第2章第1話〜新たな戦い〜
お久しぶりです、作者です。
大変お待たせしました。
第2章『北東戦争編』スタートです。
渡辺勝斗達の戦いから僅か1年…舞台は北海道へと移り変わる。
「…じゃあ行ってきまーす」
「咲、気をつけてね〜」
白のセーラー服に脛辺りまでの長さの紺色のスカートを着た少女が鞄を持って家を出る。
少女の名前は守山咲、年齢は15歳の中学生であった。
「あー…眠っ…早く帰りたいなぁ〜…」
欠伸をしながら学校までの道を歩く。
(あ…今日提出の課題あったっけ?…まぁいいや)
信号を渡り学校の門を潜り抜け自身の下駄箱に靴を納め上履きに履き替え、教室に入る。
「あ、咲おはよぉ〜」
「ん、結衣、おはよっ」
「相変わらずめんどくさそうな顔をしてるね〜」
「実際めんどくさいしね」
席に座ると少女、樋口結衣が話しかけ咲は静かに返す。
「そういえば咲、あの噂知ってる?」
「あの噂って?また吉家さんが二股してるとか?」
「違うよ!ってかあの人前に二股してたの!?」
「そうだよ、んで今またなんか野球部の主将と付き合ったってさ。」
「へー…めっちゃ屑じゃん…って、それはどうでもよくて!」
(どうでも良いんだ…)
「この学校、幽霊が出るんだって…それも17時から20時の間だって!」
「へー、そーなんだ。」
結衣が目を輝かせて喋るも、咲は興味が無さげに返答をする、その返答に不満があったのか結衣が頬を膨らませる。
「咲〜、もう少し興味を持ってくれても良いんじゃないの〜?」
結衣から出た言葉は実に咲の返答に対する不満であった、途端結衣は思いついたかのように顔をニヤリと笑みを浮かべ、咲に話しかける。
「ねー咲、少しだけで良いからさ、その幽霊を見るのに付き合ってよ!」
「えー?なんでよ、めんどくさい…」
「ねぇぇぇ、いーじゃーん、少しだけ!少しだけで良いからさー」
こうなった以上結衣は止められないな、と判断した咲は結衣を宥めるついでに飲むことにした。
「はぁ…少しだけだからね。」
「ほんと!?ありがとう咲ー!」
結衣が咲に抱きついてくる、正直暑苦しい、特に結衣の胸部が当たっている肩辺りが一番暑苦しい。
「…結衣、暑苦しい、離れて。」
結衣は満面の笑みを浮かべながら離れると、落ち着かない様子で咲を見つめ。
「それじゃ!放課後ね!忘れないでね!?」
「ハイハイ分かったよー。」
はぁ…と溜め息をつきながら咲は結衣に了承をすると予鈴のチャイムが鳴り、結衣は咲に、またね!と言うと自身の席に戻り、着席する。
〜放課後〜
ホームルームが終わり、先生との挨拶を済まし、咲は帰る支度をしているとやけにテンションが高い結衣が歩いてくる。
「咲!行くよ!忘れてないよね!?」
「…あー、そっか、なんか行くんだっけね?」
「もー!やっぱり忘れてたー!」
結衣は頬を膨らませ、怒ってますとアピールをするが咲は、ハイハイ…と軽く謝罪をし、早く行くよと結衣を連れて行く。
「それで…何処で出るん?その幽霊とやらは。」
「校舎の裏によく出てるのを見るって言ってる人が多かったから、多分校舎裏にいるはず!」
「いるはずって…」
むんっ、と胸を張りながら言う結衣を咲は呆れながら見つめ、校舎裏に向かって歩いていく。
時刻は現在18時半手前、校舎裏手前まで来ると既に嫌な予感を2人は感じ取っていた。
これ以上進むと絶対に死ぬ、死ぬとまではいかなくとも大事になるっと…。
「ねぇ…結衣、これ辞めとかん?私、すっごい嫌な予感がするんだけど。」
「でも…ここまで来たからには…ちょろっと見るだけでも行こ?」
咲は結衣を説得するが、結衣は頑なに首を縦に振ろうとはしない。
すると奥の方から微かに物音が聞こえ咲と結衣は背筋が凍るほどの悪寒を感じ取り物音の方を見ると、奥の方に人よりやや大きい蜘蛛のような生き物が見えた。
「ひっ…!」
結衣が小さい悲鳴をあげ、蜘蛛のような生き物はこちらを向く、ムンクの叫びの人の顔のような顔をしており、こちらを視認されてしまった、生き物がこちらに向かってくる。
(もう…ダメだ…)
咲と結衣はこの状況に絶望するしかなかった、足がすくんでしまい動けなくなってしまったため、蜘蛛人間との距離が縮む、蜘蛛人間が口から糸を吐き結衣を捕らえようとする。
「きゃあ!た…たすけ…」
「結衣!」
咲は結衣を突き飛ばし、身代わりとなり糸に捕まった。
「結衣!逃げて!」
「でも…咲が!」
せめて結衣だけでも、そう思い咲は目を瞑る、蜘蛛人間は糸を引き寄せ、咲を食おうとした時だった。
「--っ!」
咲の身体は糸と空を切り、地にぶつかり何が起こったのかと目を開ける、目の前には十字の槍を持った少年が立っていた。
「やっと見つけたよ…時間かかりすぎた…」
十字槍を持った少年はこちらを向き、倒れて呆然としている咲に手を差し出す。
「大丈夫?立てる?」
「え、あ…うん…ありがとう…」
咲は少年の手を取り立ち上がる、少年は蜘蛛人間の方を向き、槍を構える。
「2人とも今のうちに離れるか物陰に隠れて、こいつは俺が始末するから。」
「は、はい…」
少年はそう言うと蜘蛛人間に向かって走りだす、蜘蛛人間はそれに対応するため両前足を大きく広げ、少年を挟もうとした。しかし少年は槍を地面に刺し、軸にして宙に浮いて躱し、蜘蛛人間の頭部を目掛けて槍を突き刺した。
蜘蛛人間は雄叫びをあげ、少年を前脚で振り下ろそうとするがその前に少年は降り、槍を構えていた。
「ここで…取る!」
『回風突!』
少年は回転しながら槍を蜘蛛人間の顔に突き刺した。
蜘蛛人間は数秒暴れると力が尽きたかのようにぐったりしてしまった。
「ふぅ…終わったか。」
少年は槍の先端を布で包み背のベルトに納め、小刀を取り出し蜘蛛人間の首を切断した。
咲と結衣は物陰から出てくると、少年と首のない蜘蛛人間の遺体を交互に見る、結衣が少年に問いかける。
「咲を助けていただきありがとうございます…ですが、貴方は一体…?」
少年は少し溜息をつく。
「…ここじゃあなんだ…少しついてきてくれ、そこで話そう。」
咲と結衣は少年について行った。
薄々勘づいている人、というより分かっている方が殆どだと思いますが槍を持った少年は前章の林颯太です。
次は林が北海道に飛ばされた理由と咲・結衣の今後です。




