【第3章】未来人、国を“自分”と勘違いする人類にブチギレる件
──「国ってお前の一部じゃねぇから」
ニュース速報が流れた。
「未来人による思想犯罪を警戒」
「愛国心を侮辱した発言が拡散」
あーあ。
たぶん俺の昨日の一言が燃えてる。
『国を愛するのは勝手だけど、それ“自分を誇れない人”の代償行為じゃね?』
……いや、間違ってないだろ。
でもこの時代じゃ、真実より“気分”の方が重罪なんだ。
街頭インタビューで一般人が言ってた。
「国を悪く言う奴は裏切り者だ!」
「国民の誇りを傷つけるな!」
お前らそれ、まんま宗教。
神様が“国旗”になっただけだろ。
試しに俺も参加してみた。
“国を讃える祭典”ってやつに。
AIドローンが国旗を撒き、群衆が声を合わせて叫ぶ。
「この国は永遠に不滅!」
……マジで?
地球温暖化で滅びかけてるのに?
司会がステージから叫んだ。
「この国を誇りに思う人、手を挙げて!」
群衆、一斉に手を挙げた。
俺だけ挙げない。
そしたら隣の男が睨んできた。
「なんで挙げないんだ?」
「俺、国ないから。」
「じゃあここにいる資格ないな。」
「お前、“国”に住んでるつもりかもしれないけど、
実際は“国の中の所有物”だぞ?」
「は?」
「国民って、“国家の管理対象”って意味だから。
誇る相手、間違えてるぞ。」
……一瞬、空気が固まった。
AIドローンがざわついてるのが聞こえる。
俺は続けた。
「お前ら、“国を愛する”って言いながら、
その国が何してるか、ちゃんと見てんのか?」
「見てるに決まってる!」
「じゃあ、税金の使い道全部説明できる?」
「……それは、政府がやることだろ!」
「政府=国だろ?
つまり“自分の国”が何やってるか知らないで“誇り”って言ってんだ。」
……
……
「それって、“彼女の名前も知らないけど大好き”って言ってるのと同じだぞ。」
笑いが起きる。
でも、一部のやつがマジギレした。
「国を侮辱するな!」
「いや、お前らが侮辱してんだよ。
“国”を使って、自分を大きく見せてる。
それ、ただの自己愛の代用だ。」
俺はステージに上がった。
マイクを奪って叫ぶ。
「国を愛するってのはな、“国民を守る”ことじゃない。
“国民を利用しない”ことだ!」
「国旗を掲げる前に、隣の人を助けろ!
国のために死ぬ前に、自分のために生きろ!」
司会が叫ぶ。
「警備! 未来人を排除しろ!」
AIドローンが飛んでくる。
俺は笑って言った。
「俺は排除できねぇよ。
未来じゃ、国ごと消えてんだから。」
ステージが騒然となる中、
ひとりの少女が小さく呟いた。
「……じゃあ、“誇り”って何なの?」
「“誇り”は、自分で選んだ行動に宿るもんだ。
国に貰うもんじゃない。」
少女が笑った。
それだけで、俺は救われた気がした。
夜。
またニュースが流れた。
「未来人、国家侮辱罪で拘束」
あーはいはい。
想定通り。
でも笑えるのは、
そのニュースのコメント欄で、少しだけ空気が変わってた。
「たしかに、国=自分って思ってるの変だよな」
「あいつの言ってること、ちょっと分かる」
「でも、怖いから“いいね”は押さない」
うん、それでいい。
“共鳴”は、見えないところで広がるもんだ。
牢屋の中で俺は笑ってた。
未来人が怒鳴ったって、誰も聞いちゃくれない。
でも、誰かの心が動いた瞬間に、
それはもう“国を超えた通信”になる。
「……というわけで、“未来人、国を自分と勘違いする人類にブチギレる件”でした!」
退場。
拍手ゼロ。
でも、壁の向こうで誰かが小さく呟いた。
「俺も、もう一度考えてみるよ。」
その一言が、
この時代で一番の独立宣言だった。
次回予告:
【第4章】未来人、人間の帰属先を“国”から“個”に書き換える件
──「国家より個人の方がメンテ楽だろ」




