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【 WEAPONS・GEAR(ウェポンズ・ギア)】――高校生編  作者: 満天之新月
第5章 学園之行事(ヘイムダルズ・イベント)
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143『船上BBQ』



「えっと……2人に誘われたってことなの?」


 皆がああして料理を行っている状況で既に先走ってご飯を食べていることに少々思うところはあったものの確認を取ると植崎は否定するように首を振るとゴクリと喉を鳴らした。


「違う違う。ジャージの姐さんの方だぜ」


 今は違う格好であるが、ジャージということは竜華の方を指すのであろうと防人は理解するものの彼女に誘われたという事実に納得いっていない。


「で、どうして誘われたんだ?」


 聞こうと植崎へと視線を戻すも彼は再びどんぶりの中身を口に含んでおり、喋れる状況ではなかった。


「むぐ!? グググッ……」

「あぁもうそんな慌てて食べるから……」


 再び喉に詰まらせた植崎。

 防人は呆れながらもコップに視線を落とすもそこには既に中身はなく、側にはペットボトルなどの補給出来そうなものが見当たらない。


「はい!」

「──え?」


 キッチンならばあるだろうと防人か駆出そうとしたタイミングで彼の目の前にお椀が差し出される。

 器に盛られたのは一杯のコンソメスープ。

 キャベツ、にんじん、玉ねぎといった野菜が細かく刻まれ、淡いコントラストを成しており鼻先に上がってくる香りが食欲をそそる。


「あっ……」


 が、植崎はそれを楽しむことなく防人からひったくるようにお椀を手にするとスープを一気に飲み干した。


「ぷはぁっ! 美味いスッね姐さん」


 曇りのない満面の笑み。

 それに対して竜華も笑顔で返す。


「おかわり、いる?」

「あざっす!」


 残った野菜も全て平らげ、植崎はお椀を彼女へと手渡す。

 そして、竜華は防人へ視線を向ける。


「気絶しちゃったから心配してたけど……その様子だと問題なさそう?」

「はい、ご迷惑おかけしました」


 向けられた笑顔に対し、防人も笑顔を返す。


「うん、良かった。それじゃ慧君も座っててね」

「あ、僕手伝いま──」


「大丈夫。病み上がりなんだし、ゆっくりしてて」

「え? ですが……」

「いーからいーから」


 手伝おうと思っていたものの結局、押し切られてしまった。

 防人が座ってるとデッキチェアにもたれ掛かり、スッカリとリラックスタイムを楽しんでいた白石たち生徒会メンバーを竜華が手伝うよう呼び出すと彼らは慌てて駆け出して行き、食器やペットボトルをテーブルまで運び、手際よく並べていく。


 ……なんだか申し訳ない。


 せめても、とテーブルに積まれている平皿やコップなどを各座席へと並べていこうと思ったのだが、気付かれてしまい彼女からの指示を受けて並べられてしまった。

 おまけにお椀に盛られたコンソメスープを渡されてしまい、先ずは落ち着いて飲むように言われてしまう。


「いただきます……」


 見た目は写真でも見るなんてことないスープなのだが、口一杯に広がる優しい味に思わず口角が緩んでしまう。


「美味しい?」


 新たに料理を運んできた竜華。

 彼女からの質問に防人は強く頷くとスープを口にしてゆっくりと一息つく。


「はい。美味しい、です」


 野菜が新鮮だからなのか、使用されているスープの素が高いものを使用しているのか、はたまたこうしたシチュエーションによるものだからなのか、単純に竜華の腕によるものだからなのか。

 防人が普段使っているインスタントのものよりも遥かに美味しい味付けが為されている。そんな気がした。


「よし、出来たぞ! 悪いが手伝ってもらえるか?」


 程なくして焼き上がった肉塊。

 皆が席に腰掛けると真ん中に置かれた大皿から焼きたての串焼きや野菜などを自らの前に置かれた取り皿に盛り寄せ、食事を楽しむ。


 一段落。


 皆が満足し、テレビを楽しんだり、のんびりと潮風に当たったり、各々が好きな事を始めたタイミングを見計らって防人は先程からの疑問を竜華へと問いかける。


「ところで、どうして植崎を呼んだんです?」


 食後、落ち着いた寛ぎの時間。

 防人はタイミングを見計らい植崎の事を問いかける。


「え? あー…言ってなかったかな? 私『筋肉研摩部』って言う部活によく通ってるからね」


『筋肉研摩部』とはその名の通り己の筋肉を造り上げる部活。

 筋肉を研究し鍛え上げ、切磋琢磨する。

 ちなみに研磨の磨は『石』ではなく『手』と書くこと。

 ……と、簡潔な説明を受けて防人は「なるほど」と頷く。


「で、君の友達の祐悟くんもその部活の一人」

「だから誘ったと?」

「そ、まぁ正確には彼の先輩を誘ったんだけどね」


「じゃあついでにって感じですか?」

「ううん、そうじゃなくて誘った時には既に彼らも誘われてたみたいでね。じゃあ祐悟くんを誘おうかなって」


 じゃあって、それをついでと言うんじゃ?

 防人は出かかった言葉を飲み込み相づちを打つ。


「なるほど、それじゃあ本来誘おうとしていた人達は何処に…」

「センセー!!」


 竜華の言う先輩達は昼食の時に姿を見せていない。

 植崎がこの船に乗っているのであればその人達も乗っていておかしくないはず。

 防人が聞こうとしたタイミングで現れたのは筋肉隆々の大柄の男……いや漢だ。

 通常の建物でいう3階に当たる場所から出てきた彼は階段を下りながら甲板へと降りてくると娘と話していた治直先生の方へと歩いていく。


「そろそろ交代お願いします」

「おぉすまんすまん。もうそんな時間か……」


 短いやり取りを終え、3階へと上がっていく先生。

 リリスと星那は歳が近いこともあってか仲良くやっているようで、2人は先生する後を追いかけるようにして階段を上がっていく。


「あの人が竜華さんが言っていた?」

「彼らは治直先生のところで整備士(メカニック)としても仕事をしてるんだ。今回この船の操縦・管理、島についてからは力仕事をお願いしてるよ」

「なるほど……」


 先生が3階の室内へと入り、少しして先程の男性と同じように鍛え上げられた肉体を持った人物が2人、階数から降りてくる。

 彼らは先程のグリルの下にある扉から牛乳パックを取り出すと専用のジョッキに注ぎ、プロテインと書かれたケースからスプーンで擦り切り3杯。

 蓋を締めてさらなる筋肉の発展を目指してシェイキング!

 程よく混ざったところで一気にいく。


「「「うまい!」」」


 まるでお酒の後のように白いヒゲを生やした3人は再び牛乳を注ぎ入れ、皆より少し遅めの昼食を開始した。

 防人らの食べたものと同じ肉の塊がグリル横のまな板に乗せられ、先程よりも荒く乱切りされた肉が熱された金網の上へと乗せられていく。

 耳心地よい肉の焼ける音。


「凄いですね……」

「だねぇ」


 程よく焼けた分厚い肉が次々と口の中へ放り込まれていく。

 擦りたてのワサビや粗塩をほんのりと乗せて喰らう彼らの食事姿はどことなく上品さがあるものの、やはり豪快という言葉がピッタリであろう。

 ついさっきお腹いっぱい食べたというのに、あれを見ていると食欲が(そそ)られてしまう。

 とはいえ人様の食事をじっと眺めているのも失礼にあたる。

 防人はそっと彼らから視線を外すとちょうどリリスが階段を駆け下りて来ているのが視界に入った。


「どうした?」


 こちらへ駆け寄って来るリリス。

 防人は何事かと聞こうとするも少し興奮状態のリリスは「早く、早く」とこちらの手を引いて立たせようとする。


「えっと、それじゃ竜華さん。また後で」

「うん。いってらっしゃーい」


 彼女に手を引かれ、先程から側に立っていためだか、そしてリリスとともに甲板から3階へと上がる。

 細い通路を進み扉をくぐると、そこは豪華な雰囲気のある室内であり、エアコンの効いた快適な空間。

 見るからに座り心地が良さそうなソファーやお高そうなテーブルが並べられた室内の他にはガラリと雰囲気を変えた一角があり、近づくとそこにはハンドルと多数の計器などが一面に広がった場所。

 治直先生、そして星那が座っているそこは見るからに船の操縦席といった雰囲気であり、無骨な見た目をしたその光景はこういったものが好きな人からすれば興奮ものであろう。


「ん、なんだ来たのか?」


 こちらに気づき、振り返った星那。

 父親の手伝いとしているのかと思えば、どうやら違うようで通信用のヘッドセットはフックに掛けたまま置かれており、彼女の手にはジュースが握られていた。

 溢したりしたら一大事ではないかと思ったものの、万が一に備えてなのか星那の座る椅子治直先生の位置から比較して大きく後ろに下げれており、少なくともパネルや操縦桿などに被害がいくことはなさそうである。


「ねぇ、セナちゃん。もし良かったらこの船の事、教えて欲しいな」

「えぇっと……」


 モジモジと頬を赤らめながら提案するリリス。

 対して星那は少し困った顔で治直先生の方へと視線を向けると先生は「ここは大丈夫、行って来い」と明るく笑みを返す。

 

 それから数時間、のんびりとした船旅。

 星那の先導によって1階のガレージや船の動力室といった施設から順に案内を受けつつ見て回っていく。

 甲板から見えていたリビングもそうであったが、ベッドルームといった個室もまるで豪華なホテルのような内装をしており、リリスが目を輝かせて嬉しそうにしているのを見ていると自然と防人も嬉しい気持ちになっていく。


 それは星那も同じようで、防人の専用機であるGW【光牙(こうが)】の整備における説明の時のような真剣な様子で各施設がどういった用途で使用されるのかだけでなくそれらの利便性やデザインにおける利点・欠点といった内容も説明されていく。

 懇切丁寧なその内容はお客さんに対する説明というよりは会社におけるミーティングを受けているような感覚だ。


「この部屋は先頭になってる場所で他より広めの部屋になってるんだ。それでここのボタンを押すと……」

「天井が開いた!」

「凄いだろ? 夜寝る時なんかは星がキレイなんだ」


 とはいえそれが退屈ということはない。

 船という普段なかなか見られない造りを映像などではなく直に見てまわることができるというのは防人個人からしてもなかなかに楽しいものがあった。

 とはいえ、一部屋一部屋にかける時間は当然長いものとなり、終わる頃には目的の島まであと少しという時間まで迫っていた。


この先、昼食シーンをここに入れたのでこの先の展開で現状、少し矛盾点するシーンが含まれます。


すぐに改善する予定ですのでそのへんは気にせず読んでくださると助かります

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