第5章、赤色の創造
週明けの放課後、ハルは教室の窓際に座っていた。外の空は夕陽に染まり、オレンジと赤が混ざった色で街を包んでいる。
「ハル、今日は一緒に帰ろう。」
ミカの声に、ハルは顔を上げた。彼女は鞄を肩にかけ、微笑みを浮かべている。
「うん、いいよ。」
二人で校庭を抜け、校門に向かって歩く。夕陽の光が二人の影を長く伸ばす。ハルは指先でリュックの紐を握り直す。胸の奥で、まだ不安は残っている。でも、決意した自分を思い出すと、足取りは少し軽くなる。
「最近、ずっと考えてたんだ。」
ハルが小さな声で言うと、ミカは不思議そうに振り向く。
「何を?」
「自分のこと。どうやって生きていくか…って。」
ミカは静かに頷き、歩きながら言った。
「迷うのは自然なことだよ。でも、こうして歩いてるだけでも、少しずつ答えが見えてくるんじゃない?」
その瞬間、ハルの胸の中に小さな光が差し込む。昨日までの不安や焦燥が、夕陽の色に溶けていくような感覚だった。
「ユウも一緒に帰ろうって。」
ミカの言葉に、ハルは笑みを浮かべる。ほどなく、ユウが角を曲がって現れる。
「お、二人で歩いてるじゃん。俺も入れてくれよ。」
「もちろん。」ハルが答えると、ユウは嬉しそうに微笑んだ。三人で歩く道は、昨日までより少しだけ色彩を増したように感じられる。
「でもさ、まだぶつかることもあるよな。」ユウがぽつりと言う。
「うん…でも、ぶつかることで分かることもある。」ハルも返す。
道端の自販機でジュースを買い、三人は少し休憩する。ハルは手にした缶を握りながら、心の中で静かに思う。
「生きるって、こういう小さな選択の積み重ねなんだな。」
街の赤い夕陽が、三人の影を揺らす。ハルは目を細め、光に照らされる自分たちの姿を見つめる。
今まで胸の奥でぐるぐると渦巻いていた迷いや恐怖も、少しずつ形を変えていくようだ。
「明日も一緒に帰ろうな。」ユウが笑う。
「うん、約束。」ミカが答える。
ハルは静かに頷く。胸の奥で、昨日より少しだけ強い決意が灯る。
「怖くても、ぶつかっても、今日を選ぶ。これが、自分の色を作る方法なんだ。」
赤く染まる空の下で、三人の歩幅は揃い、街の光に溶け込んでいく。小さな勇気の連鎖が、ハルの世界を少しずつ塗り替えていくのだった。
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