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彼には旅行って嘘をついて、研修に行く私。
温泉旅行とは名ばかり。本部への強制研修。
「最低でもこれくらいは終わらせときなさいよ」
私が不在時のスケジュールを彼に手渡した。
見てくるその瞳が、不安そうで……少し、罪悪感。
私だって本当は、行きたくない。
あなたをひとりにしたくない。
「転送もオートで、できるはずだから」
“はず”なんて、不安にさせる言い方しかできない。
でも私が直接、何もしてあげられないのが悔しい。
「連絡はなるべくしないように」
——だって、連絡もらったら、私、戻ってしまうかもしれないから。
たった4日なのに、こんなにもさみしい。
「まあ、本当に困ったときはここに連絡しなさい」
精一杯の“逃げ道”をメモに書いた。
転送システムのカスタマーサービス…笑わないで。
私がいなくても、ちゃんとサポートしてくれる場所を残したかったの。
「女神さまにご迷惑かけないように頑張ります」
その言葉に、胸がきゅっとなった。
ねえ、本当は——迷惑なんかじゃないのよ。
どれだけ、あなたを気にかけてるか…
メモを見て、彼が少し笑ったように見えた。
その笑顔が、どうか最後まで曇りませんように…