第4章第1話〜顔合わせ〜
「ここに来るのも久し振りだな…」
俺の名前は渡辺勝斗、年明けに京都の二条城に集まって交流会という名の宴会をやると親方様から聞いて、林くんやヒナ、小林くん達と共に一日早く着いていた。遥達は明日到着予定らしく、俺らは下準備をしようかと思い始めた。
「昔ここでヒナとぶつかり合ったよなぁ」
「そうね…あの時はごめんなさい…」
作業を進めていく合間に昔ここで起きていたことに浸ってヒナと話しているとヒナは申し訳なさそうにしている、しょうがないことではあるけどな。
「なーに言ってんの、確かに後少しで大事になるとこだったけど終わったしなんならあの後俺を蘇生してくれたじゃん。寧ろ感謝しかないよ。」
ヒナの頭に手を置き軽くポンポンして俺は作業の続きに取り掛かる。
「…アホ」
ヒナの呟きは既に作業に集中している俺の耳には届かなかった。さて、それから大体3時間ほどだろうか?なんとか宴会の準備は一通り終わり、後は明日大将達より先に来る遥達を交えて少し作業をしたら終わりになるだろう。ここ数ヶ月妖怪の出現が全く無いから気が楽だ。一応ヒナから九州で起こった事を聞いてはいるので警戒はするけどな。
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〜翌日〜
遥達となんとか場を仕上げて午後の17時に再度集まる事を話し合い各々京都の観光をしに解散した、実際前に来た時は観光なんてできなかったしな。
「そういえば北海道はどうだったの?」
「とにかく寒かったな、冬だったのもあったけどマイナス10℃とか普通にあるし吹雪も凄いしでエグかった、あとは任務外でヒグマとかエゾシカとかを狩ったな」
「それ勝手にやっちゃって大丈夫なん?」
「いや、人里に降りて被害を出した熊とか鹿とかだけだ、それに許可はもらっていたし流石に無害の野生動物は殺さんよ。」
俺はヒナと共に京都と滋賀の間にある宇佐山城に来ていた、ちなみにこの城の城主はこの俺だ。前の二条城での戦いや北海道での功績を讃えられたらしい。お金さえくれれば良いのにと思いながらも有り難くもらった城だ。まぁでもずっといるわけでもなく京都や滋賀で何かあった際の拠点として活用している。今のところ何も無いんだけどね、城内もかなり質素で基本的な家庭道具や家具と約2ヶ月分の食料と水、そして武器や弾丸があるだけ。しょうがないじゃん俺東京の本部所属だし。因みにヒナもさっき登城して入ってきた時の第一声が
「質素だねー」
である、悪かったな!質素で!心の中で悪態を吐きながらもなんだかんだヒナと下らない話を続ける。最近どうだの、刀や大剣の良さだの、海外にいた時の思い出話などをしていると約束の時間まで残り1時間となっていた。
「そろそろ行くか」
「そうだね」
そして城番の忍びに任せて俺たちは城を出て二条城まで歩いていく。二条城前まで行くと俺たちが通っている歩行者道路の隣に一台の車が停まった。なんだ?と見つめていると。
「渡辺さん!お久しぶりです!」
「結衣ちゃん!久し振りだな!どうしてここに?」
北海道で知り合い戦った女の子、樋口結衣が車から出てきた、なんでここにいるのかと聞くと更に聞き覚えのある声が聞こえた。
「私達も呼ばれたからです。」
「咲ちゃん!それに忍も!元気だったか?」
「はい、相も変わらず樋口に振り回されています。」
中から守山咲と月見忍が出てきた、彼女達も共に北海道で戦った仲間だ。軽く談笑しているとヒナが俺を少しばかり見つめる。多分、誰?って思ったんだろうなと思い紹介することにした。
「紹介するよ、この3人は北海道のハンター、真ん中の子が守山咲でハルバードと大盾を使っていて、右の子が月見忍で忍者刀を使っている、そして左の子が樋口結衣でフレイルを使うんだ。咲ちゃんと結衣ちゃんがCランクで忍はBランクだ」
俺がヒナにそう紹介すると北海道3人組はヒナに軽くペコっと会釈をした、まぁ俺と気軽に話している時点で先輩だろうと思ってるんだろうな。
「そして3人とも、こいつは俺と同じ部隊の石川ヒナで武器は大剣を扱うSランクハンターだ」
Sランクハンターという言葉に反応したのか3人は突然固まり、すぐに姿勢を正して礼を深々とする。一体どうしたんだ?突然の行動で流石のヒナも驚きを隠さずにいる。
「えーっと…あの…顔を上げて…?」
ほらもうビビっちゃってるよヒナが、ってか前はこんな礼儀正しかったっけこの子達?
「その…勝斗と颯太が世話になったわね…」
お前は俺のお母さんか何かかと言いそうになるが引っ込める。
「いやいや林さんと渡辺さんには助けてもらってばかりでしたので…」
「…まぁここで話すのもなんだ、とりあえず中へ入ろうぜ?寒い。」
咲ちゃんとヒナの間で話が盛り上がりそうになったので俺は早く入ろうと催促をする。俺たちは門を潜り抜け会場である二の丸へ足を運び、中に入ると既に俺たち以外の部隊のみんなが着いていた。
「あれ、もしかして遅刻した?」
「いや、そうじゃないし親方様もまだ来てないから安心しな」
小林くんがそう言ったと同時、後ろから複数の足音が近づいてきた、時計を一瞬確認するもまだ大将達が来る時間ではない為ハンターだなと推測する。
「小林さん、ヒナさん、お久し振りです」
「冬也と榛名、久し振り、いらっしゃい」
今度は数ヶ月前に小林くんとヒナが行った九州のハンターが来た、後ろの大男と生真面目そうな男も恐らくそうなんだろうな。(ちなみにちょくちょくヒナが九州での事を連絡していたので誰が誰であるのかは大体分かる)そんなこんなで再会に浸っていると警護の1人が入ってきた。
「皆様、親方様御一行が参られました。」
その一言で俺たち全員は真ん中を開ける様に左右に分かれて正座をするとほぼ同時、襖が開かれ我らネオ・プリズムの現当主、源光一様とその奥方様が共に入られ、その後に続く様に娘である美香と文乃の2人が入られ最後にここまで護衛をなされていた俺の師匠、坂田充が入り襖を閉め左の方に正座し、大将が玉座に座ると全員揃って礼儀として頭を下げる。
「皆さん、頭をお上げくださいな」
大将の言葉で全員顔を上げる。
「今回は無礼講ですので、皆様ぜひお楽しみください。以上です」
大将は簡単に挨拶を済ませると玉座から降りて退出すると全員食事する部屋へ向かう。食事の仕方はバイキング形式でありみんな好きな物を食べていく。俺は少食だからあまり食べずに端っこでゆっくり皆んなを眺める様に見ている、皆んな楽しそうにはしゃいでいる。忘れられやすいかもしれないが大将や奥方様、師匠、大男と生真面目な男以外の皆んなは中学生だ、やはりその年相応にはしゃいでいるのを見ると自然と微笑んでしまう、大人組は今はお酒を飲んでおりへべれけに酔っていたり談笑している、聞こえるのは自分の家族の話や昔の功績の自慢だとかで言ったらアレかもしれないが歳の差を感じられる。
暫くすると大柄の大男が俺に話しかけてきた。
「なぁ兄ちゃんやぁあんたぁ強いんだってなぁ?俺と手合わせしねぇかぁ?」
背に大鉈を背負っている…これが青山大智さんだな、確か熊本のハンターでSランクで九州一の武人と聞いている。うーん…手合わせの気分じゃないんだよなぁ…丁重に断るか。
「あー…えっとごめんなさい、今ちょっとあんまり手合わせの気分じゃなくて…」
「あぁん?なんだぁ?ビビっちまったかぁ?まぁそうだもんなぁ兄ちゃんヒョロイもんなぁ!」
…流石にちょっとピキッちゃった、そこまで言われるならやってやろうか。
「…流石に聞き捨てなりませんね…わかりました。相手します。」
「そうこなきゃなぁ!」
そして俺と青山さんは外へ出て戦闘の準備をする。
この後起こる事なんて梅雨知らずに。
という事でね、第4章始まりましたので頑張っていきましょう!(?)
※裏設定※
源光一と坂田充は実は同期




