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妹が異世界で覇者になるらしい  作者: 翠架
始まりの地:聖都アルヴェトラ/魔国ヴェドマニアの辺境の森
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第14話 妹

『自動スキル 《必殺の第一撃》を入手しました

自動スキル 《必中の初手》を入手しました』



頭に響いた声の通り、確かにスキルの中に見覚えのないものが2つ増えている。

そしてスキルタイトルの横に『詳しく見る』という欄があることに晶嘉は気付いた。


こういった細部にゲームのような設定がある性で現実離れした感覚になるが、蚤の化け物を殺した時の感覚やべっとりと剣にへばりつく体液を見ると急にここが現実なのだという思考に戻る。




(それにしてもこの蚤の死骸、ゲームと同じ要領ならば素材的なアレは取れるのだろうか。

兄ちゃんならば魚を捌くようにスイスイと解体していきそうだが…)



と考えながら晶嘉はまず蚤の腕部をもぎ取った。想像以上に取れやすい。



「あっあなっ、なにしっ、なにしてっ!?」



銀髪の少女が何か話そうとしているが驚きすぎて言葉がまとまっていない。

その間にも晶嘉は剣を使いつつ解体する。グジュグジュと手にまとわりつく体液がとても気持ち悪い。

先ほどまでとても固そうに見えた蚤の体は、死んだからか簡単に裂くことが出来た。その途中、ガツッと音を立てて剣先が止まる。何か硬いものが体内にあったようだ。



「…なんだこれ」



体の中央より上付近、人で言えば心臓の位置に、まるでガーネットのような赤い石が埋まっていた。



(ーーアァ、ナンテ美味シソウナンダロウーー)



ぐらりと頭が揺れ、一瞬ヨダレが出そうになりハッとする。

今、自分は一体何を考えたのか。もう一度赤い石を見てもさっきと同じ感情は浮かんでこない。

不気味さを感じながらも、晶嘉はその赤い石を掴んで無理やり引き剥がした。


ブヂブヂと音を立ててそれが蚤の肉体から離されると、体はドロドロに溶けて石の床に吸収されるかのように消えた。それと同時に、剣や手についていた体液すら綺麗さっぱり無くなっている。



「あ、貴女本当に何したの…?さっきのモンスターは何!?というか、どうやってこの檻を壊したの!?」

「……私にもわからん。だがまあ一つだけ言えるのは、さっきの蚤みたいなのはお前についてたやつだということだな」



目の前で解体された巨大な蚤を思い出したのか、少女は口元を押さえてオエッと言った。どうやら虫は苦手らしい。

そして随分と今更ではあるが、晶嘉は疑問を投げかけた。



「そういえばお前…何で私が異世界から来たとわかったんだ?」

「……それ、このタイミングで聞くこと?」




少し戻したのか、口元を手の甲で拭う少女はふぅ、とため息を吐いた。

心なしか先ほどより顔色が良く、表情も明るくなったように見える。



「はぁ、説明してあげるけど、まず外に出ましょう。ここは空気が黴っぽいから早く出たいわ」



立ち上がった少女は晶嘉が思っていたよりも身長が高く、晶嘉自身とほぼ同じ程度だった。



「お前、ここから外に出る道わかるのか?」


晶嘉が尋ねると馬鹿にしたような表情で少女は笑った。

それは最初に声をかけられた時と違い、随分と年相応な表情だ。



「あたりまえでしょ、何度ここから出るための逃走ルートを考えたか…いえ、今のは聞かなかったことにして。えっと……そういえばまだ名前すら聞いていなかったわね」

「私の名はスズナだ。お前は?」

「私は……私の名前は、アニマ・フォン・モルトナよ」

「…?ふーん…じゃあ呼ぶときはアニマでいいよな」



どこかで聞いたことのある名前だと思ったが、特に興味はなかったため晶嘉は少女…アニマに早く道案内をしてくれとせがんだ。何か言いたそうな彼女の視線に気付かずに。












アニマに道案内してもらうこと五分。あっという間に外に出ることができた。たとえ外に出るために使った出口が明らかに抜け道用のものだったとしても、全くと言っていいほど使われた形跡が無かったとしても、出た場所が木が茂る林であったとしても外に出れたということが一番大事なのだ。




「…で、さっきの続きだが何故アニマは私がこの世界の人間じゃないとわかったんだ」

「…そうね、貴女が異世界から来たとわかった理由を説明する前に、大前提となることから教えてくわね。スズナはここに召喚されてから、この世界の何を教えてもらったのかしら?」

「四つの国があってそのうち一つが鎖国、残りの三つが緊迫状態にあるってことと、殺られる前にやっちまえ精神で『伝承の勇者』とやらを呼び出したこと、飯が見た目ばかりでガッカリ感倍増、といったことぐらいだな」

「最後のは必要ないきがするんだけど…まあいいわ。あとスズナはさっき攻撃魔法の一つを使ってたみたいだし、こっちに来てからしばらく経ってるってことよね。魔法についてもある程度知識があるって思っていいわね?」

「何を言ってるんだ?私はさっきここに召喚ばれたばかりだし、さっきの魔法だったかも身体が勝手に動いただけでどういったものかなんて知らないぞ」

「えっ、じゃあさっきのは魔力の体内回路も知らずにやってたっていうの!?あ、ありえない…そんなバカな……」



何やらブツブツと言い始めたアニマにさっさと話せと促そうとした晶嘉だったが、何かが動く気配を感じ取り鞘にしまった剣に手をかける。

四…いや、五か。そう思っている間にまた気配は増える。



「…アニマ」

「あんな強力な魔法を…何も知らないでやるなんて……」

「アニマ」

「さっきのモンスターだって一体何なの…」

「アニマ、少し黙れ。……囲まれたぞ」



そう言うや否や、晶嘉とアニマを脅かすかのように、二人を中心とした周囲の草むらがわざとらしくざわざわと音を立てた。


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