第6章、今日も
日曜日の午後、ハルは窓辺の机に座っていた。外には柔らかい光が差し込み、冬の街路樹の影が揺れる。机の上にはノートとペン。昨日までの不安や葛藤はまだ胸の奥に残っているが、確かに違う。息をするたび、世界が少しだけ優しく感じられる。
「ハル、起きてる?」
リビングからユウの声がする。ゲーム機を持ったまま、笑顔で声をかけてきた。
「うん、ちょっと考えごと。」
「またノート書いてるのか?」
ハルは頷き、ペン先を軽く動かす。
「何を書いてるの?」
ミカが声をかけてくる。手には手作りのクッキー。ハルの机にそっと置くと、微笑む。
「ありがとう…」
「どういたしまして。昨日、話してくれたこと、少し考えてみたの。」
ハルはうなずき、窓の外を見つめる。街の赤い光が屋根や車のボンネットに反射し、ゆらりと揺れる。昨日までの胸のざわつきが、静かに落ち着いていくようだ。
「今日も…生きてるな」
独り言のように呟くと、ユウがにやりと笑う。
「当たり前だろ。昨日より少しだけ、成長した顔してるぜ。」
ハルは笑みを返す。小さな変化でも、自分の中で確かに存在している。ミカもそっと頷く。
「怖くても、ぶつかっても、こうして日常を選ぶことができる。それって、すごいことなんだね。」
「そうだな。」ユウが言う。「だから今日も、一緒に歩こう。」
ハルは胸の中で小さな炎を感じる。これまでの孤独や恐怖、葛藤が完全に消えたわけではない。でも、もう一人じゃない。少しずつ、友情やつながり、そして自分の意志で、世界を塗り替えていける。
ハルはノートに最後の一行を書き入れる。
「今日も、生きる。これからも、少しずつ。」
外の光は柔らかく街を照らし、冬の冷たさの中でも温かさを感じさせる。ハルの指先はペンを握りしめ、心の奥で確かな鼓動を感じていた。
今日も、そして明日も、自分で選ぶ歩みを続けるのだ。
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