冷たくしてみたけど、あなたを失いたくない──命令じゃない、ただ私だけを見て
別作品のスピンオフです
彼が戻ってくるのを、私はずっと待っていた。
魔王を討伐している、彼の無事を祈りながら。
もう帰って来ないかも。
それがどうしても、耐えられなかった。
転生の時からずっと見守ってきた。
彼を送り出すたびに胸が苦しくなる。
無事でいて、毎回祈ってる。
「戻ってきて、私のところに帰ってきて」って言いたくてたまらない。
それを言ったら、彼を縛り付けてしまう。
だから、無理に笑って「次の世界もよろしくね」と送り出した。
やっと彼が帰ってきたその瞬間、
私は視線をそらし「帰り、遅いわよ」と言った。
ちょっとだけ冷たくして、彼がどう反応するか見たくなった。
「まさか、他の女と仲良くしてたんじゃないでしょうね」
私の頭の中では、彼が他の誰かに取られてしまうのが嫌で、
その考えに耐えきれず、心が痛む。
「私だけを見なさいって言ったわよね?」
その言葉を言った時、ちょっと強くなりすぎたかもしれない。
彼が返事をしなかった。なんだか不安になる。
だから、少しだけ怖い顔をして「私だけを見なさい」と言った。
その目が、きっと怖かったんだろうな。
彼が私を見てくれると信じているから、
私は彼に伝えられない気持ちを、ただ見守りながら待っている。
彼が私を見てくれるその日まで、
それが私の恋の形だから。
ブラック女神と転生リーマン ~世界を救うもまた怒られる~第二話とリンクしています