第2章第12話〜巡り会い〜
私達が攻めに転じようと一歩足を踏み込んだ瞬間だった。不意に不気味な空気が流れた…渡辺さんの様な不気味で途轍もない圧を私達は感じ取った。それはゴブリン兵も同じであった。
「…これはこれは困りますねぇ、こちらの大事な大事な兵士を殺されてしまってはぁ。」
そう言って私達とゴブリン兵の間にダガーを腰につけている男が現れた。
「初めまして、お嬢さん達…私は東北にある支部、ゴールドフールトランスの大将、山県正俊と申します…。」
ゴールドフールトランス…渡辺さんの話で出てきたきな臭い動きをしているって噂の…そして…。
「この北海道の他に妖怪を放っている組織のトップ…!」
私がそう呟くと奴は不敵な笑みを浮かべて続ける。
「おやぁ?ご存知でしたか、ですがどっちみち死ぬのですから知ってても知らなくても変わらないことですよぉ」
そう言い奴は腰のダガーを持ち構えた、その瞬間。
「おいこら、テメェ何しとんじゃ。」
私達の前に十字槍を持ち緑色のロングコートを羽織った人が上から降りて来た、林さんだ、林さんは奴に槍先を向け臨戦体制に入った。
「おやおやこれはぁ、あの弱くて弱くて仕方がなかった林颯太さんではございませんかぁ?生きていたのですねぇ?しぶといんですなぁ?」
「あいも変わらず癪に触る様な言い方をするよな正俊、この場でお前を突き殺しても良いんだぞ?」
「君1人で私に勝てるとお思いですかなぁ?なめられたものですねぇ」
奴は林さんの脅しにも屈せずあいも変わらず下卑た笑みを浮かべたまま言い合う。
「1人じゃねえさ」
「…おっとぉ?」
「1人なら兎も角、俺もおってもなお勝てると思ってんのか細目野郎が。」
奴の背後にいつの間にかゴブリン2体の首を落としていた渡辺さんが刀を構えながら立っていた、流石にこの2人相手にするのは奴も分が悪いのだと判断したのだろう。しかし顔の余裕な表情を崩さない。
「…おやまぁこれはこれは…同じレジェンドである渡辺勝斗さんではぁないですかぁ、初めましてですねぇ?」
「…諦めて投降し、北海道に妖怪を放出するのを辞めて俺と共に大将の所まで来るんだ。この場に俺と林くんがいる時点でお前に勝ち目は無い、今大人しく言うことを聞けばお前の部下の命と東北の支部の権限は保証する。」
「なんともまぁ傲慢な考えですねぇ、でもどうせ出頭した所で私の命を取られることには変わりありませんよねぇ?」
渡辺さんと林さんの目が細くなり、奴の雰囲気も更に悍ましくなって来た。
「どうせならぁ、一勝負といきましょうやぁ…私達の拠点、青葉城にて決戦といきましょうやぁ。」
「勝てると思ってんのか?林くんとこの子達だけなら五分五分かもしれないが俺がいるのにか?」
「侮らないでくださいねぇ、渡辺さん、私これでもあなたと同じくレジェンドなのですよぉ、それに地の利は私達にあるのでねぇ。」
そう言うと奴は上に飛んで逃げて行った。奴の気配が私達でも分かるぐらいに無くなると、2人は私達に心配そうな顔をしながらよって来た。
「大丈夫か?3人とも…」
「あのクソウザ嫌味イカレポンチゴミ老○ジジイに何かされてない?」
林さんボロクソに言うなぁ…そんなに嫌いなのかあの男が。2人は私達になんの傷や怪我がないと知ると安堵の表情を浮かべた。私は林さんにさっきの奴の提案に乗るのか否かを聞いてみた。
「林さん…どうするのですか?」
私が言うと結衣と忍も林さんの方に視線を向ける、渡辺さんは目を閉じて両腕を組んでいる、まるで林さんが何を言うのかが分かっているかのように
「勿論、赦しの機会を与えた上で拒絶し、尚且つ北海道に危険を齎したアイツの首を取る。」
「そうこなきゃなっ!」
渡辺さんは閉じていた目を細く開いて横にいる林さんに視線を向けると私達に視線を向け直した。
「…死ぬ可能性は正直に言って今のお前らなら7割くらいだ、それでも…お前らは来るか?」
渡辺さんの真剣な眼差しと言葉の圧によって私達はたじろぐ、でも忍は兎も角、私と結衣は流石に分かる渡辺さんは私達を死なせたくないんだ、だから少しでも死ぬ可能性を出して戦わせないようにしたいのだろう…それでも私は…私と結衣は変わらない。
「「戦います。」」
忍は驚いた目を私達に向ける。渡辺さんと林さんは目を閉じると、ふっ、と笑みを浮かべた。
「ちょっと前まで俺の圧にビビってたのに…こんな立派になってな…」
「初めて会った時から変わらないね、君達は…」
「忍も来るよね?」
結衣が忍に笑顔で手を伸ばし、差し出す、忍は驚いた表情のまま結衣と差し出された手を交互に見ると次第に顔が紅く火照っていくのが目に見えて分かる。結衣は何も気にしていない様子だがな。
「ま、まぁ…そりゃあ…」
照れてるなぁこいつ…まぁ惚れるのも無理はない結衣はかなり可愛い顔をしているからね…。渡辺さんと林さんはニヤニヤした顔をして2人を見つめる、こらそこニヤニヤしない、え?私はだって?勿論ニッチャニチャしているに決まっているじゃないか。
「まぁそう言うことで…2ヶ月後全員で青葉城…殆どの人は仙台城と言うな、仙台城に向かい、大将の山県正俊を討ち、この騒動を終わらせる。」
渡辺さんがそう言い私達は頷いた。この戦いが少なくとも私達の周りで起こるこの騒動が終わるんだと、私は感じ取った。
〜視点・渡辺勝斗〜
「〜っと言うわけでこれから東北のゴールドフールトランスを攻めようと思うんだが、どう攻略するのが良いと思う?」
俺は林くんと一緒に無線機を通じて1人の人間に相談をしていた。
『どうって言っても…あんたらならゴリ押しでいけるんとちゃうん?いちいち僕に聞かれても…』
と愚痴をこぼすのは俺たちの部隊の頭、オペレーターの今村遥だ。
「そーゆー訳にはいかねえんだわ」
「今回は勝斗と同じレジェンドが相手だからな、下手すりゃ勝斗意外死ぬ。」
はぁ…と無線から遥のため息が聞こえる、そりゃそうだわな、去年遥は俺の入隊試験で俺と仕合をして、その強さを肌で実感している。そのレベルと同じ奴と戦いにいくと言っているので多分今頃胃に穴が空いているのだろう、痛そー。
『まぁ夜襲をするってのは前提であるとして…問題は中に入ってからだろ?』
よく分かってんなぁ流石俺たちの脳
『取り敢えずその敵大将は本丸にいるとして、他は勝斗が当たっていくのが良いんじゃないか?』
「俺を?」
『そ、あんたはマナが無尽蔵にある、それに手札も能力のお陰で尽きることは殆どない、ならお前が先頭に立って薙ぎ倒していくのが妥当だろう、林やその後輩に戦わせているといざという時にマナが尽きてしまっている可能性があるからな』
成る程な確かにその可能性は全然あるし、それが妥当でもある。だがもうちょっと何かできそうなんだよなぁ…あっそうだ。
「なぁ遥、仙台城の正門で俺が派手に暴れたら、どのくらいの戦力が俺に当てられると思う?」
『…?自分なら全戦力か守備も考えて8〜9割は向かわせて重臣も向かわせるな…あっ』
気づいたか、流石遥だ、林くんも薄々勘付いているらしい。
「勝斗、お前まさか。」
「そ、俺が正門でオモクソ暴れれば敵は主戦力を俺に回させざるを得ない、だからその間林くんはあの子達を連れて正俊の下へいくんだ。合図はこっちでするから合図が来たら潜入できそうなところから入って本丸に行くんだ。」
兎にも角にも俺はこいつを…こいつらを信じて引きつけるしかない、それが最善だ、かつてヒナの元へ行くために足止めをしてくれた彼等の恩に報いるために、今度は俺が止めるんだ。
そして2ヶ月が経ちその時は来た。
もう少し入れたかったけどこれ以上やるとグダグダになる可能性が出るのでここら辺でスパートかけます。




