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028『宙吊りの刑』

姉さんが現れたこともあって湊は僕に対する外でのイタズラを終了し、みんなでリビングに入る。


「えぃ!っと…本当に久しぶりだね、姉さん元気だった?」


湊は嬉しそうに言いながら持ってきた温かい紅茶の入ったカップを姉さんの前と反対側に置いて妹は彼女と向かい合うように椅子に腰掛ける。

姉さんはすまないなと言って白い湯気のあがる紅茶をゆっくり一口飲んでから続ける。


「当たり前じゃないか湊、しかし今日はたまたま暇がとれたから来ただけでなまた明日、朝早くから仕事に戻らないといけないのだがな」

「忙しいんだからしょうがないよ。ね、兄さん」


と妹はニコニコした顔をニヤニヤに変えてこちらに視線を移す。


「あぁ、そうかもね…それよりもさ…」


僕は現在、二人がを飲んでいる横で す巻きにされて吊るされていた。


「これは一体どういうことなのかの説明をしていただきたいのだけれど?」


僕は上下逆さまになっている二人に聞くと姉さんがカップを皿の上に置いて口を開く。


「お前は湊に欲情したのだろう?」

「それ、信じてたの?!」


素早い返答。

もしもこれが漫才ならば確実に突っ込みを入れられたであろうと自負するが姉さんの場合、会話のほとんどにボケはない。


「いや、私は途中から見たのでよくわからないが息を荒くしながら湊に近寄っていき、扉を閉めるのは見たのでな」


確かにその辺りからなら湊がカバンも受け取った後なので端から見たら僕が湊を襲おうとしているように見えているんだろうか?


「それは単に僕が走って帰ったから息を切らしていただけで…」


とりあえず僕は姉さんの誤解を解くために説明をし始めようとする。


「うむ、事情はさっきの湊の反応からしてイタズラだとは分かっている」


あ、やっぱ説明はいらないみたい。


「わかっているのなら、ここから下ろして縄を解いてくれませんかね?姉さん」


知得はダメだと言うジェスチャーをし、言った。

うわ、湊の嫌みな表情がすごいイライラする。


「まぁ、イタズラのことは私からも謝るがその時の行動が頂けないな…湊にカギをかけられたとき、扉を叩きながら叫んでいただろう、近所の迷惑を考えなかったのか」

「うぐっ、そ…それは」


確かに走り疲れていたし、さっさと風呂に入って寝たいと言う自分優先に動いてしまっていたのは自覚しているし、反省している。


「あー答えなくていい、まぁその前に答えられないだろうがな」


上手く言えないのは図星だけど…なんだろうあの言い方に納得のいかない。…なんて思ってしまうのはまだまだ僕がガキだと言うことなんだろうな。

僕は姉さんを軽く睨み付けるが姉さんはそんな僕を無視して紅茶を飲み干す。


「……。」


あー頭に血が上ってきた。


「ん、もうこんな時間か。さて、明日に備えてそろそろ寝なくてはな」


ワイワイと楽しそうに会話をしていた二人は時計に目をやり、片付けを始める。


「あの~~ちよっとぉ~」

「何?兄さん。今、急がしいんだけど?」

「いや~そろそろおろしてはいただけませんかね?」


あーぼぅーとする。こりゃかんぜんにちがのぼってんなぁーいや、あたまがしただからおりてんのかな?

そんなことはどっちでもいいんだけど、湊も分かっているだろうにニヤニヤしながらこちらを見る。


「帰ってきてそうそうにあたしを見て欲情した淫獣の縄を解いたりなんかしたらナニをされるか考えただけでも恐ろしい」


湊は顔はニヤニヤしながら自分を抱き締めるようにしてブルブルと震えている。


「はぁー……すまないが朝まで反省してろ( ここでおまえを下ろした後の湊の反応がめんどくさいからな )」


何やら姉さんからのアイコンタクト。

内容の全く分からない僕は部屋から出ていこうとしている二人に向かって叫ぶ。


「だから、ごかいだぁ!……ぁ」


あーだめだぁあたまにちがのぼって…いしきが…

パチリとリビングの明かりが消えるとともに僕の視界も暗転する。

結局僕はこの夜吊るされてたまま過ごすのだった。

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