第5話 妹
黄金の皿に乗った豚のような生き物の丸焼き、見たこともないフルーツや野菜の盛り合わせ、湯気を立たせるスープや焼き立てのパン、銀の皿に乗った厚切りのステーキ…
食欲をそそる匂いに、晶嘉の腹の虫はまた獣のような音を立てた。
晶嘉の気分は餌を前に待てと言われた犬の心である。
「あの、王様、少し質問よろしいでしょうか」
「確かチサトと言ったか。儂に答えられることならなんでも答えようぞ」
「先程私たちが勇者として選ばれた、と言っていましたがその証拠はあるのでしょうか?」
「そうね、いきなりアタシたちに勇者がどうのこうのって言われてもわからないもん。アタシたちのいた所に魔法なんて物無かったからそこらへんについても詳しく教えて貰いたいね」
千郷の言葉に瑛子も頷いた。この二人、タイプは全然違うが仲が良くよくセットとして扱われている。
「貴公らの世界には魔法が無いということは伝承にもあった。そして各々が何かしらのステータスや保有スキルが優遇されているともな。
安心するがよい。ちゃんとこちらで魔法や戦い方を教える者を用意した」
王がそう言うと後ろに控えていた騎士の一人と、先程の眼鏡の神官がが一歩前に出て一礼した。
どうやら彼らが教育係らしい。
「それなら安心ですわ」
「勇者かどうかの証拠、と言っておったな。それならばステータスの『称号』の欄を見て見るがよい」
「うっひょー!ステータスとか本当にRPGっぽい!」
「あの、そのステータスってのはどうやって見るんですか?」
「言葉に出さずに『ステータス』と心の中で言ってみよ。称号以外にも自分の属性、攻撃力や防御力、使える魔法なども見ることが出来るぞ」
そう言 われ、四人は目を閉じてステータス、と心の中で念じてみた。
その間も晶嘉の目は料理に釘付けだ。
「す、すっげー!本当に出た!俺、戦士になってる!」
「アンタは戦士って言うより盗賊の方があってそうなのに意外ね。アタシは魔法使いみたいだけど」
「俺は剣士だな。称号には『異世界からの来訪者』『召喚されし者』『伝承の勇者』の三つがあるな」
「私は僧侶のようですわ。スキルにヒールとあるのですが…これは回復の魔法なのかしら?」
わーわーと騒いでいる四人の横でさっさと喰わせろと思っていると、王が不審そうな目をこちらに向けてきた。
青い顔がさらに不気味に見えたのは仕方のないことだろう。
「スズナよ、お前は自分のステータスを見ぬのか?」
「それより何より私は目の前に並べられたご馳走を早く食べたいのだが?」
「スズナよ、ステータスを確認したら食事に手をつけて構わぬぞ」
「そうか分かった」
四人に見習い、心の中でステータス、と唱えてみる。
すると昔友人がやっていた冒険ゲームのキャラクターステータスのような画面が出てきた。
ショウカ・スズナ
Lv.1
経験値 0
次のレベルまで 15
職業:捕食者
属性:火、水、風、土、光
HP:480 MP:560
攻撃力:125 防御力:78
魔法攻撃:114 魔法防御:76
素早さ:94
スキル:ファイアーボール(火) Lv.1
:アクアソード(水) Lv.1
:ウィンドカッター(風) Lv.1
:ウッドウォール(土) Lv.1
:ヒール(光) Lv.1
:光剣(光属) Lv.1
:暴走(無属、覚醒スキル)
:捕食 (ユニークスキル)
:解析 Lv.1
称号:異世界からの来訪者、約束されし未来の覇者、召還されし者、捕食者