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【第1章】未来人、国籍マウントを笑う件

──「所属ってそんなに偉いんすか?」


「こちら、入国管理AIです。国籍を提示してください。」


「ないっす。」


「……は?」


「だから、国籍ないっす。ていうか、国ももうないんで。」


「……お客様、冗談は通用しませんよ。」


「いや、マジで。未来から来たんで。

 国っていう概念、三世紀前に滅びてるんすよ。」


シーン。


ああ、この空気。

21世紀特有の「理解不能=敵視」ってやつ。

懐かしいな。


俺、未来人。

文明崩壊後の“帰属のない時代”から来た。

仕事は“人類の精神史”の調査。

特に「ナショナリズム」ってやつ。

未来じゃ病気扱いだからな。


この時代、街を歩けば、誰もがタグをぶら下げてる。

「(日本) JAP」「(米) USA」「(韓) KOR」──まるでブランド。

SNSでも「#誇り」「#この国が好き」みたいなタグがトレンド入り。


所属がファッション化してんのかよ。


カフェの隣席で女子高生が話してた。


「ねぇ、あの人、国籍どこなんだろ?」

「知らないけど、“日本人じゃなさそう”って言ってたよ?」

「じゃあ信用できないねー」


……おい。

それ、未来じゃ差別発言だぞ。

しかも根拠ゼロ。

“見た目が違う=外敵”って、どこの原始社会だよ。


試しにスマホ(この時代の)を覗く。

ニュースの見出しがすげぇ。


「国民であることが誇り」

「国民らしさを失った若者」

「国に感謝しない人々」


いや、感謝って……親か?

国って、育ててくれた実母かなんかか?

税金で給食出してくれたのか?


感謝するほど優しかった記憶ないんだが。


街角のディスプレイで“国歌AI”が流れる。

通行人が立ち止まり、胸に手を当てる。

歌い終わると、拍手。

で、俺だけ無反応。


すると、すぐに声が飛んできた。


「おい! あんた、国歌に敬意を示せ!」


「いや、未来人なんで。国ないんすよ。」


「ふざけるな! 無所属が何様だ!」


「いや、所属のない様です。」


……キレた。

物理的にも感情的にも、未来に帰りたい。


この時代の人間は“属してること”で安心してる。

「どこに生まれたか」「誰の仲間か」

その肩書きがアイデンティティ。


逆に、“自分”そのものでは存在できない。

だからみんな国旗を背負って歩く。

まるで、国旗がなかったら透明人間になるみたいに。


SNSで俺の映像が拡散されてた。


「国歌に敬意を示さない不審者」

「未来人=反国家思想」

「無所属=危険分子」


うわ、すげぇ。

国旗がトレードマークなら、俺は“エラーメッセージ”だな。

#国籍エラー #データ未所属

タグつけて遊んどくか。


取材に来た記者が質問してきた。


「あなたは、なぜ国を持たないんですか?」


「いや、もう持てないんすよ。

 未来では“国”って、人間のデータ共有バグって言われてますから。」


「……どういう意味ですか?」


「“同じ所属”って錯覚しないと、人間は安心できなかった。

 でも安心した瞬間、思考止めたんすよ。

 結果、滅びました。」


記者、黙る。

周囲の人も黙る。

この時代、沈黙がいちばん効く。


国って、誰のものなんだろう。

「俺たちの国」って言うけど、“俺たち”の定義、毎回ブレてるよな。

税金払う人? 生まれた人? 血? 文化?

誰も答えられないのに、みんな誇る。


たぶん、

誇りって“考えるのが面倒くさい”人が持つ麻酔みたいなもんだ。


空を見上げた。

あの雲の向こうに、未来がある。

そこでは誰も「どこの国の空か」なんて聞かない。

ただ、「今日の空、きれいだね」って言うだけだ。


「……というわけで、“未来人、国籍マウントを笑う件”でした!」


退場。

拍手ゼロ。

でも、背中の無国籍タグが、風に揺れてた。

俺はそれを“自由”って呼ぶことにした。

次回予告:

【第2章】未来人、未来からの移民として排斥される件

──「時間難民扱いはさすがに草」

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