昨夜の記憶はないけれど、あなたの優しさだけ残ってる
朝の光が少しだけ眩しい。私はテーブルに突っ伏して、重たい頭を抱えていた。
あたま……ガンガンしてる……気持ち悪い……てか、彼が帰ってきたくらいから……覚えてない……
「おはよう……頭痛いわ……こんなの上司にバレたら……マジで詰むわ……」
なにも……ないよね……大丈夫かな……部屋も片付いてる?……彼かな?……
ふと、彼の声が優しく響く。
「上司って、本部長さんのことですか?」
う……えっ、なんでその名前を……?夕べ何があったの……
「な、何で知ってるのよ? 私、昨日変なこと言った?」
彼は小さく微笑んでいた。なんだろう……その笑顔、少しだけあたたかくて、悔しいくらい優しい。
「女神様も大変ですね、僕も頑張りますよ」
その言葉に、ちょっと胸が熱くなった。
こんなに健気に、まっすぐに言ってくれるなんて……。
「まあ、あんたは頑張ってくれてるわよ。ただね……」
言いかけて、私は目を伏せた……本当は、ずっと怖かったの……
「その本部長さんが厳しい方なんですか?」
彼の問いに、思わず小さく笑ってしまう。
甘いわ……あの人は厳しいなんて言葉じゃ足りない……
「ヤバいってもんじゃないわよ。ちょっとでもミスしたら魂ごと処分されるわ」
本当、冗談じゃなくて。私だって毎日、ギリギリなのに……
「もしかして僕のこと庇ってくれてたりしてます?」
その言葉に、胸がチクリとした。
うん、そうよ。言えるわけないけど、あなたのこと、ちゃんと守ってる。
「あんたが考えることじゃないわよ。それより、今から魔王討伐行ってきなさい」
そう言って、私はわざとそっけなく告げた。
「とりあえず5人、パパっと行こうか?」
そう言った瞬間、彼の顔が引きつったのが分かった。
ごめんね……でも、あなたの為なんだ……