強制テンプレを強要、圧政じゃないか、
θ
「ナルさん!!次お願いします!!」
(次で6人目くらいか?)
剣を持つと人が変わるらしい、これは本当だ。
気持ちが昂って 何人倒しても「足りない足りない」と頭が訴えてくる。
「ああ、じゃあ来い!」
「行きますっ!!」
ードォオオオオオンー
騒がしかった訓練所の空気が城からの爆発音で
シンと静まり返った
........へ?
兵士の目の前に映るのは半壊した王城と雷の巨人
そして足元の魔術師
そして唖然と立ち尽くすマルコ
「れい...や?」
珍しく黎弥が落ち込んだ顔をしたのでだいたいの状況は分かった。
「とりあえず行くか」
θ
「何をした貴様!!」
静寂を切り裂いたのはマルコの一喝だ
「いや....的に....全力でって...」
黎弥のビビリかたがハンパない
「まあ、いい貴様は相応の処分が待っていると思え!意図せずとも城を半壊させたのは重罪である!!」
「.....」
弁明しろよ情状酌量の余地があるかもだろ?
まあ、仕方が無いし?腐れ縁だし?
助けてやらないことも無いかな?
しゃあなし、しゃあなし
「ですが、黎弥の力を知らずに屋内で全力で魔法を撃たせた国側にも問題がありますよ?黎弥は指示を聞いただけです。」
まあ、言い掛かりだよな。
「そ、そうです!私からもお父様が帰ってこられたら掛け合います!」
ナイス!アイナ姫!!流石姫!
「し、しかし」
マルコ折れろ
「しかし罰が無しとはいかないでしょう。国王様が帰ってこられたら。双方落ち着く形で........」
てゆーか王城留守にすんなし
でも俺は結構落ち着いている、良くあったからな。そうだな、これと近い事件は『教会炎上事件』か、
「では、王城の客室で待っていてもらおう。王城と言っても半分無いがな。」
めっちゃ睨むマルコ
「わかりました。」
万引きがバレて母親を呼ばれるような気持ちだろうか?
「なあ、ナル?俺死ぬの?」
この重たい空気の客室に追い討ちを掛けてくる黎弥
「死ねよ」
あ、駄目だ涙目だ
「でも、まあ、お前が馬鹿なのは生まれつきだから、よく言うだろ?馬鹿は死んでも治らねぇって、だから死なないように頑張れよ」
「うん....」
「どーせ死んでも向こうの人に迷惑かけんだし」
「うん、」
「いつもなんとか凌いで来たしな。今回も大丈夫だろ。」
「なあ、ナル死ぬ時は一緒だよな?友達だよな?」
「な訳あるか!俺何もしてないし!」
「うっ.....」
「極刑は無いな、姫様が味方なんだから」
「あ、だから楽観的なんだな」
納得したように頬を緩める黎弥
それよりさっきから気になる事がある。
窓の外の巨人だ
いつまでいるのだろうか、
「黎弥?あれって仕舞えないの?」
「出来るけど次いつ出せるか分からないからな」
結構気に入っていたんだな。
θ
王城に1台の白い馬車が到着した。
馬車から降りる国王は夢を見ているのかと手の甲を抓る
「なんじゃあ.....?」
国王を混乱させているのは、崩れた砂山如き王城と 雷の巨人だ。
そして国王を迎えるマルコ
「城に入ってから説明致します。」
「わ、分かった危なくは無いのじゃな?」
「大丈夫です。」
王様はいつもとは、違う雰囲気のマルコに戸惑うも、城を一瞥し心の中で自己完結させる。
θ
「王様が帰ってこられた!!玉座にて待っておられる!早く来い!」
「あ、今行きます」
と、黎弥の手を引くが動く気配がない。
「やだ、」
子どもか!!
埒が明かないので小さな声で耳打ちをする
「死刑になりそうだったらお前の魔法でバーンとすれば良いんだよ」
我ながら最低なことを言う。だがこいつを動かすためには大事な事だ
「そ、その手があったか、」
間に受けんじゃねぇ
「行くぞ」
「ああ、俺はさながら死地へ赴く戦士だな!」
「そうだそして裁判所へ向かう犯罪者だよ」
θ
「ほう....お前らが....話は聞いた。」
「はっ!」
「魔術師、面を上げぃ!」
「わしは、この件を聞きどう落とし前を付けてもらおうか考えておったが魔術師貴様の所業、不問とする!!」
「それは!!」
声を上げたのは装飾が豪華な鎧の兵士だ
兵士の癖に発言権があるとは、
「まあ待てぃ、それには条件があるがな」
「条件とは、」
相変わらず何も喋らない黎弥の変わりに俺が聞く
「生涯この国から出ることを許さん」
「わ、分かりました」
「そして、貴様らには冒険者としてこの国の為に働いて貰う。その力、国の為に使うのだ」
まあ、思っていたよりは悪く無いかな?うん、いいだろう
「その条件、承りました。」
「ほれっ、これで暫くは暮らせるじゃろう貴様らの活躍期待しておる」
そう言って投げたのは金貨の沢山入った革の袋だ
「おい、ナル」
「なんですか?マルコさん」
「その阿呆お前が面倒見るんだぞ?」
「大丈夫です。十年以上の付き合いなんでハハッ」
今回の件はほんとに笑えないからな
θ
とりあえず王城を出て巨人を仕舞ってから向かったのは、冒険者ギルドだ。
冒険者ギルドにはいくつかの派閥があり、この国はギルドの数がかなり多いらしい、有名なギルドには優秀な冒険者が集まり規模が小さくショボいギルドには相応の人しか来ないのだ。
俺らが向かうのは、中堅くらいのギルド 駆け出しから優秀な冒険者まで様々ななランクの依頼が揃うギルドだ
「とりあえず宿探すか、」
「ギルドに行くべきだ」
「うるせぇ宿だって、言ってんだろ!!」
これは剣を持ったからじゃない、昔からこいつがやらかした後は、我が儘を一切聞かない事になっている
「おい、あの宿とかどうだ?」
名前は【精霊の宿】
どんな精霊がいても心の準備は出来ているはずだ。
「なかなか綺麗じゃあ無いか、いいだろうあの宿で折れてやろう」
早くギルド行きたいだけなのは分かっているから敢えて突っ込んだりしない。
戸を開けて中に入る
受け付けは、おっさんだ
おっさんの精霊がいる。
良く見ると普通のおっさんだ
宿の名前に騙された
期待なんてしてないがな、ただ美少女精霊の受け付けは夢があるなぁ、とか考えていただけだ。
だけど戸を開けるとおっさん、これは想定内なので全然落ち込んだりしない。
でもこの宿は没だな、違う宿を探そう、
「って、勝手に部屋借りてんじゃねえ!!」
「ええ!?」
流石に黎弥も困惑している。
落ち着け、大丈夫だ別に受け付けがおっさんだから宿を変えたかった訳じゃ無い。だからここでもいいだろうOKだ。
だがまあ、希望を言えば受け付けは美少女が良かったかな。
妥協するのが出来る大人だ。
「お父さーん!」
店の奥から聞こえて来る可愛い声
神は俺を見捨てなかった、
いや、神はあいつか
「店番変わるよー」
「おう。」
ダッダッダッダと忙しない音を立て走って来る美少女
「あ、お待たせ致しました、本日は、何泊のご予定でしょうか?」
おっさんの相手をしてそのまま美少女とおしゃべりしようとした黎弥を突き飛ばす
「最大何泊できますか?」
と金貨2枚をカウンターにそっと出す
「当宿は一ヶ月までとなっております。一ヶ月お泊まりになる場合、金貨1枚と銀貨50枚になります。」
15万くらいか?高いな、いやそんなもんだろ。
宿暮らしとかどこのブルジョアなんだって話だ
「じゃあそれで」
お釣りを貰い渡された鍵の部屋へ向かう
「まあ、とりあえずギルド行くか」
「そうだすぐ行こう」
「分かった分かった」