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【ホラー 怪異】

悪魔のコレクション

作者: 小雨川蛙

 

 突如現れた私を見てあなたは暫し呆然とする。

「一体どこから?」

 当たり前の問いだ。

 何せ、彼は閉じ切られた自室にいるのだから。

「どうやって入った?」

 慌てた様子でそう問いかけるあなたに私は告げる。

「死にたいのですか」

 問いかける必要もないと思った。

 何せ、あなたの左腕には幾本もの切り傷が出来ていたから。

 カッターナイフを持つあなたの手が震えていた。

「死神か」

 あなたの問いかけに私は答えない。

 しかし、あなたは勝手に納得した。

「僕は死ねるんだな」

 都合良く解釈を続けていく。

「ようやく僕は死ねるんだ」

 きっと、あなたはずっとそうして生きてきたのだろうと私は思った。

 故にこんな状態においても、自分自身の望む通りになると思っている。

「あなたの命をくれますか?」

 故にこんな怪しげな問いにさえ、あなたはあっさりと首を縦に振る。

「あぁ、持って行けよ。この命」

 死にたくて、死にたくて仕方ない。

 そんな死にたがりの命に触れ、私は微笑んだ。

「ありがとうございます。これでまたコレクションが増えました」

 怪訝な顔をしたあなたは一瞬で一つの可能性に気づいたが、もう遅い。

 あなたはもう私に命をくれたのだから。


「出せ! 出せって!!」

 牢屋の中であなたが叫ぶ。

「出しませんよ。あなたは命をくれたのだから」

 あなたは言葉に詰まる。

 その様と思いはあなたが本当は生きていたかったことの証明だ。

 しかし、あなたは認めずに言う。

「なら殺せ! 殺してくれ!」

「殺しませんよ。殺人は悪い事だから」

 私の言葉にあなたは歯ぎしりをする。

 今更悔いても遅い。

 あなたは私に命をくれた。

 だから、あなたはもう私の物だ。

 私は伸びをして立ち上がり、新たなコレクションをしまっている部屋から出た。


 そう。

 ここは私のコレクションをしまう空間なのだ。

 我ながら悪趣味だと思う。

 自殺をしたいのに死ねない者達を集めるなんて。

「さて、次のコレクションを探すか」

 そう言って、私は黒々とした悪魔の羽を開いて再び人間の世界へ降りて行った。

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