原勇気。

都内の高校に通う二年生。

学力は平凡、運動能力も平凡、突出したような特技もない。

だから、僕は周りから『能無し』と言われ、いじめられていた。

何故なら、僕には【才能】がないからだ。


昔は、『努力は報われる』とか言われてたらしいけど、今の世の中は【才能社会】。

誰しも必ず一つの【才能】を持っている、それが普通の人の定義。

大抵の人は【勉強の才】や【運動の才】といった誰でも持ちうる【才能】を持つ。

もちろん、人によってその【才能】のレベルは違う。

【国語】だけに特化してたり、【野球】だけに特化してたり、人によって様々だ。

けど、僕には一つも【才能】がなかった。


そのことに気付いたのは、11歳の時だ。

人の【才能】は10才までで決まると、そう言われている。

だから、11歳になるまでに【才能】の診断が義務付けられていた。


僕自身、特になりたいものも、夢もなかったから、【才能】に合わせた将来を選ぶつもりだった。

僕に両親は居ないから、親戚に連れられて病院へと確認しに行った。

そこで診断された結果は、【なし】という烙印。


そこから僕の人生はガラリと変わった。

【才能】がなくても努力で出来ていたことが、認められなくなった。

もっと酷いときは、そもそも【才能】がないと言うだけでさせてもらえなかった。

そして、僕のことを皆が指差して笑うんだ。

『能無し』と。




今日は夏休み前日、終業式だ。

クラスはどこか浮足立っていた。


当たり前か。

明日から夏休みなんだから。


そんな事をぼんやりと考えていると、一人の男が近づいて来た。

そして、それに続くように二人の男も近付く。

クラスメイトの木橋翔太と、ゆかいな仲間達だ。


木橋はニヤニヤしながら、僕の前で立ち止まった。

はぁ……また始まるのか。

こいつらも飽きないよな。


「おい、『能無し』!

明日から夏休みだな

なんか予定あんのか?」


「……特にないよ」


「そうっすか

俺たちは明日からプールに行く予定っすよ

ね、翔太くん!」


「おうよ

俺たちは皆【運動の才】持ちだからな!」


「ぷぷぷ

君も行く?行く?」


「ダメだダメだ

だって、コイツは『能無し』なんだからよぉ!

なぁ、みんな!!」


木橋の言葉を合図に、クラスの皆が笑いだした。

そう。

これが僕の日常だった。

毎日毎日、こいつらは僕のことを様々な事で『能無し』と言い、クラス皆で笑う。

まぁ、良いんだけどね。

こいつらが何を言おうが、僕に【才能】がないことは結局のとこ事実なんだから。

そのことは、僕自身が一番わかっているんだから。



キーンコーン、カーンコーン


朝のホームルームの鐘が鳴る。

それを合図にクラスの皆は一斉に動き始め、自分の席についた。


ガラガラ


ドアが開き、担任の先生、佐原聡が入ってきた。


あれ?

なんか変だ。


先生の様子がなんとなく可笑しい気がした。

何処か不安な様子……と言うかなんと言うか。

【才能】がないから、直感でしかないけど、そう思った。


先生は部屋を見渡し、全員居るのを確認すると、一度頷いていた。

そして、口を開き始めた。


「お前ら喜べ

遂に【Skill Of World】の発売が決定した」


先生のその言葉に、クラスメイト中が歓喜していた。

・・・僕だけを除いて。



【Skill Of World】。

国家プロジェクトとして開発されていたゲームだ。

たかがゲームなのに何故国家で開発されていたのか。

それは、このゲームが【才能社会】を更に加速することができる可能性があるからだ。

【Skill Of World】、直訳すると【才能の世界】。

詳しいことはわからないけど、【才能】をゲームの中で伸ばすことができる、そう宣伝されていた。



それにしても、『喜べ』かぁ。

なんか腑に落ちないな。

先程感じた違和感はなくなったけど、何故か言葉と表情が合わない。

そんな風に思った。

これも直感でしかないけど。


クラスメイトが落ち着いたのを見計らって、また先生は話し始めた。


「さらに言うとな・・・

このゲームのテスターに全国の高校生が参加することになった」


全国・・・?

高校生・・・・?


「え・・・先生、それって・・・・」


クラスメイトの誰かが訪ねた。

誰もが疑問に思っていることを。


「あぁ、そうだ

お前たち、全員だ」


その瞬間、部屋どころか廊下からも割れんばかりの歓声が聞こえてきた。

あ、そっか。

全国の高校生ってことは、他のクラスでも同じ話をされてるのか。


「全員かぁー

けど、あいつがやっても無駄だよな!」


突然、大きな声で喋り始めた奴が居た。

あいつ、木橋だ。


「そっすねー

だって、できそこないなんすから」


「ぷぷぷ

無理、無理」


ゆかいな仲間達も木橋に同調していた。

そして、クラスからもくすくすと笑う声が聞こえた。


そうだよな。

うん、僕でも思う。

どうせ、【才能】がない僕がやっても無駄。


パンパンッ


先生が手を叩く音が聞こえた。

これはクラスで僕を咎める声が聞こえた時によくやる先生の癖だ。


そう、この先生……佐原先生だけは良くわからなかった。

止める訳でもなく、僕のことを咎める訳でもなく、ただただ中立を守ってきていた。

まぁ、だからと言って、僕が佐原先生に期待することも、佐原先生が僕に期待することもないんだけどね。


「静かに

これから全校生徒一斉に説明がある

体育館に移動する様に」


そう言って、先生は廊下に出ようとした。


「先生!

いつからゲーム始めるんですか?」


その言葉に先生は一度動きを止めた。


「……もちろん、今日からだよ」


クラスメイト全員に届く声でそう言った。

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