合宿初日
何事もなく終わります。短いです。
「着いたぞ、ギン」
俺はゆっくりと体を起こす。眠い目をこすっていると、アズサが少し困惑したような、怯えたような表情をしている。
「何かあったのか?」
「いや、盗賊が出てきたんだが、」
「うん?」
そんな話は知らないぞ。というか何で起こしてくれなかった。
「ギンが眠ったまま調教してくれたから何事も起こらなかった」
「俺いつの間にそんな事してた!?」
「え、覚えてないのか?…アイアンクローしながら投げ飛ばして理不尽な暴力振るってたのも?」
「夢の中でイラっとした気がするけどそれ以上は覚えてないな」
アズサが深々と溜め息をついた。どうやら安堵のようらしい。いつもの格好にチェンジして、俺たちは馬車を降りた。
広がるのは、絶景。午後になって沈みかけた夕陽が、一段と美しい。潮風がふわりとアズサの髪を靡かせる。
「アズ、綺麗なとこだな」
「いずれ日が沈む。日が落ちてからは荒くれ者、ナンパ目的の男が現れやすいが、問題を起こす訳にはいかない。早めに施設に行く方がいいだろう」
「それもそうだな」
宿泊施設には日がくれる前に到着できた。エントランスホールは白い大理石を模造した建材で概ね作られている。中央の階段を登り切った後、指定された部屋番号へ行く。
アズサと俺が同室だというので、結構楽しみである。
「……」
「あっえっここって空室じゃなかったの!?」
慌てふためいたコズモが今自分が半裸である事も構わず喚く。
「俺たち238番の部屋だって言われたんですよ~」
「ここ238…えっあっのうごめんなさい!?」
俺は扉を笑顔で閉める。アズサが「何でそんなに飄々としているんだ!?」と言うのだが、正直ロリコンじゃないからわからん。
「大体あんなつるぺたのちんちくりんを覗いて楽しい奴がいると思ってるのか?まだアズが着替えてるのをのぞく方が楽しいね」
「そっ…」
あれ、アズサが五歩の距離を一瞬で飛び退いた。
「言葉の綾だって!というかアズは友達だからな!?嫌がらせする訳ないだろ、おちょくるけど!」
「最後ので台無しだぞ!?」
あれ、アズサこんなに激しいツッコミ出来たっけ?
「とにかく、先輩と謝罪をして、勝手に部屋を使われたことを抗議。不可抗力だ、責任は問われないだろう」
と、バァン!と扉が開いてコズモがすう、と大きく息を吸って俺を涙目で睨みつける。
「というか!覗いて!普通に会話してる時点でおかしいよ!?私の純潔返してよ!死ね変態覗き魔!」
一言も口を挟ませてくれないそのお怒り(理不尽)に少々頭痛がする。わらわらと人が集まってくる。ああこれ面倒になるパターンだ。
「で?そちらの言い分は」
今だに名乗らないで「生徒会長だ」とボケをスルーされる生徒会長は俺を尋問している。
「俺たちは伝えられた部屋番号にあった通りに部屋に行って扉を開けただけです。無実です!」
「うんうん、大体センパイ小さいというかむしろ抉れてるじゃないですか」
「だっ、誰がクレーターですってぇ!?確かに胸はないけど!」
「えっ俺胸の話なんてしてませんよ?」
コズモの顔が真っ赤になる。
「今の抉れてるってのは身長のことです」
「ひ、人が気にしてるのに、的確に傷をつついてくるぅ…」
「俺はセンパイの体には興味ありません。的確なツッコミセンスだけが取り柄なんですよ、おちょくられてる上級生の自覚を持ってください!」
「えっ!?あっ、はい」
「傷つきました。謝罪を要求します」
「何で私が謝らなきゃ、」
「子供の所業に目くじらを立てて寛容さがありませんね?あぁ出来ないですか、ちんちくりんのお子様にはオトナの対応なんて」
「でっできるもん!!ごめんなさい!」
「俺に罪はないと」
「ええ子供の所業なんて見過ごすのがオトナだから!」
「よっしゃ無罪放免!というわけであの部屋俺達のものですよ、俺たち以外の私物は廊下に放り出しておきます!」
「なっ……もしや私騙されたの!?」
そうです。チョロかったコズモセンパイ。
「ふぁー…ベッドにダーイブ!」
「まだ寝るのか。シャワー先に使わせてもらうぞ」
「うい」
俺は部屋をぴっかぴかに磨き上げ、大満足である。
「明日からの訓練、ねぇ。三年の一人くらいまともにやれんだろ」
俺はまだこの時学生の訓練がいかに甘っちょろいかを知らなかった。
ギ「なんでコズモなんだよ」
作「え?ロリだよ?ハァハァペロペロしないの?」
ギ「……作者が紳士だったか」
次回はギンが内心でブチ切れます(予定)




