1章6話 師匠がいない日常
朝起きると師匠が居なくなっていた。
僕は急いで森の中に行き森をさまよう……そんな僕の前に現れたのは師匠ではなく魔物を食らう魔物だった。
食われている肉片の隣にある大きな腕から食われているのがグレートベアーというクマ型の魔物だとわかった。
この森は下層、中層、上層に分かれていて奥に行くにつれて魔物が強くなる、そして各層の魔物は他の層に移動することはないということがわかっておりそのような生態系の魔物を魔王軍の手下ではない魔物として野良の魔物と言われていた。
そして今のこの光景……グレートベアが大きな犬のような魔物に捕食されていた。
でもありえない……だってグレートベアはこの下層で一番強い魔物のはずだから。
その瞬間僕の頭は目の前の犬の魔物の正体を考えるが「魔王軍の魔物」「中層以上の魔物が何らかの方法で下層に」様々な選択肢が頭をめぐり処理ができない。
すると犬の魔物の顔がこっちに向く。
犬の魔物とアキトの目が合いその時アキトは思考も吹っ飛ぶほどの圧倒的な恐怖を感じる。
アキトの体は恐怖により固まり、下半身から液体が漏れ始める。
犬の魔物はアキトに興味がないかのように目線を外した。
その瞬間体の硬直が解けて俺は犬の魔物に背を向けて走り出した。
犬の魔物はアキトに本当に興味が無いようで追いかけてはこなかった。
僕は走る勢いを止めることなく家へと向かった。
家の前には泣き崩れているマナがいて、走ってきた僕の姿を見て何かを言おうとしたがマナはただ黙って走っている僕を受け止めると優しく抱きしめながら僕の頭をなでた。
僕は目を覚ますと見なれた天井があった。
そして隣からとても暖かく柔らかい感触があった。
俺が感触のする方に顔を向けると気持ちよさそうに寝ているマナの顔があり僕は顔が熱くなる感覚を感じるが自分をごまかすためにマナを起こさないようにゆっくりとマナから離れると熱くなった顔を冷ますために外に出た。外はもう夜であり、夜風にあたることで脳が冷静さを取り戻す。
脳が冷静さを取り戻したことで今日遭遇した魔物のことを思い出し体が震えだす。
僕は体の震えを夜風のせいにして家の中に入る。
家に入ると机の上に朝は無かったマナが作ったであろうお弁当と朝気づかなかった本と手紙を発見する。
僕はお弁当を開けて中からおにぎりを出してすきっ腹におにぎりを入れながら恐る恐る手紙を開いた。
そこには予想通り見なれた師匠のきれいな文字が並んでいた。
「アキト……私がお前の師匠を放棄し、森へ向かうこと、本当に申し訳ない。
森ではいま生態系がぐちゃぐちゃになっており、各層関係なく魔物が移動している。
幸運なことに今現在森から出て人を襲う魔物はいないがこの村以外では多くの森に入った人間が強い魔物に襲われている。
過去にこんな事態が起こったことはなく、いつ魔物が森から出るかわからないため私が調査をすることになった。
森の中は今荒れており、危険だからアキトを連れて行かなかったのもあるが、私はもし、森の魔物が森の外に出た場合、私の代わりに村を守ってほしい。
危険なことを弟子に任せるなんて師匠失格だということはわかっているが私はお前ならできると信じている。
アキトが強くなるために役に立つであろうからこの森に生息する魔物のリストをこの手紙と一緒に置いておく。
次この家に戻るとき、強くなった愛弟子の姿を待ち望んでいる。
ヒナ・シムラ
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僕は目が覚めると剣を取り外に出て剣を振る。
剣を飽きるまで振ると家の周辺を走る。
そして昼になるとマナがご飯を持ってくる。
ご飯を食べ終わるとおれは森に行き魔物を倒す、新しく出合った魔物によってボロボロになる。
空が暗くなり星が沢山出たころ僕はボロボロの体を引きずりながら家に帰る……
家に帰るとマナが作った料理と傷に効く薬が置いてある。
それを1人で食べながら魔物リストで今日戦った魔物について調べ、そして泥のように眠る。
そして明日の朝も剣を振る……
そんな毎日が続いた。
本当に今命が尽きず生きているのは奇跡であり、でも本人は気にすることもなくただただ強くなろうとした。
今日も日課の剣の素振りとランニングが終わり昼になる
「アキト〜私がまた手作りお弁当を持ってきてあげたわよー!!」
「あぁ…ありがと」
「アキトーちゃんと朝ごはんは食べてるの?」
「あぁ…食べてるよ」
「嘘ね!…全く…いつもお昼と夜は私が持ってきてあげてるから生きて行けてるけどほんとアキトは私なしじゃ生きられないわね!」
「そうだね…いつもありがとう」
「まぁ…私も将来の旦那様への花嫁修行にもなるしー別にいいけどーでもアキトもっと美味しそうに食べなさいよね!」
「あぁ…ごめん…すごく美味しいよ」
そんな軽い会話をして心に少しのゆとりを得たので、山へと魔物を倒しに行く
ボロボロになった体で帰ると、夜なのにそこにはマナがいた。
「どうしたんだ?…いつも置いていくだけなのに…」
「全く!待ったわよ!いつもこんな時間まで帰ってこないの!?呆れた!」
なんでマナはこんなに怒っているんだ?
「はぁ…ほんと呆れた!…まぁいいわ!行くわよ!」
そう言うとマナは俺の手を掴み村の方へと連れられた。
「どこに行くんだよ?」
「やっぱり…忘れてたのね…まぁ着いたらわかるわ!」
僕はされるがまま抵抗もせずマナについていく