第12話 妹
お久しぶりですあけましておめでとうございます
気付けばひと月ちょい放置してました
頑張って更新していきますので何卒今年もよろしくお願いします
※そして新年早々若干の虫注意
蚤といえば誰にとってもあまりいい印象はないだろう。
特に犬猫を飼ったことのある人にはちょっとした恐怖と痒みの象徴にも感じるだろう。
祖父の家暮らしで猫も飼っていた晶嘉にとて、それは例外ではない。
それは忘れることの無い中学一年生の夏のこと。
今はもう老人ホームに行って殆ど会うことのなくなった祖父の飼っていた猫の寧子が、外から蚤をもらって帰ってきた事があった。
その頃既に食事にのみ異様な執着を見せていた晶嘉は、他の面において無精だったためあっという間に晶嘉の布団は蚤の楽園となった。
幸いにも兄が晶嘉と真逆でしっかり者だったため蚤の楽園は数日で儚く散っていった。
そんなこともあってか、蚤は晶嘉にとって天敵の一つと言っても過言ではない。
その蚤が今、巨大化して目の前に存在している。
そう認識するか否かのうちに晶嘉は動いていた。
収納鞄から躊躇なく鋼の剣を右手で取り出し、その刀身に魔力を込める。
白黒反転状態の世界を見る眼にも魔力を込めれば、その場にあるモノが何なのかを説明する《解析》スキルが発動した。
全自動機能が自分に付属しているのではないかと疑うほどに、魔力やスキルを使って次に何をすべきかが情報として高速で頭の中に流れ込んでくる。
『イヴィルフリー Lv.32
属性:闇』
出てきた種族名は知らないものだったが、属性のところを読んだ瞬間に「闇の弱点は光」「今使えるスキルの内一番多くダメージを与えられるのは《光剣》」という情報が浮かび、魔力を込めた刀身が眩く輝いた。
そして一薙、ヘドロのようなものが付着した鉄の檻がへし折れる。
少女にへばりついている蚤が、虫とは思えぬほど表情豊かに驚愕を写した目でこちらを見た。
パッと見硬そうな外見をしているが、頭と胴体の繋ぎ目は脆そうだ。
狙いをそこに定めて、晶嘉は渾身の力を込めて剣を突き刺した。
ここまでの間、二秒。ぐじゅり、と鈍い刃物で腐った果実を切るような感触が剣伝いにくる。
ひと瞬きすると色の反転していた視界が元に戻るが、蚤の怪物が息絶えた状態でその場に残されていた。よく見れば鉄の檻に付着していたヘドロも切り口周辺にはついている。
どうやら蚤は赤茶、ヘドロは青紫が本来の色だったようだ。
剣や晶嘉自身、そして少女や少女の周りにあった本にも、若干緑がかった赤茶色の液体が飛び散り付着している。
まるで見殺人事件直後のようだ、と思いながら晶嘉は少し体力を持ってかれたようなだるさを感じた。
自分が咳き込んだ間に何が起きたのかまったく分からず目を白黒させている少女を尻目に、機械的な声がまた頭の中に響く。
『経験値を2494獲得しました
レベル差ボーナス経験値を320獲得しました
レベルが上がりました
レベルが上がりました
レベルが上がりました
レベルが上がりました
レベルが上がりました
レベルが上がりました……』
何度も何度も『レベルが上がりました』を繰り返す機械音声を無視してステータス、と念じれば、確かに何度も繰り返されるようなレベルの上がり方をしていた。
ショウカ・スズナ
Lv.1→19
経験値 0→2814
次のレベルまで 461
職業:捕食者
属性:火、水、風、土、光
HP:480→2437 MP:440/560→2723/2843
攻撃力:125→635 防御力:78→437
魔法攻撃:114→579 魔法防御:76→387
素早さ:94→501
スキル:ファイアーボール(火) Lv.1
:アクアソード(水) Lv.1
:ウィンドカッター(風) Lv.1
:ウッドウォール(土) Lv.1
:ヒール(光) Lv.1
:光剣(光属) Lv.1→Lv.3
:暴走(無属、覚醒スキル)
:必殺の第一撃(無属、自動スキル)
:必中の初手(無属、自動スキル)
:捕食 (ユニークスキル)
:解析 Lv.1→Lv.2
確かに1レベの奴が32レベのモンスターを一人で倒せばこんだけ上がるか、と独りごちた晶嘉。
脳内のレベルアップコールを完全に無視していると、今度はスキル獲得コールが続いたのだった。
ステータスは1〜15までがレベルアップごとに元ステータスの1.1倍、16〜30が1.05倍を目安にしております
そのうちまた変わるかもしれません