プロローグ
その日人類は敗北を確信した。
その日から人類の絶望は始まった。
ザザザーザー
「どうもーー人間のみなさーーん!げんきですかぁー?」
そのふざけた言葉と共に空に映像が浮かび上がる。
「なんだ?あれ?」
そこには満面の笑みを浮かべながら手を振る男がいた
「今日この映像を見てくれてるみなさんに僕からのプレゼントがありまーす」
その言葉と共に男は左にゆっくり歩く、男の後ろがハッキリ見えてくるにつれ人類はそれぞれの表現で絶望を表す。
「勇者様…」
そこには人類の希望の光である勇者が傷だらけで座っていた。
「皆さん今どんな顔してますかぁー?絶望ですかー?かわいそぉーどうです?勇者様ぁ〜」
「みんな…ごめん」
人々は天を仰ぎたいが空を見ると映像が見えるので顔を伏せることしかできなかった
「おやおやぁ〜ダメですよぉ〜皆さん顔を伏せたらこれから始まるショーが見れないじゃないですかぁ〜」
魔王がそういうと全人類の顔は何かの力により無理やり上げられ瞼も開いたまま動かせなくなった。
「皆さんしっかり見ましたね!それでは!ショータイムの始まりです」
その瞬間勇者の右腕が吹き飛んだ……
勇者の右肩からは大量の血しぶきが飛び人類は絶叫した。
そして魔王は優しさと楽しさを混ぜたような声色で勇者に一言
「勇者……人類の敗北宣言をしたら楽にしてやろう」
その言葉とともに人類はざわめく、人々のさまざまな考えが人類の国に飛び回る……
ある場所では勇者に対して「がんばれ」と応援し、
ある場所では「お前次第で俺らの人生が決まるんだ!絶対宣言なんてするな!」と怒声を上げ
ある場所では「あなたは頑張りました、もういいのです」と優しい言葉をかけ
ある場所では、「やっぱり勇者でも魔王には勝てなかったか」と諦めの言葉が飛び交っていた。
そんな人類を見ていた魔王が口角をニヤリ上げてとても冷たい声言う、「やっぱりあなたたちは口では色々言っていても心の中ではここで勇者が宣言しなければまだ人類は現象維持でいられるなんて全員どこかで考えている……ほんとに人間って気持ち悪いほど自己中ですね」
その言葉で人類は押し黙った。怒りを向けようと思う気持ちも出ないほど魔王の声には重みがあったのだ。
するとずっと黙っていた勇者が人類を見て
「人類はまだ負けていない」
そう重い一言を言った。
するとそんな重い言葉を軽々と持ち上げるように軽い口調で魔王は「では死んでください」と言い有無を言わさず勇者の首が飛んだ。
その瞬間映像は終わり人類も呪縛から解き放たれたが、魔王軍が攻めてくるのではないかとパニックになった。
……だが魔王軍に動きはなかった……
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勇者の処刑があった次の日の処刑があった時間にまたもや天空に映像が流れ出し、人類の体は固定される。
人類は悟った今度は魔王の勝利宣言だと……
だが次の瞬間人類は驚く、そこには昨日死んだはずの勇者の姿があった…
人類は疑った、これは昨日の映像なのか?と、だが魔王の言葉は昨日と少しずつ違いがあり、何より今日は一発目に勇者の左腕が飛ばされた。
そしてその日も最後には勇者の「人類はまだ負けていない」の言葉とともに勇者の首が飛んだ
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勇者の公開処刑動画が1年続いたころ毎日処刑される勇者の姿に人類は慣れてきて毎日のルーティンの一つのぐらいの感覚に考え始めていた
その人類を見て勇者が苦しんでいるのにどうしてそんなに普通に生活できるんだと考えるのは勇者と直接関わりのある一部の人間のみだった。
そんな中今日の処刑が始まる……
処刑はいつも通り魔王の軽口から始まりいつも通り続いていくもう人類は慣れたようでいつも通り処刑姿を見ている
魔王が「あなたが何度も死んでいるのに人類はもう当たり前かのようにしているなんて本当に人類とはどんなにクズなのか」など人類を侮辱するがいつものことなので人類の心にもう響くことはなかった。
魔王が呆れた顔をしながらも人類を侮辱し続けているとずっと黙っていた勇者が顔を上げた、人類はそれまで思っていた今日も勇者は「人類はまだ負けていない」と言ってくれると……
勇者の顔がとても優しい顔で呟く
「まだ見ぬ君の幸せを僕は願っているよ」
その言葉を受けて人類はさすが勇者だと称賛した。
だが、次の瞬間勇者の顔が変わったのを見て人類は凍りついた……
勇者の顔がまるで自分たちを呪い殺そうとしているような顔だったからだ……
そしてさっきの声を出した人間と同じ人間だとは思えないようなドス黒い声で宣言した。
「人類は俺の死を持って敗北する人類に希望はない……」
そして勇者の首が飛び魔王がニヤニヤした顔で前に出くる
「それではこれより皆さんに滅んでいただきます!」
その宣言と共に映像は終わり魔王軍により全人類の半分は支配された。