職場見学②
戦闘訓練です。
***
文体を変更しました。
「それでは、アーカディアとレフォン、両校の合同訓練を行う!訓練場では第九班員が見てくれることになっている。それでは入るぞ!」
毎日使っている訓練場。壁にはどす黒い血しぶきの痕、あ、あれ俺が殴ってフーチが飛ばした血しぶきだー。
「レフォン…こいつらと合同なのかよ」「名門の恥」「アーカディアなんてポッと出じゃねぇか」「あん?やんのか?」
パァンッ!!
「静粛にお願いします。本日は皆さんと私たちの交流を兼ねた楽しい合同訓練です。私は本日の訓練を行う第九班のアリサです」
「「何やってんの!?」」
俺とアズサは息ピッタリで突っ込む。
「他にも十名の班員がそれぞれに参加します。アーカディアの生徒さんはこちらへ、レフォンの生徒さんはあちらへそれぞれ移動してくださいね」
他十名?まさかアリサ…。
「ドーモ、シグルドです!」
「リオです」
三人が第◯班員!?お前らなにやっちゃってんの!?
こっそりアリサに「仕事は?」とすれ違いざまに尋ねると、「狂戦士様の机の上ですよ?」と返ってきた。ぶっ飛ばす。
「それでは、班員基礎訓練をしましょう!腕立て100、腹筋100、背筋100、ランニング1.5km。これを1セットとして第九班では五回以上を目安としていますが、狂戦士は20セットのち多重魔法負荷訓練と自身の魔力コントロールにあと何でしたっけ?ギン」
「…召喚獣と戦闘訓練だけど、ここじゃ無理だから何もないとこで戦ってるって聞いたよ?」
アズサの視線が痛い。
レギオはレギオでさすが…!とか言ってるし。訳がわからん、あの野郎。
「実際にやるとこわれ……疲れてしまうので、今日は準備運動をして私たちと戦ってみましょう!」
アリサの笑顔なんて、見たくない。
「遅いっ!」
襲おうとする学生を超手加減して、それでも床に叩きつける。受け身をギリギリとった学生が参ったと言う。
「俺アーク無理かも…」
だってこの三人新人班員じゃないもん。勝てるの俺だけだよ。
「俺と戦って見たい奴は?ギンやるか?」
「俺とやらせてください!」
シグルドを見据えて、アズサが名乗りを上げる。
「え…アズサやるの?」
「ああ。お前が少しでも鍛えてくれたんだ。やらなきゃ損だろう?」
「……シグルドは一番手加減を知らない。奴の使う剛拳は流水拳とは相性がいいが、実力差がありすぎる。せいぜいよけることに専念しろ」
「ああ」
アズサが来たので不満そうだったが、流水拳の構えを見て顔色が変わる。
「ギンのお気に入り、ってか?こんな奴を?」
「少し違うな。親友だ」
「ほざけ!」
手加減はあるものの、それでも強烈な一打がアズサの顔にヒットしーーないで、反動を利用した蹴りがシグルドの顎を襲う。それは空を切った。
「…こんなんで?俺も詰めが甘いな、あいつがそうそう他人に踏み込ませる訳がねぇ。俺たちだって踏み込めない茨の壁を?」
「何とでも言え。…『ハウル』!!」
きぃん、とまともに脳を揺さぶられるような音波を食らい、シグルドの動きが止まる。
一構築魔法で最低威力かつ、その効果範囲は驚くほど狭い。当たれば無事では済まないが、詠唱が長く使われない代物だ。
詠唱破棄ができ、肉弾戦を主とする学生でなければ。
「ぐぅっ…!?」
だがそれもあくまで時間稼ぎだ。本命はーー。
「ファイアボルト!」
火の玉が飛んでいき、そしてーー。
「悪りぃな坊主」
アズサが床に沈んだ。俺は反射的に駆け寄る。端の方まで運び、治癒魔法をかける。敗者ではあるが、よくやったほうだ。
「また、負けたか…」
「俺以外に見てる人はいなかったと思う。いい試合だったよ」
「そうか…」
と、肩を叩かれる。
「シグルド」
「どうだ?ガキンチョの様子は」
「問題ねーよ。俺がついてりゃ」
「なら手合わせしようぜ!なぁいいだろ?」
「チィッ…バトルマニアが。やだ!お前と俺が本気でやりあったら生徒全員が巻き込まれて死亡するだろうが」
「えー?俺は俺だけよきゃあ別に」
「…どうもお前と話してるといろいろ狂うよ…さて、そろそろ終わる頃か。アーカディアの方も、」
「「狂戦士を出せ!!」」
はぁあ…これ示し合わせてんの?俺に恨みでもあんの?
「「狂戦士様に会うまで帰らない!」」
それが二人の共通見解である。何にせよ、俺の出る幕ではない。狂戦士は忙しい、学生二人の面倒を見るほど暇じゃないと。
だが俺もとばっちりを受けた。
「俺がさっき狂戦士に会うの邪魔しやがって(以下略)」と言いがかりをつけて来たのだ。
「はぁ?お前ら何言ってんの?」
「狂戦士様は来ませんよ?」
「いいや、訓練は九班員が受けているとさっき聞いた。訓練場がここなら明日には来るはずだ」
鋭い。その鋭さを別の所で発揮してくれていたらどんなによかったか。
「流石にそこまで居座られると強制措置を取らざるを得ませんよ?」
「すいまっせん!ほんと勘弁してください!」
「いえいえ。いいんですよ、私たちとしては面白い子が来たなぁと思うだけですよ。いちいちこんなsmall fly相手にしていられる人じゃありません。手加減は上手いですが、うっかり殺すことも十分あり得ます。ーーなので、私が相手をいたしましょう」
「なんだと?黙れよババア」
サクの言葉に反感を覚えた少年がたしなめるが、それを地雷であることを彼は知らなかった。
「…えぇいいでしょう。私実は第◯班の副班長ですから、殺さないようにーー」
その笑みは恐ろしいほどに殺気をはなっている。
笑う阿修羅、微笑みの羅刹。言い出したのはキリカゼで、その日彼は全治一週間の内臓破裂を起こした。
「第◯班?なら勝ったら狂戦士に会わせろよ!」
「あなたがた程度ならまだ三歳のギンを相手にしている方が楽しめそうですけれど」
召喚術式、換装。獣を呼ぶのではなく、武具を呼び出す術である。
「『魔剣グラム』血を吸いなさいな」
紅く光るルビーが柄できらめき、ミスリルの刀身が光を怪しく投げ返す。
「誰がババアですって?」
「んだとぉ!?」
走り込んで殴りかかる二人が軽く転ばされる。
「…止めなきゃ」
あともって一分。
俺は走って急いで着替え髪を戻しーーアリサの前に転移して、人差し指で剣の刃先を止める。
「は…班長?」
「事の顛末は聞いた。どういうつもりだ?」
「く、どいてください。そいつが私のことをババアと呼んだのですよ」
「だからと言って子供の戯言にいちいち耳を貸すほどお前がガキとも思ってねぇが?」
「う…」
この間も剣には全力が込められているはずで。
「わ、かり、ました…」
「そこの二人、立て」
すくっと立ち上がった二人は嬉しそうな顔をしている。
「俺!会いたくて…でも変な奴に邪魔されて!」
サクの言葉に俺は何も答えない。
「会いたかったんです!いろいろ失礼はしたとわかっています!でもあなたに会えて、」
「…理由で正当化できるほどこの件は甘くない」
その言葉と視線に、エミリエとアーカディアの先生も下を向く。
「アリサ、謹慎二週間。魔剣の使用は同期間緊急以外の使用を禁ずる。その間の飲酒等娯楽は不許可。お前には頭を冷やしてもらう」
「は、はい!申し訳ありません、お二方に剣を向けたことをお詫びいたします」
「詫びと言ってはなんだがーー一ついい指導をくれてやろう」
二人の頬がほぼ同時に鳴り、三mほど吹っ飛んだ。
「アークで狼藉を働くとはいい度胸だな?俺の指導を高々学生に施して壊れない訳ないだろう?せめて今の十倍強くなってアークに入ってから言うんだな」
頬を抑えていた二人がばっと立ち上がり、「すみません!」と頭を下げる。これまた俺が叱られるかなぁ。
「先生方、生徒に少々甘くなるのは分かるが…次あったらどうなるか…わかるな?」
「はい!!寛大な処置に感謝します!」
俺は転移して自分の部屋に戻り、着替えたりなんやかんややって戻ると、そこには重苦しい空気が立ち込めていた。
「あーずっ!」
「ひょわ!?」
「俺がトイレ行ってる間に何かあったのー?」
「あの、狂戦士が喧嘩両成敗を」
「ふーん?で、どうだったよ。正当な裁き?」
「正直、めちゃくちゃ甘い。お前砂糖裁判官だな。だが、大事にならずよかったと思ってるよ」
じゃあいっか。
そのあと俺は減給(3%)になった。処分が甘すぎと言うのが原因だ。
解せぬ。
前回は職場より居住区やら和菓子やらだったので、今回が職場見学②です。
次回、中間テスト回。




