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スカウト、狙うは黒幕

スカウトします。


***

文体を変更しました。


「班長!いったい何があ…ブラックドラゴン!?なんでこんな綺麗な死体なんです!?」


「うん?あぁ、手加減の練習してな。というか、俺がこれを引きずって来たこと自体常識的な重さじゃあねぇと思うが?」


と、ぴくりとドラゴンが動いた。

「生きてるじゃないですか!?とっ、とどめは!?」

「あーそれがさ。レム」


しゅるしゅると黒い体が縮んでいく。そして皆が注目する中、それは可愛く「きゅっ!」と鳴いた。


「というわけで、ドラゴンの調教に成功してしまった」

「「「はああああああああ!?」」」



「予想外、いやもうむしろお前なら魔物の一匹くらい、と思っていたが…まさかのう」


「活水拳でフルボッコにしただけなんだけど」

「きゅー!きゅきゅきゅう?」


こいつが何を言っているかが頭の中に響く。

「今は俺の魔力食って生きてるから平気だと。飯は要らないから捨てないで!だそうだ」


うるうるの金色の目がこちらを見る。全然魔力食われてる気がしない。黒い鱗が俺の肌にざらりとした冷感を与える。


「ただ、問題は学校行ってる間な。こいつ連れて行くといろいろ問題が起きるんじゃあなかろうか」


「魔物をテイムするのはよくある話じゃよ。その見かけなら、『レサーリザード』の変わり種くらいじゃろうな。テイム成功者はDランクに三人いる。お前も一個くらいランク上げておけ」


「げー、またとやかく言われそうだな。仕方ねぇな」


テイムした魔物である証の首輪をもらってレムにつける前に、はたと思い至って一つ魔法を加えておいた。



寮に戻ったのは夕方六時半。ちょうどいい時間だ。俺が肩にレムを乗せて帰ると、管理人がギョッとした顔をした。


「あ、すいません。テイムして来たんですけど」

「へぇっ!?そんなぁ、餌とかは!?」

「こっちで用意するんで」


と、アズサが珍しく現れた。というか、うろうろしていたら今朝から部屋に戻れなかったらしい。

「アズ!」


俺が手を振ると、気がついて駆け寄って来た。

「202なのは分かっているんだが、どこだか分からないんだ!」


「ちょ、落ち着けってば。まずはレムをここにいさせてもいいかって事なんだけど」

「ああ、構わないよ。だが万一暴走なんかしたら止めるのはあんただからな」


俺は「んなこと分かってますって!」と軽く言うと、アズサに向き直ってニッコリした。

「ちょい相談。いい?」



「…ブラックドラゴン…もう俺はとうに常識を捨てたと思っていたがな…思い込みだったか」


「レム、これアズサ。呼んでみ?」

「アズぴゃ!」

「アズでいいか。俺のことはギン」

「ギン!アズ!」


ひゃっほーい!なんかかわいいから俺的にはありだぜ!

「レム!アズ!ギン!」


親の気持ちが分かる気がする。だがこいつも戦闘に役立てなければ死んでしまう。ある程度はモノにしておこう。


「そうだ。活水拳の修行も同時に出来て、何とか対アリサくらいに抑え込めたぜ!」

「それは危険だな…」


「班員に教える事はできないけどな。一撃の反動で死んじゃうからなぁ」

「レム、ギンが無茶しないように頑張ってくれよ?」


「レム頑張る!」

「良い返事だな。よし、お前に何ができるかをまず調べ…その前に夕食だな」


俺達は部屋を出た。が、その前にはレギオを筆頭に数人が立っていた。


「レサーリザードをテイムしたって聞いたんだ。見せてくれよ!俺も一匹、スネークヘッドをテイムしたことがあるんだ。今は連れてないけど、実家で飼ってる」


「レム」

「きゅっ!」

「おぉ!」とどよめきが上がる。俺はそれに苦笑いすると、首に巻きついて来たレムをピンと人差し指でつつく。


「あんまり構うなよ。テイムして間もないし、暴走したらコトだかんな」


「ああ。テイムした魔物の連れ込みがOKなら、俺も連れてくる事にするよ!」

嫌な予感がひしひしとしたのは、黙っておこう。



「生徒会メンバーになればそのトカゲさんもいいところに住めますよ?」


「はぁ…コズモせんぱーい、言ってるじゃないですか。おーかーねー。それにアズはランクアップ。忙しいんです~」

「その割には学校では暇そうじゃない?」


「お願いするときだけ丁寧口調か。こりゃあ人を落とすのに使われるわけだ。俺達はマジで忙しいんです。学校でしかこんなダベった会話できないからここでは緩みまくりなんです。俺が本気で学校来てると思ってます?誰もが何をするにも真剣であることを求める組織?俺そんなとこ興味ありません、今はオフ中です、休憩時間なんです。ボランティアするほど暇じゃないってわかります?頭悪い?見た目だけじゃなくて脳みそまで子供?」


青い目にみるみる涙が溢れ、唇は真一文字に結ばれる。スカートを握りしめた手は、震えていた。


だが俺はそんなことを気にするお人好しではない。


「泣いたら何でも無罪放免になるって思ってんの?俺たちの唯一の休み時間を奪って謝罪の言葉も無いの?生徒会メンバーに誰もが喜んでなると思った?それとも全部?」


答えは三十秒間待ってなかった。


「答えないなら消えて。引きずり出されたいならぼうっと突っ立ってていいけど」


耐え兼ねたようにコズモが走り去ってゆく。


「少し言いすぎじゃないのか?」

「あれくらい言わなきゃ、今頃生徒会室。今これだけ言えば、コズモ派や俺の暴言を聞いてたとこから噂が広まって、俺を生徒会メンバーに勧誘することは自動的に不可能になるって寸法だよ」


「まさかそこまで計算して…」

「まぁ大方俺が小さい女の子やら子供には甘いと思ったのかな?甘そうに見える?」


「軽薄そうには見える」

『まぁ否定は出来ナイ』


「レムまでひっど!今までの暴言の中ではトップクラスに傷ついたお…」


俺が甘いのは俺の手の内にあるモノだけだ。レム然り、街の人間然り、俺を頼り必要としてくれる者。だが俺を利用しようというやつは嫌いだ。俺を使い動かそうとする者。レオナルドはまだ許せる。

だが生徒会長は違う。


本気で俺を、コマの一つにしか思っていない。レギオという男の要望を通し、大荷物二つ抱えてもレギオのこれから先の必要性を示そうとした。


気に食わないが、頭にしては上手く部下を使う。アークに出来た情報班のメンバーには合っているかもしれない。


そして心配なのは、何も考えずこれをやっているのか、もしくは確信犯なのか。そしてこれを指示したのは本当に会長なのかどうか。


「それさえわかればいいんだけどなあ」

俺は罵声のなかでため息をついた。



「なあレム、闇の眷属ってまだ使えるか?」

『テイムされても基本スペックはかわんないナ。一体呼んでみる』


ふわ、と黒いマリモが宙に浮いて、目を開ける。赤い目玉がぎょるりと動いてこちらを見た。


『生徒会長の部屋の監視だろ?さっき俺に指示してた』


「ああ。よろしく頼むよ?」

『なーんか、狂戦士って感じしないんだよナ』


俺はそう言ったレムの頭を親指の腹で撫でた。



「そうか。うし、引き抜こう」

俺がそれを決定したのは生徒会長が副会長にアドバイスを求めた瞬間だった。


「断られたという事だが、どうしたらいいと思う?」


「そうですね。相手はこちらがレギオの必要性をアピールしたい事に気がついているのかもしれません。あの男は軽薄そうに見えてアークに勤務しています。それよりもまず、馬を射る方が楽でしょう」


「……何だか知らんが任せた」


というわけで俺は今、副会長にの部屋をノックしている。


「はい、どなた…君は、」

「要件は別にあるんだ。乗る?」

「話を聞こう」


俺はベッドとデスク以外簡素な部屋を見回す。整頓されたというよりは、モノがないという感じだ。


「そちらの用件は?」

「一連の勧誘騒動、黒幕は副会長さんでしょ?」


「なぜ?」


「俺が今ここに来て、勝手に交渉してるのに生徒会長を呼ぶ気配すらないから」


「全員にやる気だったのか?」

「まさか。コズモ先輩はあり得ないし、レギオはそんな脳味噌ないよ。俺はあんたという可能性にかけたーー結果は上出来。裏もとったけど、そっちは勘弁してね」


ふうう、と彼は大きな溜息をついた。まるで一年分の苦労を全て吐き出したような溜息だった。


「君は、人気者の友人に囲まれてずいぶん好き勝手やっているようだが、それが羨ましい」


「いいや、お前は楽しんでいたはずだ。情報戦術、人心掌握、傀儡の操作。全てを裏から操り楽しむのが好きな男だ。そしてお前は思っている、学園を一つ掌握した所で一体俺に何が残るのかとも」

「見透かす様な口ぶりだな」


「見えるさ。そして加えて思っている、もっと大きな動きを統御してみたい、数多の人物が自分の手のひらで踊り狂う様を」


「…君は一体ここに、何をしに来た?」


「なあに、あんたの就職口を一つとっといてやろうかと思ってさ?」

「就職口…アークに?だが俺のランクはCだ、戦闘も得意では、」


「情報班が今年から組織されてね。人は少ないしまだ機能できる状態でも無い。引き抜くにもあんたみたいに傀儡を使って上手く隠蔽し切っている奴がざらだ。今回もあんたは上手く隠しおおせていたーーそして俺が懐疑主義者であることを除けば、あんたの考えは上手く進行しただろうが」


「情報部…いいとは思うが、所詮できて口添えだろう。お前一人にどうこうできる問題じゃない」

「あ、それが違うんだよなー。ちょい目ぇつぶって」


俺は驚く副会長の手を取り、そのままアークの執務室に飛んだ。

「…え?」


「その人が情報班新人メンバー候補?」

赤毛の青年が歯を見せて笑う。この男は、ペテル・ナイト。情報班班長だ。


「あの、これは一体、」

「ようこそ我が執務室へ。ロバート・アンダーソン。実力を認められれば君も晴れてアークの仲間入りだ、喜びたまえ」


そこでようやく何かに思い至ったらしい。

「し、質問を」

「どうぞ?」


「今俺は引き抜きを受けている、のか?」

「正確に言えば、就職口の斡旋だ」


「そんなものポンと用意できる奴なんて、班長達とギルドマスターくらいだ。違うか?」


「何班だと思う?」


「第◯班…狂戦士」

「ご名答。気分はどうだ?」


平成さを装っているが、汗だけは隠しきれない。

「驚きすぎて思考回路はフリーズ中だ。やられたよ、まさか狂戦士様が学校に通ってるなんてね」


「fギン班長と呼んでくれ。狂戦士なんて柄じゃない」

と、首に巻きついたリムが「ウソツケ」と言った。


『俺のことフルボッコにして試し斬りだったロ』

うるせえ、修行だ。あれは修行だったんだ!


「じゃあ、ギン班長…俺は何をすれば?」


「レギオが自然に俺たちを誘うのを諦めるように仕向けろ。その後にレギオだけで頼みにくるようなことがあれば、今日の話はパアにする。俺としてはお前の腕試し位のつもりだが?」


「……ふ、よく言うな。あの頑固で偏屈なレギ坊を言葉だけで巧みに止めてみせろだと?なかなか無茶なことを言うじゃないか君は」

くくくと笑うと、メガネをずり上げて真剣な顔つきになった。


「要は生徒会メンバーになれと言われるようにならなければいいのだな?」


こいつ…抜け穴を探し当てやがった。

俺がわざと残した抜け穴に気づいてそれを攻略せんとする、面白い。スカウトマンが「やめられませんね」と言ったのも分かる気がした。

生徒会の黒幕と、レムが仲間になりました。

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