【第2章】未来人、未来からの移民として排斥される件
──「時間難民扱いはさすがに草」
「本日、未来人の受け入れ反対デモが行われました。」
ニュースキャスターの声が響く。
モニターには「未来人帰れ!」のプラカードが並んでた。
顔、真っ赤。
いや、未来に帰れって言われても、そこ滅びてんだけどな。
俺、未来人。
時間の向こうから来た“観測者”。
……のはずだったんだが、
この時代じゃ**「無国籍の移民」扱い**らしい。
「どこの国から来たんですか?」って聞かれるたび、
「未来から」って答えると、
八割の人が笑い、二割の人が通報する。
反応の分布が狂気。
街を歩くだけで、警備ドローンがついてくる。
スピーカーから声。
「身分証を提示してください。」
「ないっす。」
「国籍を確認できません。」
「だから未来人なんだって。」
「未来? 申請外地域です。」
……申請外地域ってなんだよ。
時間軸を地域扱いすんな。
ネットを開くと、俺の写真が出回ってた。
「新型移民」「時間ウイルス」「過去改変リスク」
煽りタイトルのオンパレード。
アクセス稼ぎの養分にされてんの笑う。
コメント欄も地獄。
「未来人とか嘘だろ、税金泥棒」
「こういう奴が治安を乱すんだ」
「だったら未来で暮らせよ」
未来、崩壊してんだよ。
だから来たんだよ。
取材に来た記者が言った。
「あなたが今の社会で受け入れられない理由、何だと思いますか?」
「簡単っすよ。
この時代の人間、“知らない存在”を嫌う病気なんす。」
「……病気?」
「そう。未知を恐れて、理解より排除を優先する。
それを“安全”って呼んで安心する。
けど、その安心が一番危険なんだ。」
「未来では、その病気は治ったんですか?」
「治らなかった。
だから滅びた。」
記者、固まる。
この時代のメディア、真実よりリアクションを求めるタイプ。
夕方、公園でベンチに座ってたら、少年が声をかけてきた。
「おじさん、どこの国の人?」
「国、持ってない。」
「え、じゃあ可哀想じゃん。」
……この純粋な偏見。
誰に教わったんだ。
「可哀想なのは、“国がないと不安”な方だよ。」
少年は首をかしげて走っていった。
未来では、子どもがこういう質問しなくなってた。
でも、それが幸福かどうかは、まだわかんねぇ。
夜。
SNSがまた燃えてる。
タグ:「#未来人を追放しろ」。
街頭ではAIスピーカーが叫んでた。
「この国を守れ! 異時代の侵入者を排除せよ!」
群衆が同調する。
音声波形、完全一致。
“愛国”の音程は、いつの時代も同じなんだな。
俺は群衆の前に立った。
「なあ、お前ら。
未来人が怖いのか?
それとも、自分の未来が怖いのか?」
一瞬、静寂。
ドローンのライトが俺を照らす。
群衆の目が、カメラみたいに無機質に光る。
「俺を排除しても、未来は変わらねぇ。
変わるのは、“お前らがどう向き合うか”だけだ。」
「うるせぇ! ここは俺たちの国だ!」
「じゃあ、その“俺たち”って誰だ?」
返事がない。
代わりに、AIが防犯音を鳴らした。
その夜、俺はニュースで見た。
「未来人、危険思想者として国外退去」
どこの国から退去するんだよ。
世界地図を開く。
線だらけだ。
でも、誰がその線を決めたんだ?
そして、誰が“外”を作ったんだ?
未来人として言わせてもらう。
排除の構造ってのは、いつも同じだ。
違いを怖がる。
怖いから攻撃する。
攻撃したら“自分が正しい”気になる。
……でもな、それ、全部“自信がない”だけなんだよ。
風が吹いた。
夜空が静かだ。
この星のどこかで、誰かが俺を“敵”だと思ってる。
でも、それでもいい。
俺は帰属を持たない。
だから、誰も敵じゃない。
「……というわけで、“未来人、未来からの移民として排斥される件”でした!」
退場。
拍手ゼロ。
だけど、背中に当たる風がちょっとあったかかった。
たぶん、それが唯一の“国籍証明”だ。
次回予告:
【第3章】未来人、国を“自分”と勘違いする人類にブチギレる件
──「国ってお前の一部じゃねぇから」




