第2章第14話〜順調進行〜
〜視点・守山咲〜
私達は渡辺さんと別れた位置から20分程したところに待機していた。恐らく位置的には仙台城の巽門辺りである、因みに林さんが無線で渡辺さんに着いたことを伝えると何やら向こう側で爆発音が聞こえてきた。
「多分今のは勝斗がやったんだろ、少ししたらこの門を潜って行くぞ。」
林さんの指示に私達は頷いた、今現在人や妖怪の足音が大門の方へ向かっていくのが聞こえ、足音が止むと林さんが槍を手に持ち直し走り出した。
「はっやっ!」
「僕達も行こう!」
そういうと結衣と忍もフレイルと忍者刀を持って林さんに続いて走り出した、私も遅れてはならない為ハルバードと大盾を持って走り出した。門番は爆発音がした方を向いていて接近してきている私達に気付かず、気づいた瞬間林さんが一瞬のうちに十字槍で門番兵の首と胴を離した。倒れた遺体を視界に入れることすらせず林さんと私達は走り続ける。時間がないんだ…渡辺さんが今正面の門で敵を引きつけている間に山県正俊を討たないと…!
「しかし勝斗の奴、本当に敵の9割を自身に引きつけたな…重臣も恐らく正門に回ってるなこれ…。」
林さんは走りながら呟いたその表情は少し心配しているような表情だった。同期だからというのもあるのだろうがやはり1人で大群を門で孤軍奮闘させるのは流石に心配になるのだろう、私がその立場に立ったってそう思う。結衣や忍が孤軍奮闘するなら急いで目的を果たして合流しないと…。しかし流石に全部が全部門へ行ったわけではなく、10人位の兵が一つの家屋から出てこちらに向かってくるのが見えた。
「あれは…!?侵入者だ!侵入sy…」
ザンッ!っと林さんが一瞬のうちに出てきた10人の兵を淡々と殺していきました。この感じマジだ…。
「多分ここだ!突撃!」
林さんがそういうと私達はドタドタと家屋に入っていった。そしてその家屋に入ると目の前に一段上に座っている男、山県正俊がいた。
「おやぁ?確か門にて爆音が響いていた気がするのですがぁ、成る程彼は囮ですかぁ、なんとも酷いお方ですなぁ?大切な仲間を1人囮として使うなんてぇ?」
そう薄ら笑みを浮かべた山県はこちら挑発する。なんとも腹が立つ…今なら林さんがあんなにボロクソに言うのが分かる気がする…。
「んなぁことは今どうでも良い…なんで北海道に妖怪を解き放っている?それにお前に使役する力があるなんて聞いていなかったぞ。」
「ふ、ふふふ…ははははっ!」
途端に山県は私達を嘲笑うように笑い出した。
「あなた達は知らなくて良かったのにぃ、林くんはご存知でしょうが私、半年程前にですねプラットフラバラードと接触をしましてねぇ」
「…確かに記録上接触のみしたらしいな、具体的なことは何も書いていなかったが。」
その言葉を聞いた山県は下卑た笑みをさらに強くして立ち上がり、側に置いてあった黒色のマントを身に着けた。
「その時にですねぇ、貰ったのですよぉ、妖怪を洗脳し自分の戦力にできる魔術をねぇ?」
「…誰からだ。」
「Dr.バイケルと名乗っていましたねえその人はぁ」
そう言った途端林さんの表情が険しく、殺気を露わにした。
「お前…その行動がどういう意味を表すか分かってんのか…?」
「えぇ、分かっておりますともぉ、もっとも貴方とお連れの方のみでは私には勝てないと思いますがねぇ?」
そう言った途端林さんが一瞬の合間に槍を突き出した、しかしその槍は山県を掠めることもできず空を突くのみであった。忍と結衣が山県の両隣に展開し攻撃を仕掛けた。しかし山県は蹴りで結衣の態勢を崩し、流れるような動作でダガーを抜き忍の忍者刀を防ぎきった。
「まだまだ青いですねぇ、それじゃあ私に傷一つつけることはできませんよぉ」
そういうと山県は態勢を崩した結衣に斬りかかってきた、私がその間に入り大盾で防ぐが勢いを完全に殺すことはできず押されてしまったがすぐさま林さんが山県に接近し、林さんが山県に攻撃をするも山県は簡単に避ける。
「いい加減うっとぉしいですなぁ。」
「…っ!」
『臥床斬』
『十字乱槍』
山県はダガーで乱撃を、林さんは十字槍の先端で突きの連撃を互いに叩き込むが林さんが押され始めているのが見て分かる、林さんの緑のコートに血が少しずつ付着しているのが見える。
「これじゃあ林さんが…!」
結衣が加勢しようとフレイルを手に持ち行こうとするのを私は静止する。
「咲!?なんで!?」
「…良いから」
まだ…まだだ、今じゃない、…林さんの手元が震え始めた…今だ。
「忍!」
「おう!」
忍は私の掛け声と同時に六角を3本、山県の顔に目掛けて投げた。山県はこちらの六角に気づくとダガーの乱撃を止めて後ろに下がり六角を回避する、しかしそれだけじゃない。
「…っな!?」
山県は足に痛みを感じ足元を見る、足に撒菱が刺さっていた。そう忍は奴が目の前の六角に集中している合間に奴が回避すると思われる位置に撒菱を撒いていたのだ。
そして結衣が突っ込みフレイルを思いっきり振りかざすと山県は足から目の前の結衣に意識を持っていったと同時、結衣は後ろに下がった。
「…なにぃ?」
『獪岳破』
林さんが山県に突っ込み横薙ぎをした、その槍が初めて山県の横腹を斬った。
「ちっ…」
山県の表情が少し険しくなり舌打ちをする。
『ハリケーン・バースト』
山県の周りから8つの嵐が現れ私達全員に襲いかかってきた。私達は強すぎる風力に飛ばされた、山県は間髪入れずに追撃の構えをとった。
『大嵐』
無数の風の刃が私達に向かって降りかかる、林さんと私はなんとか耐えることができたが、結衣と忍はその場に倒れてしまった。
「先ずは2人…こんなもんですかねぇ」
山県は再び下卑た笑みを浮かべ余裕の表情へと変貌する。私は2人の元へ近づいた。
「じっとしてて。」
私はそう言うと2人に手をかざした、すると2人の傷はみるみる塞がり出血は抑えることに成功した。渡辺さんに教わった簡易治療術、傷や怪我を塞ぎ痛みを和らげる魔法だった。ただ、流石に集中しないとできない緻密なマナ操作に私はかなり疲労を覚え、ふらついてしまう。
「回復魔法かぁ、でも簡易治療術でふらついているようなら貴方を始末しましょうかねぇ。」
そう言うと山県は私に向かってきた、私は2人を後ろに突き飛ばして迎え撃つ態勢を整えようとしたが。
「…っ!?」
身体がふらつく…これじゃあ盾で防いでも…
『風切り』
山県のダガーが私に向かって横に振り下ろされる、既に懐まで侵入されて私は盾も構えることすらできなかった。




