8.歩む、進む
果たして俺の道は正しいのだろうか。そんな問いを繰り返しながらここまで歩いてきた。それで、ここまで来た。今の自分は前よりも強い、精神的にも肉体的にも。この10年間は無駄ではなかったのだろう。
「敵の数10人…ついにか」
ついにメディアシステムが俺を殺そうと考えたのだろう。操られる人々が向かってくる。
「賢い選択だ、俺は強いからなあメディアシステム」
操られた人々を見てここは全員殺すべきだろうと考える。こんな時あいつなら、ミドリならどうするだろう。全員助けながら戦うだろうか。
やはりそれが、正しいんだろうか。
俺は銃を握る。
「違うな。俺にはこれしかない、これが俺の正しさだ」
5発撃つ。
5発とも当たった、そのうち4発がチップ。すなわち死だ。10年前の俺ではあり得ないことだった。しかも、メディアシステムに操られている人間を相手にするのは久しぶりのはずなのに。
6人のメディアシステムは僕に向かって弾丸を飛ばす。加速と減速を繰り返し僕は避ける。
弾丸は20発。避けたのは15発、残りは全て肉体硬化で防ぐ。
「やっぱ、コンピューター相手だと少しは当たるな…」
ただ、その計算を前に15発も避けれたのは大きい。肉体硬化で防ぐのには体力的限界がある、もちろん加速にも限界はあるが比にならない体力的消費をするのが肉体硬化だ。
もう一度銃を握る。今度は全て当てる。
6発撃ち出した。そのうちチップに当たったのは5発。
「くっそ、あと一人…それならこっからは近距離戦の練習でもするか」
ナイフを持ちながら加速で接近する、このチップで攻撃に転じることができる数少ない手段だ。
それでもこの方法は通じるはずだ。少なくとも操られていない人間の前では十分に通じた。
距離5m。残った一人は何かを掴んで投げた。
「グレネードだと…」
肉体硬化では防ぐことができそうにない、恐らく治癒も間に合わずにチップが壊れる。避けなくては。俺は久々に命の危険を感じ生きている感覚を得る。
加速して避ける。巻き込まれはしたが治癒と肉体の強化でチップまでは届かなかった。視界の悪い中で人間に銃を向けてしっかりと見る。
「今日は終わりだ…メディアシステム」
そのとき彼は突然叫んだ。
「待ってくれ…なんだこれは!助けてくれ、やめろ!撃たないでくれ」
「そんな手が通用するとでも思ったかメディアシステム。そういうのは、俺じゃなくあいつにやるんだな」
俺は最後の一枚のチップをしっかりと撃ち抜いた。
「終わったな…」
今日もまた自らの力の実感が終わった。いつかはこの力で、この手でサーバーを壊しに行ってやる。
今日もまた、この体に経験が積もっていく。これは財産か、それともただの罪か。
どちらにせよ俺は間違っていない、進んでいる。