面倒臭いことはやめてください!
初投稿です。よろしくお願いします。
はぁ、目の前の馬鹿息子達の事を考え、顔に手をあてため息をついてしまう。この状況いっそ見なかった振りをしたい。
私は所謂転生者というやつです。幸い今の家は侯爵家でお金もあり、家族関係もいたって良好でしたので兄が少し鬱陶しい事を除けば贅沢な生活をさせて頂いたと思っています。えぇ、兄のあれを少しと言っていいのかは置いといて。
それはさて置き、私の前世はゲームや転生関連の小説が好きでした。
転生したと気づいたときはそれはもう興奮しましたよ。柄にもなくヨッシャーなどと叫んでしまいました。
まぁ、赤ん坊だったので周りからは手をギュッと握りしめて元気に声を出してる可愛らしい姿だったでしょう。幼い子どもの特権ですね。今やっても変な目で見られた挙句、避けられて終わりです。思わず遠い目をしてしまいます。
私は3歳の時に運命に出会います。もう大変綺麗で美しいだけでなく、力強くて頼もしい。
私は心を鷲掴みにされました。
出会った場所は家の近くにある森の唯一晴れた場所で、雨が降った日の次の朝は草の葉に付いた朝露が綺麗な所です。
そこで私よりも1、2歳年上と思われる整った顔の男の子が泣きながら魔術の練習をしていました。
魔術ですよ! 魔術っ! 男の子の手の上に炎の玉が浮いてるんですよ!
見たときに思わず固まってしまいました。
え? 運命の出会いって男の子じゃないのかって? 違いますよ? 魔術です。
大事な事なのでもう一度言います。魔術です。
よく考えてください、私は転生者です。即ち他の子供より精神年齢が高いのです。
たとえ今世の母にアリステアちゃんは年相応に元気いっぱいでいつも楽しそうね、なんて言われようが高いのです。 ーーちなみに私の名前はアリステア・フォン・マレリセルですーー
ママン。前世の私は貴女とほぼ同じ年齢なんだよ?
ゴホン。つまり何が言いたいのかというと私はショタコンではないし、更にどんなにイケメンでも鼻水と涙でぐしゃぐしゃの顔してる子どもを好きにはならないということです。
私は男の子に質問をしまくりました。お昼頃から日が沈むまでずっと。えぇ、休みもなくずーっとです。
今思えば王家の嫡男、つまり王太子によく無礼な口調で許されましたよね、そして王太子はよく忍耐力がもちましたね。
というより何で私は気づかなかったんでしょう? 金髪碧眼なんて王家の特徴まんまじゃないですか!
はっ、と気づいたときには男の子はもう泣いてなく微笑ましい目で私を見ていました。
思わず恥ずかしすぎて顔を真っ赤にして目をそらしてしまいました。
えぇ、顔を赤くしたのは恥ずかしかったからであって断じて見惚れたからではありません!
あっ、そこ! ニヤニヤしない!
男の子とお互い名前も告げずに別れた後、家に帰ると私は無断外出を父には叱られ、母には泣かれ、兄には絞め殺されかけて大変でした。
実際は兄が感極まって私に抱きついたら力が強すぎて私が死にそうになったってだけ(?)なんですけどね。
母は今回のことで何か決心したのか、私に貴族教育を始めると言いました。
それに焦るのは当然のごとく私です、更に今までの遊び時間も減らすと言いだしたのです!
しかし、同時に私はチャンスとも思いました。ここで上手く交渉出来れば魔術がやれるかもしれない!
結果から言えばそれは成功しました。しかしその代償として私の遊び時間が無くなるという事件が起こったのです…。
その後いろいろあり魔術とついでに剣術を極め、その戦う様子から《舞蝶》なんて呼ばれーー初めて聞いた時ベッドの上でゴロゴロと2時間程悶えたーー父と母がどうしてこうなった? と頭を抱えたり、
12歳の時に社交デビューということで王妃様の舞踏会に参加したら魔術の彼ーー私が勝手に読んでるーーが王太子とわかり土下座する勢いで謝ったり。
その彼ーーイノヴァンスとは一緒に勉強したり遊んだり、時には語り合い(物理)をしながら仲を深めていき、身分も申し分なかったので結婚することになって私もリア充の仲間入りしたり。
それまでの間にひと悶着があったのは言うまでもないでしょう。
一応恋愛結婚ですよ?
なんだかんだ喧嘩などもしてるけれど子どもも三人ーー男の子2人に女の子1人生まれました。
で、今日は次男やその取り巻き達の婚約者と、私でお茶会をしてると、次男こと第二王子と、その取り巻きたち+αが私の自慢のお茶会場所に土足で来たのです。
私はこの場所、《アミリィ・スレイ》ーーこの国の言葉で花々の楽園とゆう意味です。名前が安直とか批判は受け付けません。名前付けって苦手なんですよ。それにシンプルの方がいいと思うんです! 私は! ーー
を穢したくないので必ず許可を取った人物しか入れないようにしています。それは私の息子も、夫である王さえ同じ事。えぇ、当然でしょう?
この場所には世界各地にある珍しい綺麗な花々や薬草を私が若い頃夫と一緒に冒険して集め、自分で魔術を使って共存させているのです。
それゆえ少し特殊なのでこの場所の為だけに専用の庭師を数名雇い、配置の案は私自身が考えに考えたすえ、とても幻想的な雰囲気になっていると言っていいでしょう。
ネーミングセンスは壊滅的ですけれどこういうのは得意なんですよ!
ここだけの話、この国の貴族の女性にとって《アミリィ・スレイ》の王妃によるお茶会に呼ばれるのは憧れなんだとか! 少し、いやかなり嬉しいですね!
そういう訳でわかるでしょうか? 私のお気に入りであり、入るときは必ずこちらで用意した靴を履いてもらい、そして生活魔術のクリーン魔法を重ねがけしてやっと入ってもらうこの場所に、何もせずに土足で入ってきたのです!
それだけでも怒りを鎮めるためにあんな長ったらしい昔話をしてたというのに! 息子達は無断で入ってきたことに許しを請うことをしないだけでなく、入室の挨拶もせずに私の周りにいた彼女たちをいきなり罵っています。
その内容も酷いもので、私が軽く聞いただけでも有り得ないとわかるものでした。
さっき言った+αの少女に対して学園で、婚約者の彼女たちが庶子だからという理由で虐めを行なったと言うのです。
はい、この時点であり得ません。理由は後で彼女たちが言うんじゃないでしょうか?
「絶対に私達はミリア様を虐めるなんてしておりませんわ」
まぁ聞いてるとおりならそうなんじゃないでしょうかね。
因みに代表として喋ってるのは息子の第二王子とその婚約者の公爵令嬢です。
それにしても令嬢たちは凄いですね、私の心の中の似非敬語(殆どできてない)と違ってよく礼儀作法か出来てる。
一応、勘違いしないで下さいね? 喋る時は私だって頑張ってますよ? 出来てると思いますよ?
ん? なんか+α少女が何か言ってます。
「お願いっ! やめて! この方達の気持ちだって私っ、わかるの! 好きな人が急に他の人に取られたら私だって悲しいもの!」
「ミ、ミリィ。君は彼女達を庇うのかい? 本当に優しいな! それに比べてお前達は言い訳ばかり!」
何この脳内お花畑少女?
もしかして私乙女ゲーの世界のヒロインに転生しちゃったの♡って考えちゃってる痛い系ですか?
だからもしかして婚約者たちから息子達に向けられている冷たい目に気づいていないの?
絶対に彼女達、息子達の事好きじゃありませんよ? 政略での婚約ですよ?
はぁ。そして私の息子はここまで馬鹿だったでしょうか?
本当にどこで教育間違えた?
上の息子も同じ教育でちょっと腹黒いだけで立派になったと言うのに。
妹の教育に悪い事をしないで欲しいです。
兄は妹の正しい見本になるべき! とまでは言いませんが悪影響を及ぼさないでください。
ふと、今冷静になって考えてみると何故私は+α少女の事を覚えていないのでしょう?
この国では社交デビューの前に貴族の子供は男は国王、女は王妃に挨拶をする事になってます。私もしました。
たとえ後で引き取ってもしっかりと教育をしてから必ずします。
愚痴になるのですがこれ、実はとても大変なんです。本来私達は公務をスケジュールビッシリで行ってます。
なので丸一日朝は人がズラッと並ぶ挨拶、夜は社交会とゆう日々を続けてると仕事が溜まりに溜まって社交会が終わると更に忙しくなるんです。
連日徹夜ですよ、夫共々。
私に挨拶に来ていない+α少女は出ることを許されていないのでしょうか?
多分後から引き取られた子ですよね?
この国では挨拶が終わるまで引き取り子は家から殆ど出してもらえません、というか自分から出てきません。
逆にでて自分が痛い目を見るので。
しかし、少女は学園に通ってるみたいなのです。どういうことなのでしょう?
もしかしたら何かあるのかも知れませんね、+α少女ーーミリア嬢でしたっけ? の男爵家。少しさぐってみましょうか。
直ぐに念話でイノヴァンスに連絡を入れといた。
と考え事やら色んなことをしてる間にも言い合い(?)は続いているのですよね。
「お言葉ですが殿下。私達この国の貴族が平民との子、庶子であっても本当に本当にば……頭が宜しくない人では無い限り馬鹿にし、見下事はありません!
特に上位貴族なら尚更です!
何故なら我国の初代国王陛下は元々商人の子であり、冒険者。つまり平民だったのです。
我々国民は度重なる戦争で前線に立ち、王となってからも民と共に戦った初代を尊敬しております。
よってそんな事をする人物は忌避されるでしょう」
「うっ」
そうだよねー。さっき言った有り得ない理由はこれです。まぁ、これだけ? と思うかもしれないけど実際のこの国の初代信仰は凄すぎる。
社交デビュー前の挨拶で今後の目標と誓いをたてるのだけど、普通誓いとか言ったら神様とか精霊とかファンタジーなものじゃないですか、定番は。
もう言いたいことはわかると思いますけどこの国の9割は初代に誓うんです。
つまり初代=神様というように。
初代国王を称える王神殿とかあるんですよ。
初代の凄さは私もわかるんですけど王妃になったばかりの時は少し鳥肌が立ちました。
「な、なんで! 貴女達は悪…」
何かミリア嬢が言ってますがそろそろ介入させていただきます。
こんなに無視されると王妃でも泣きますよ?(笑)
手をパンパンと叩きこちらに意識を集める。
「皆様、そろそろやめていただけますか?」
少年たちの顔に居たの? とありありと書いてあります。ポーカーフェイスとか習わなかったのでしょうか? 彼女達は出来ていたのに。
そして段々ここが何処なのかわかってきたのか息子の顔が青ざめていきます。
考え無しに突っ込むからですよ。
あっ、でもちょっと面白い。
そしてこれまた期待を裏切らないミリア嬢の声が、
「あんた誰よ? ゲームにも出てこなかったんだからどうせモブでしょ? それか背景キャラ? あのさ今大事な話をしてるのあっち行っててくれる?」
その言葉に全員目を見開いてミリア嬢を見ている。彼女は周りの様子に気付かずふんぞり返ってます。
「クスクス、馬鹿な方ですのね? 私の事を知らないのですか? でも、生憎私も貴女の事を存じ上げないのです」
勿論皮肉で返しますとも。
それに今、息子達いわく真実の愛(笑)に目覚めた彼等と違って聡明な婚約者の彼女達にはこの意味がわかったでしょう。
ふふ。でも、やっぱり息子達は気づかなかったようです。
「母上! この庭園に勝手に入ったことは謝罪します。ですが、ミリィを馬鹿など! 撤回してください! 後、国内の貴族の名前を覚えていないのは王妃として如何なものでしょうか!?」
扇を開いて口元に浮かべた笑みを隠す。
彼等からは私の目に映った失望の感情しか見えないでしょう。
実際は予想通りの言葉に爆笑したいのを必死に抑えていました。少し肩が震えてしまいましたが周りからは怒りのものと勘違いされたでしょう、多分。
後ろから長年私に付き従ってくれている侍女のサレスが呆れた空気を出してます……………私に。
「あら? 先に馬鹿にしてきたのは彼女ですのよ? それに貴方の言い分ならこの国の貴族なのに王妃の顔を覚えていないのは如何なものなのでしょうね? 後、私。ミリア嬢から一度も挨拶を受けておりませんの 」
「う、それは…。しかし社交デビューの前の挨拶もあるでしょう!」
「言ったでしょう? 私は一度も挨拶を受けておりませんと」
流石にここまで言ってわからないとか言わないよね?
「まさか!? ミリィ、君は一度も母上に挨拶をしていないのかい!?」
「それがどうしたってゆうのよ?! 何をしてるの?! 私の為に早く婚約破棄してよ! ずっと一緒にいるんでしょ!」
「「「「「………っ!」」」」」
あら、ミリア嬢口調が崩れてきてるわ。
やっと息子達も彼女の本性に気づいたみたいね。
さっき、彼女の家を調べるついでに本当に嫌がらせがあったのかうちの優秀な諜報部に聞いてみたのだけれど、全部自作自演だったのよ。ふふふ、テンプレどおりね。
さらに家の方もいろいろわかったらしい。
王から許可があったので面倒臭いですが動くとしますか。
「衛兵、王命です。ミリア•リイルゼルを捕らえなさい!」
「ちょっと、何をしてるのよ!? 痛いっ! はなして! 私はヒロインなのよ!? 皆に愛されるべき存在なのよ!」
近衛兵に取り押さえられながらヒロイン(笑)は牢屋へ連れていかれました。
最後まで予想通りで笑ってしまいます。
そして今度は息子たちの番です。
「今回の件について私達、とても貴方達に失望いたしました。
これから国を支えていく立場の筈なのに全員が一人の少女の言う事を鵜呑みにして調べもせず、 挙句の果てに何も罪の無い人に冤罪をかける。決して許されることではありませんよ。
処分については後日各家に通達します。かなり厳しい再教育があるのは決まっているので覚悟しておきなさい」
息子たちは茫然としている。
婚約者の彼女達と話した後、お茶会はまた今度おこなうと決め解散した。
あーあ、また仕事が増えてしまった。
ミリア嬢や、彼等の今後の事は夫に丸投げするにしても、後処理がとても大変で面倒臭い。
そして息子の再教育も面倒臭い。
別に恋をするなとは言わないけれど、周りに迷惑をかけないで欲しい。
あー、でも若い頃の私たちも別の意味で周りに迷惑をかけていたから人のこと言えないわ。
本当、バカ息子が小説みたいに婚約破棄なんて言わなくてよかった。
更にお茶会に彼女たち全員が集まってるから今日言いに来たのでしょうが、公衆の面々であんな事を言ったら切り捨てるしか無くなりますし、優秀な彼女達を留めておけてよかった。
でも、彼女達がこの話を内々にして置く事を約束してくれたから助かったけど、それぞれの家に借りを作ったのは痛い。
それぞれの当主たちの弱味&昔の貸しがあるからそれでゼロにすることにしましょうか。
複数あるからいいけどこの代償はやっぱり大きい。
はぁー、とため息をつきながらまた公務に戻る。
最近ため息ばかりついてる気がするわ。
ちょっと昔みたいに夫を連れて冒険に行こうかしら?
夫もストレス解消したいって言ってたしね。
その後、多勢からやめてくださいっと言われ渋々諦めました。
読んで下さってありがとうございました。