第4章第2話〜手合わせ〜
ー視点・石川ヒナー
勝斗と青山が手合わせとして外へ出ていったので私含めてみんな興味本位で観戦しようと外へ出る。互いに得物を用意して構えている、勝斗は日本刀、青山は大鉈で互いに見合っていると、榛名が話しかけてきた。
「ヒナさん、青山さんを相手にしているあの人って強いのですか?」
「…少なくとも私や青山より全然レベルが違うほど強いよ。」
私の言葉に榛名が驚いた様な表情を浮かべると冬也も話しかけてきた。
「でも、青山さんだって強いですよ!幾ら何でもレベルが違う訳ないですよ!」
「丁度いいわ、貴方達しっかり見ておきなさい、少しは勉強になるかもよ。」
そう言うと冬也と榛名は構えて見合っている2人に再び視線を戻す。
ー視点・渡辺勝斗ー
今俺は青山さんと見合っている、まだ互いにマナを出していないため間合いを続けている感じだ。だが流石に痺れを切らしたのだろう青山が先に仕掛けてきた。
「洒落臭えぇ!」
そう言い鉈を手にこっちへ突っ込んできた、俺も受けを取る構えを取りマナを放出させる、途端青山の動きが一瞬鈍くなった様に見えた。
「オラァァ!」
かなり大振りだが勢いは凄いな、刀で受けようと思ったが当たると刀ごと砕かれるな。俺はバックステップで回避すると元々いた位置の地面が軽いクレーターを作っていた。危なすぎだろバカみたいな怪力だなワンチャン弘にも通用するんじゃね?
「じゃあこっちからも行くよ…ふっ!」
俺は地面を蹴るように勢いよく前に出ると横薙ぎで仕留めようとしたが、流石は九州一の武人と言ったところか鉈で軽く受け止めやがった、中々やるなと思った瞬間には既に鉈が振られていた。咄嗟に回避し背後に回る、青山さんは俺の幻影を切ったため大きく隙ができている。俺はそのまま青山さんの首の頸動脈に刃を突き付ける。
「勝負アリ、ですね?」
「マジかよ…」
完全な虚を突かれたらしく青山さんは呆然としている、あとなんかついでに観戦している九州組も呆然としているのはなんで?
「それじゃあ俺は失礼しますね」
刀を鞘に戻して室内に帰る、室内には師匠がいた。
「あれ、大将の護衛してたんじゃないんですか?」
「いや、流石に付きっきりってなったら家族団欒の邪魔になってしまうだろ?そんな事よりお前、さっきの手合わせ見たけど、あの鉈の勢いは余裕で受けれたぞ、手加減してるのは知っているが、あの程度の勢いぐらいは止めれるようにしろ、良いな?」
おっとぉ…師匠からのダメ出しがきた、久し振りのダメ出しで一瞬戸惑うが俺が頷くと師匠は2本の刀を取り出して。
「ってことで俺ともやろうぜ、手合わせ」
そんな気はしてたんだよなぁ…しかも絶対ボコボコにされるんよな…でも断れる権利もないから受ける以外ないんだよな。
「…分かりました…」
そう言うと俺は師匠に引っ張られてまた外に連れ出されると皆んな歓声を上げる。そして土俵に立ち師匠は2本の刀を鞘から抜き構えると俺も合わせるように刀を鞘から抜く。
「ちったぁ強くなってんだろうなぁ?」
「…油断しすぎて斬られないようにしてくださいね」
「へっ!言うじゃねえか」
そして互いに見合う。周りも静まり返っていて風の音以外耳に届かない。静寂を破るように最初に斬り込んできたのは意外にも師匠からだった。
「そらよ!」
「くぅ…!」
師匠からの一太刀を受け止める、しかし重い…重すぎる勢いを殺しきれずに後ろへ軽く吹っ飛ぶと体勢が崩れてしまう、そこを見逃す程の様な人間ではなく踏み込み俺を左の刀で横薙ぎで両断される、しかしそれは空気を割いたかのように煙となった。
「成る程『陽炎』か、良い技を覚えたな」
「それほどでも」
回避技の陽炎、超高速で攻撃を避け残像を残す技だ。
「じゃあ次はこっちからいかせてもらいますよ」
『雷牙突』
俺は師匠との距離を詰め刺突を繰り出した、しかし右の刀で軽くいなされ、左の刀で逆袈裟に捉えていた。「まっずい…」
咄嗟に左手で地面に向けて光弾を撃ち込み、反動で空中に退避する。元来二刀流は防御力に長けており攻撃面に関しては余り脅威とはならない筈なのだが…
「筋力が桁違いなんだよなぁ」
「まぁ、伊達に最強ハンターを名乗っている訳じゃないからな」
地面に着地し、俺は懐まで侵入する。
「スピードは更に早くなったなぁ、勝斗」
『最大出力・極炎刃』
これが当たれば勝てるし、当たらなくても体制を崩せる、そう思っていると師匠は防御をせずにまともに受けた。否、空間の歪みを使って受けたのだ。
「…能力使うのはズルっすよ」
「まぁ大人の維持というものだ、下手に防いで弾かれるよりは良いだろ?」
「そうすっけど…」
そう言うと俺の首筋に刃が当てられ、俺は敗北した。いや流石に数秒間無敵になれる能力は無理だ、あれ原理がわからないからコピーできんしマジで強い、ってか絶対師匠にはいらない能力だろ。
「スピードに関しては文句なし寧ろ称えるレベルで速くなっている、だがやっぱりそのスピードに力が追いついていないから捉えきることができないんだわ」
「…はい」
「前々から思ってたんだがお前はスピードに頼りすぎだ、もっと力を使うような戦い方をしてみろ」
「…え?」
そういうと師匠は酒を飲みに割り振られた自室に帰って行った。俺は師匠に言われた言葉を咀嚼しながら考えることしかできなかった。
(スピードに頼りすぎ、か…)
そしてその日の宴会の熱は冷めず寧ろ盛り上がったままその日は終わった。
ー次の日ー
俺は朝の4時に目が覚めて庭に出て刀を振る、毎日の稽古は欠かすのはダメだからな、そうこうして2時間ほどだろうか?不意に廊下を歩いている音が聞こえ俺は後ろ振り向くと大将の娘である美香がいた。
「早いね勝斗、まだ6時半よ?」
「このぐらいの時間で鍛錬するのが1番良いからな、美香はどうした?まだ朝食には早いだろ?」
「んー?なんか目覚めちゃってさ、それで外でなんか振ってる音が聞こえたから見に来たら貴方がいたの」
あーもしかして起こしてしまったんだろうか、それは申し訳ないなーと思っていると。
「申し訳ないとか思ってるでしょ?」
「…なんで分かった」
「顔に出てるよ」
「なわけ」
「強情」
「言ってろ」
そしてそのまま素振りを再開するも美香はじーっと稽古する俺を見つめている、ちょっと緊張してしまうし、気になって仕方がないから聞いてみることにしようか。
「…自室に戻らないのか?」
「ん、だって暇だもん」
「俺の稽古を見るのも暇だと思うんだが…」
「いーや?」
「…そっか」
そう言いながら素振りを続け、2000本目辺りで美香が声をかけてきた、俺もそろそろ休もうと思っていたからちょうど良い。
「勝斗はなんでハンターになったの?」
とか
「なんで日本刀にしたの?」
とか
「昨日ボコボコにされてるの見たよ」
といったくだらない会話で自分語りする以外何もなかった。(昨日のことは軽く優しく小突いた)。かなり長い間話していると時計の鐘が鳴り響き朝食の時間となっていた。
「あ、そろそろいかないと」
「…そうだね、もう少し話したかったな、久しぶりに会ったんだし」
…それもそうだな会うのはもう1、2年ぶりだろうなそれにこいつは大将の娘で次期当主候補だから学ぶことばかりでつまんないのだろう。
「朝飯、俺の隣にくれば幾らでも話せるだろ」
そう言うと美香は一瞬キョトンとした表情を見せたと思うと少し笑顔になった。
「じゃあ後でいくね!またね!」
「…あぁ」
そして美香は先に食事する部屋へ向かって行った、俺も刀を鞘に戻して朝風呂に入って行くとするか。
…この時の空は嫌というほど快晴で雲一つすらない良い天気で、俺は今日も良い日になると良いなーっなんて思っていたんだ。
なんか不穏だね、なんでだろうね(知らんぷり)
次回から本筋、入るよ
※裏設定※
実は鬼と魔人の差は明確に離れており鬼の最強格である黒鬼50体分で魔人1人分である




