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ハプニングのち和菓子

レギオ強制退場。


***

文体を修正しました。

居住区域に入るときも止められそうになったが、それはさておき。


「ようこそ、忙殺される人間の巣窟へ。ここは住み込みの仕事をしてるか、帰ると割に合わない人が居住区域として使ってるとこだ」


石作りではあるものの、暖かさは例の魔導装置(燃料は俺)の発熱を利用している。地下なので常時ひんやりしているが、夏も冬もあまり温度は変わらない。


「あ!ギーン!こっちこっち、その子だれ?彼女?」


アズサの動揺っぷりは凄まじく「なぜそんな!?大体私は男だろう!」と言い募っていたのも面白かったんだが、あんまりからかうと怒るので、訂正。


「俺の親友、アズサ。こっちは言わずとも分かるだろうが、クーリ」

「ヘイ、ボクがクーリだよ!アズサちゃんはかっわいいなぁ、ギンもなかなか可愛い顔してたけど、アズサちゃんもいい線いくんじゃなーい?」


ボーイッシュな顔をニコッとさせる。コートを着ているから分からないだろうな。若干引いているアズサにクーリが更に爆撃。


「ボク、男の娘だから!」

「クーリ班長が!?」

「いえーす(^-^)/」


「お前さ、ファンクラブがあって、女装もしてまで男にキャーキャー言われたい訳?」

「いや、男なら『ふぉおおおおおお!!クーリたん萌えカワユス!!』かな」


「条件指定厳しすぎだろ。で、お前ともう一人非番だったアイルは?」

「街に買い出しだよ。アズサは特別に教えてあげるけど…」


言葉を切ってニンマリと笑った。

「えっへっへ、ボクアイルと付き合ってるんだ!」

「アイル班長と!?」

「お互い持ってないものに惹かれたっていうのかな…まぁ言いふらしたりしないでくれるとありがたいな」


ここで確認しておこう。

クーリ 見た目美少女の男。

アイル 見た目ゴツい女。


前から知ってはいたけど、正面切って聞くのはまた殴られる様な衝撃を受け…。


まぁ本人たちの問題だ。


「じゃあ、俺の部屋!ちょっと登り方特殊だから、失礼するよ」


お姫様抱っこでホップステップジャーンプ。

と言っても、俺の場合、ここの名物になるほど。壁を走りつつ、反対側の壁に向かって跳躍、その反動のまま体を回転させジャンプ、これを繰り返して階段の存在しない1フロア。


「ふっ…普通に、この下の階から登ったら良かったのでは!?」

「それが出来たらこんな登り方するか。この階から下は、落ちない様に結界を張ってあるんだ。攻め込まれるのはここだけ。俺とレオナルドだけかな」


「ぎ、ギルドマスターの…何か規模がデカすぎて分からない…」

「こっちが俺の部屋」


中は片付けをし、きっちりと整えてある。掃除も毎日やって、布団も休みがあれば干している。


「布団を干すのって…」

「ああ、あれ?他の住居区画は委託かな。でも、俺は自分で魔法作って干してるよ」


「つくっ……もう驚かない…驚かないはずだ…」

「あ、ぶっちゃけ、七構築魔法も出来てるけど、教科書改訂めんどくさいから公開してないんだよな」

お?


俺人が椅子から落ちたのをリアル目撃した。


「…ふふふ…お前俺を心臓麻痺で殺す気か!」

「褒めてもおごっちゃうぞ☆」

「奢るのか!」

「そう言えば後40分位か。どうせなら狂戦士の格好も見る?」

「見たい!!!!!!」


ここまで顔を輝かせたアズサは初めてですよ。

という訳で。


「髪の色を魔法で……いやそんなことを常時発動しっぱなし?まずいだろう」

「え、別に。息を吸って吐くくらいどうってことないけど」


「ごめん俺が変なこと聞いた。お前には常識を捨てて突貫して風圧で飛ばされるくらいでちょうどだ」

「俺としては、アズを三年で鍛え上げて、何とかアークに入れられる位にしてやる気だが?」


「え?いいのか?」

「俺も今の訓練を少し増やしたいと思っていた。それに流水拳の獲得が思ったより早そうだ。今年の夏には実践レベルに持ってける。アークでの、ではないがな」


「なら、俺は出来るだけ詠唱破棄の練習をしておく。魔力の維持やらイメージはスムーズにいく。戦闘でも使えるかは…今日訓練してもらえるなら、俺はやってみたい」


多分、大丈夫だろう。俺はサイドで見て、後で指示を出せばいい。


「俺とは全く違う戦闘方法だが、今までもあらゆるものを見てきた。アズに関しては少々甘くはあるが、副隊長クラスの戦闘力に持って行ってやろう」


「何だか世話になってばかりだな。俺も何か礼をしたいんだが…」

「あ!じゃあ、アズ海行ったことある?」

「あるにはあるが、どうしてだ?」

「俺戦闘以外で海行ったことないんだよ!夏…でもいいし、他の季節でもいい!」


「なら、夏に海に行こう。俺はその……日焼けすると皮がズルム」

「いたたまれなくなるだろ…」


「日焼け対策をバッチリすれば、問題はない。行こう」

「なら決まりだ!俺は頑張ってアズを鍛えるからな!」

「ついて行ける程度によろしく頼む」と妥当なお願いをされてしまった。



「時間の五分前。ジャストだなー」

「ああ。あれはなかなか…かっこ良かったな」


と、揉めていたらしい、二人の少年ーーレギオともう一人、アーカディアのサクが首根っこを掴まれて連れてこられた。


「離せ!」「『狂戦士』に会わせてくれ!」「あの人に稽古をつけてもらう!」


つまり、


「立ち入り禁止区域に入ろうとしたんですか?」


俺の顔を見てギョッとしたフーチが、額に汗をにじませながら「はい」と答えた。どうやら狂戦士狂いの二人が自由時間中に意気投合、狂戦士に会いたい!と、執務室に突貫したらしい。


「だが、立ち入り禁止区域は本来入れないのだ。よほどの例外が無ければ、(ここで無意味に俺を睨む)入れない」


「俺たちは狂戦士様に会いたいんだ!」

「あの~、つかぬことを頼みますが、その二人を開放してくれませんか。俺としては同級生が牢にぶち込まれて、なんて学園の名誉を傷付けるような、俺みたいな真似はしたくないと思いますから」


そこでレギオの動きは止まった。事態は理解出来たようで、なんとか自制したらしい。


「サク。気持ちは分かる、俺も狂戦士に憧れを抱く者の一員だ。だからこそ己を磨き、はやる気持ちを抑えてここまで来たはずだ。その頑張りを水泡に帰すなど徒労の極みだと俺は思うが?」


「何言ってるのかわかんねーよ!わかりやすく言え!」


「あのさぁ。憧れの人がいる職場で騒ぎ立てて入っちゃいけないとこ入って、挙句赤ん坊みたいに駄々こねるの?そんなんで会えると思ったの?」

俺は多少切れていた。


こんなガキがアークをめざす。こんな馬鹿が?冗談じゃない。

和を乱し、一人を信奉する人間など使い勝手が悪すぎる。


「分かってんの?牢に一日入れられたいの?俺もさぁ、他校の生徒気遣えるほど優雅な身分じゃないんだよ?ホントならレギオごとまとめて牢屋にポイで終わってたの。分かる?それをわざわざフーチが俺のとこ引っ張って来てちゃんとどうしますかって相談しに来てくれたんだよ?それをお前は無駄にして。なんとか言ったらどうなの?」


「う、俺は悪くない!お前が悪いんだ!帰ったらパパに頼んで…」

「うん?よく聞こえなかったなぁもう一度言って?秘匿状態の秘密兵器の正体探ろうとした君がそんなヒマあると思ってんの?」


と、教師が駆け寄って来て、青くなってふるえている彼に「馬鹿者!」と怒鳴りつける。


「すいません、うちの生徒が。どの様なことをしてでもお詫びいたします、ですから」

俺は長く深く嘆息する。


「先生、これ次はないから。そういう訳でフーチさん。見逃してはくれないでしょうか?ここは穏便にまとめましょう」

「…ギンがそう言うのなら。仕方が無いな、今回は取りなしと先生の説得により退こう。だが次は遠慮なく殺す」


殺気はサクを貫いた。青い顔が白くなった。

「は、はい!ありがとうございました!ギン…さんも!」


俺は逃げるようにアズサとその場を後にした。


「アーカディアの先生も大変だねぇ?」

「サクは昔から己の要求通りにならないことがあるとああなった。貴族でも王族でも、ましてや力のある商人でもないが、父親は頼めばどうにかしてくれると…どんなやつが父親なんだか」

「ちなみに姓は?」

「ペトロフ」

あー。納得だ。


「ペトロフファミリーの首領(ドン)の息子か。そりゃあ思い通りにもなるな。だがアークからすれば門前払いもいいとこだ」

「え、そんなすごい奴なのか?」

「もうちょっと厳しくしておかなきゃ、ペトロフも次世代は危ういな……」



ここで、各自昼食をとった後腹ごなしの時間として二時間が与えられる。訓練時に吐いたりすると、面倒だからだ。


「で、おすすめの店…あるんだけど…どうしてレギオまで、あとその二人までついてくんの?」

「まぁ、一緒にしないで欲しいです。こんな泥棒猫見ていられません」

「あたしぃ、こんなクソビッチとは違うからねぇ?」


「二人が許すと言ってたんだ。それに、さっきはその…一応助かったから、おごりだ!」

「…はぁあ…立ち入り禁止区域にアイル置いときゃ良かったかな…人選ミスった~」


「落ち込むな。お前だけのミスじゃない」

頭をナデナデされる。気持ちいい、約二名ほど「ふぉおおおおお!?」と悶えているのは見なかったことにしよう。


「アズ、そろそろ周りの視線が痛い」

「わ⁉悪い!!ギンの職場だった…」

「俺の噂は尽きないからなー…」


と、入り口の方を見ると、アイルがもどって来ていた。買い物袋の中身がちょっと見え


『俺のポセイドン』『俺が嫁入り!?』


「アイル班長、これ俺のダチ、アズサ」


「…………ハッ!?」


「その本の束どうにかしなよ?」

「この薄い本共はおやつ代わりだ」

「学校。見学。生徒」


その三単語で全てを察し、カッとブーツのかかとを合わせ、後ろにいた三人に帽子をとって礼をした。そのままさっそうと立ち去ると、シンシアは呟いた。


「アイル様は、私達と気が合いそうですわね」

それに珍しく、アナスタシアが頷いた。



「ここが俺のおすすめの店!どう?」

「どうって…」「崩れそうですわね」「大丈夫なのぉ?」「本当に」


「味だけはピカイチだよ。こんにちはぁー!」

今にも崩れそうな建物の扉を押し開けると、中から「うるせぇぞギン!」と罵声が飛んで来た。


「やーそんな怒るなって、パウロ。これ、友達のアズサ。後は……その他?」

「「モブのくせに」」


「俺はレギオ。少年魔道大会で優勝したんだ。サインも今ならしてあげようか?」

「本当にその他だな。で、こっちの器量良しの兄さんがねぇ。ギンの友達、初めて見るからよ。俺としちゃギンの嬉しさは分かる。特別に『アレ』出してやるよ」


俺はちょっと青ざめる。

「えーと、お手柔らかにね?」

「心配するな」


あんたのそれがいっちばん信用出来ねぇとは口が裂けても言えなかった。


「うぅ~ん…おいしぃ…」

他の三人は踊っている。オドリタケと言って30分踊り狂うだけのキノコだが、それ以上の効果はない。アズサにはこっそり薬効阻害の魔法をかけてからスープを摂らせた。ただただうまいキノコであることは間違いないし、独特な香りから判断するには十分な材料が揃っていた。俺は大抵の薬効は致死量レベルでないと効かないため、そのまま食べる。

それが今の状態だ。


アズサはデザートのあんみつDX盛り・友情verをたべている。とろけ切ったような笑顔は、まるで恋人の惚気をしている人のようだ。

「アズ、そろそろ分かった?ここがボロい理由」


「こうして踊り狂う人がいるから、か……。味はいいがやっかいな店主だ」

「まぁ偏屈とか厄介とか呼ばれると嬉しいらしい。レギオ、勘定はそっち持ちな~」

「もう行くのかい?」

「ああ。それから俺の事は内密にな。アズにしかおしえてねぇんだ」



「…うぅ、どれも悩む」

「俺のおすすめはこれ、ロストエデン餅。一見どら焼きっぽい生地だけど、ふんわりではなくもっちりしてるんだ。俺としては甘さ控えめのあんこも良いけど、やっぱり白あんもいいよなぁ。で、この生地がさらに…」

「あれ?もしかして狂…」


俺は人差し指を口の前に立てて必死で首を横に振る。

「ええっと常連さん。そういえばこの間の男の子、すごく喜んでましたよ?」


「男の子?…何かあったんですか?」

つい二ヶ月ほど前の事だ。俺がロストエデン餅と桜餅、どちらにしようか迷っていたところ、男の子がカップ入りのみたらし団子をこけて俺にぶっかけた。男の子の母親が青ざめて「この子の命は!」とか言ってたのを無視して手を伸ばす。男の子もぎゅうっと目をつぶる。


「擦りむいたのは治しといた。コケるのに気づかず助けられなかったから、何か奢ってやる。何がいい?」

「…ロストエデン餅の栗あん」


血のみが残った膝を見て男の子がつぶやく。

「お姉さん頼む。それから、そっちの別嬪さんにもお茶と何か出してやってくれ」

「は…はい!」


母親が恐る恐る「いいんですか?」と聞いて来た。

「いいも何も、俺がちゃんと反応していりゃ怪我しないで済んだんだ。坊主痛かったろ?」


「もう…へいき」

「ならOKだ。俺も久々に栗あんのやつな」

「はい!」


と言う訳である。

「あのあと母親が、『優しい方なのね、うちの旦那と交換したいわ』って言ってたんですが、最近目がマジなんですよ……」


「そんなことしてたのか?ギン」

「ちょ、お姉さん俺のいないとこでそう言う話はしてくれ…恥ずかしい…」


しゃがみこんだ俺を無理やり立たせると、アズサは黒い何かを含んだ笑みを浮かべて「優しいんだな!」と言い放った!


「ぐぬぬ…帰ったらみっちり訓練してやる!」

「ではそのカップのみたらし団子二つと、ロストエデン餅。それから柏餅を両方五個ずつ、味は一種類づつ」


「はい!」

ようやく立ち直った俺を、アズサはクスクスと笑う。左手に持っていた一方のみたらしを差し出す。


「おごると言ったろう。訓練の礼、前金くらいか」

「ありがとう…律儀すぎるだろお前」


俺も笑って、店の中は和やかな雰囲気に包まれた。

次回、合同訓練@アークです。

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