―Unlock The "Lovers"―
結構重要な部分、記し間違えてました……申し訳ないです
呆然と立ち尽くす俺の目の前には、畏怖を感じさせる静謐な大扉が鎮座している。有無を言わせぬ迫力がある。そこにあるのに、無いといわせるような、そんな強迫観念に襲われる扉が、俺の目の前に現れたのだ。
この迫力なら扉と言わず門でもいいかもしれない……
扉には、いくつもの錠がかけられていて、がんじがらめに巻きつけられた鎖を繋ぎとめていた。
じゃらんと、何かを封印するように扉をがちがちに固める鎖が重厚な音を漏らす。
俺は、この扉を前に生唾を飲み下す。ごくん、と……
そして俺は、右手を扉へ向かって伸ばす。理由もわからない。訳なんてない……
ただ本能で、もしくは体が勝手に右手を前に伸ばせと命令した。
それに俺は従った。抗う精神力は持ち合わせていなかった。
無意識に、俺は喉の奥から声を漏らす。
まるで自分の体が傀儡みたいに操られてるみたいだった。
「アンロック……アルカナⅥ」
俺の喉を通した誰かの声は、そう告げると伸ばした右手で【鍵】のようなものを掴み、捻った。
ガチャァン!、と静謐な空間に大きな開錠音が響いた。
扉に目を向けると、荒々しく取り付けられた錠の一つが傾き、そして落下し始め、地に落ちる寸前で霞のように空気に溶け込んでしまった。
扉の方では、少しぎぃっ、と扉のきしむ音が聞こえた。
だが、それ以上は何も起こらない。
俺もいい加減この空間に慣れてきたのか、その扉を観察するくらいのことはできた。
扉につけられた錠は20個、さきほど開錠したものを含めて21個……
取り外した錠は上から6番目に位置し、開錠した後には『Ⅵ』というローマ数字が扉に彫られていた。
それ以外は特に変わったところのない扉だった。
あぁ、大きさは桁違いに大きい。高さは10メートル以上はありそうだ。幅も20メートルくらい。
そこにがんじがらめに鎖でつないだ錠がついていたのだ。だから錠の大きさも信じられないくらいに大きい。
「ここは、なんなんだ……?」
ようやく、俺は一番最初に疑問を抱くべきところまで落ち着いてきた。
不意に、扉の方から不気味な若い女の声がした。
「『愚者』のお前、ありがとねぇ!
これで、私もあの子に【罰】を与えれる……ふふふ!」
「な、なんだ?」
だが、答える声はなかった。声の主は、もうここから去ったようだった。
「なんだったんだ……」
なんとなく、嫌な予感がした。この上なく嫌な予感……
けれど、予感は予感でしかない。俺には、その先何が起こってもどうすることはできない。
この予感に関して、今ここで考えても埒が明かない。
もっとも……この予感は【裏】世界だからこそ、正しいもので、最高で、最悪のものとなるのだが……
扉と俺、この二つだけの暗い空間の中、俺はふっと意識を途切れさせたのだった。