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入寮日と方向音痴と

入寮日のお話です。


***

文体を修正しました。

入寮日、俺は簡単な荷物を持って新しめの寮の前に立つ。レンガはまだ真新しく、蔦もない。アークとじゃ大違いだが、新設されたとこなんだろ、と考え、中に入る。


受付の爺さんは俺の名前を聴いてやけにニコニコし、「いやあ、噂の新入生最高得点の」とのたまった。内密に、と言うと「上からも普通の部屋に、ってお達しなんだよねぇ」とぶつくさ言った。


鍵を受け取って中を見ると、寝る、勉強するには十分なスペースだ。一回だから物を落としても怒られないし、これはいい。


入寮時にもらった案内の紙を見て、大体の構造を把握し、布団へダイブ、否それを出来るほど時間はない。転移魔法である六構築魔法を組み上げ、ギルドの自分の部屋に移動する。仕事が溜まっているから、抜けるのも一苦労だ。


黒いコートはギルドの意匠である白い羽根を引き立たせる。それをなびかせつつ金に変えていた髪を銀色へと戻す。上げていた前髪をざんばらに戻し、前に垂らすと後ろの髪留めを外した。


「さてと、仕事仕事」

俺は執務室へと向かう。途中気づいた人たちが礼をしてくるが、ちゃんと返礼していく。と、副班長であるアリサ・ターナーがきっちり30度の礼をした。


「お早いお戻りで」

「夕食は七時からだが、六時半には集合して寮規則を読み合わせるらしい。馬鹿らしいから出たくはないんだが、規則だからな。夕食を食べた後に馴れ馴れしくしてくるやつがいなければすぐ転移してくる」

「分かりました。時に寮は綺麗でしたか?」

「そうだな、新しくはあった。だがやはり家と呼べるのはここだけだ」


アリサはにっこり微笑む。

「私は第二の故郷、くらいでしょうかね。門が誰かさんのおかげで使い放題ですから、行き来が大分安上がりです」

「そういえば椅子の下に仕掛けてたんだったな、装置?」

「……そうだったんですか?」


空とぼける部下に、俺はこめかみグリグリをすると素直になった。


「…相変わらず容赦のない」

「あってたまるか。お前らのようなやつに手を抜けるほど甘いと思ったか?」

「いいえ。それでこそ、ギン班長ですから。そういえば、変装中の班長はどんな感じなんですか?」

「何で?」

「職場見学、五年前から騎士団ではなくギルドに変更されたんです」



マジ?



「何でも冒険者志望の若者が急増して、騎士団の規律あふれる生活より魅力的だそうです」

「俺顔見せしてないから全然知らなかった…てか一番ヤバイじゃないかその状況」

「ええ。広報部は『いっぺん死んでこい』と大笑いしていましたが」

よし、処刑決定。

次々と判を押しながら、俺は遅いくる眠気と戦った。




「間に合ったか。えーと、食堂食堂…」

「すまないが、道に迷ってしまって」


声をかけて来たのは、少女と見まごうばかりの美少年。華奢な体躯、切れ長の瞳、ポニーテールの黒い髪。


「あ、俺はギン・アシュレイ。食堂は確かこっち」

「アズサ・ヤヨイだ。すまないが手を貸してくれないだろうか?……迷うので」

「お、方向音痴?まぁ大丈夫だよ、人に聞きさえすれば迷うことは……そいつが方向音痴じゃない限りあり得ない。さ、着いたよ」


既に生徒が多く集まり、ざわついている。広いが、アークの食堂ほどじゃない。二人が席に着いた数分後、入り口のところに主人公オーラを感じて振り返る。


そこには超絶美形がいた。

俺も顔としては可愛いのカテゴリでまぁ上の方と言った感じだが、清楚系美男のアズサと精悍系美男のこの男。

存在意義消えるぜまったく。


「ヤヨイじゃないか!こんなところで会うとはな」


「誰?」

「…超えるべき相手だ。レギオ・ブラッドレイ」

「そっか~、ライバルか。熱いね、青春だ」

「座らせてもらうぞ。そっちは?」

「あ、初めましてギン・アシュレイだよ。Eランク、見かけによらず勤勉な方だよ」

「そうみたいだな。俺はもうBだから、アークで試験を受けようとも思っているが、五月の職場見学が終わってからかな」

「Bとはすごい!(俺はいきなりAからだったからすごさがわかんないや)アズサは?」

「BB…だな」


BB、Bの下か。だが俺の見たてでは潜在能力値的にはアズサの方が上なのだが…多分、たどり着けないことがしばしばなのだろう。褒める言葉をほぼ棒読みで申し訳なく思うが、二人は照れているのか気にしていない。


「二人ともすごいなー、俺も頑張ろっと」

「良ければ手伝うぞ、今更ちまちましたポイントはいらないし」


レギオの提案を首を振り断る。周りからはちょっとした非難の声が上がる。だからこいつ誰なんだと叫びたいのを抑えて俺はにこやかに言う。


「せっかくだけど自分の力で何とかしてみたいんだ。Bなんかがいたら頼っちゃうよ」

「そうか。上昇志向はいいことだ」

「周りをみてると本当にそう思うよ」


◯班メンバーと同列になるなんて絶対いやだ。あいつらは嫌いではないけど、心を許せるほど甘ったれた関係じゃないし。


「さてと、みんな注目!今から寮の規則について説明するよ。俺は寮長で風紀委員のダニエル。じゃあ、いきまーす!」


1、門限は九時、消灯と同時。外出届けを出せば、基本は大体自由。

2、飲酒喫煙は未成年は禁止、未成年の部屋でも禁止。(成人は18だ)

3、女子寮への無断侵入は禁止。リンチを受ける覚悟があれば…。

4、パーティーなどは、食堂などで行って良い。部屋で行い苦情が来た場合、その部屋での集まりを禁ず。

5、消灯になったら自室へ戻ること。見回りはないが、騒いだら厳罰。


などなど実に普通のことばかりだ。

と、二人が話題を振って来た。


「レギオが主席だったんだが、どうも主席はレギオじゃないらしい」

「そうなんだ。てっきりそうかと思ってたら、どうもあやふやなんだよな。誰だと思う?」


「えーと、俺かな?」

「「それはない」」

ひどいなあ。事実だよ事実。認めたくはなくても。


「一体誰なんだろうな」

「やだなー、こういうのは謎だから楽しいんだよ。気楽に行こう気楽に」

そして俺は話し足りなさそうな二人を置いて、おやすみと告げ眠りに…入らず、鍵を閉めて転移。




「で?言い残したことはあるか?歪曲して彼女に伝えるが」

「勘弁してください!」

土下座しているのは、俺の班のフーチ・ヤオである。


「ヤオ、お前書類の提出のたびに状況報告が曖昧で班員に指示を出し切れてないのを絵日記でごまかす癖は直せと言ったよな?」

「すいません」

「土下座するなんてプライドないのか?15の少年に」

「班長の前でプライドかざすなんて不可能です」

「そうか。だが覚えておけ、無理に手を出して悪化させるより頭を下げたほうが解決しやすいこともある」


きょとんとした顔をしてフーチが言う。

「班長プライド論は?」

「そんな奴らに頭を下げて折れるプライドなど存在していいはずがない。第◯班メンバーは少なくともそうあって欲しいね」


俺はせせら笑い、「書き直し」と紙を突き出した。

次回、入学式とクラス分けなどなど。

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