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君を選んだのは、偶然じゃないから
別作品のスピンオフ女神目線です
この子は交通事故で転生した。
私にとって「ただの仕事」のはず…
転生システムを担当する女神なのに…
一目見て、私は確信した。
「この子……私の好みだ」
「力を授けます。世界を救ってきてくださいね」
そう言ったけど、本当は。
『私のところに必ず帰ってきて』
そう言いたかった。
世界に転送するとき、胸が少し痛くなる。
人間に感情移入するなんて、女神失格なのに。
それでも。
この子が頑張っているか、私は全部見てきた。
転生する前の人生。魔王を倒すまでの全部。
そして平和が訪れた。
「よくやりました。では――次の世界もよろしく♪」
軽く言った。
でも本当は怖かった。
また、転送しないといけない。
もう帰って来れないかも……
だから、最後にこう言った。
「また私のところに、ちゃんと帰ってきなさいよ……?」
命令のフリをして、祈るように。
それが私の、最初の束縛だった。
ブラック女神と転生リーマン ~世界を救うもまた怒られる~の1話とリンクしています