第3話「勇者襲来!?兄妹の本気バトル」
「アリシア!!」
雷鳴のような声が響き渡ると同時に、玉座の間の扉が勢いよく開かれた。その中央に立っていたのは、一人の青年――人間界最強と名高い勇者、エリオだった。
金髪を逆立て、鋭い青い瞳が玉座にいる俺、そしてその隣に立つ妹、アリシアを睨みつけている。
「どういうつもりだ、この婚約は!」
エリオの剣が抜かれるのと同時に、魔族の兵士たちが身構える。だが、俺は手を上げてそれを制止した。
「落ち着け、勇者。俺たちはただ話をしているだけだ。」
「話だと? 妹を魔王に渡すなんて、何を考えているんだ!」
俺が何か言い返す前に、アリシアがエリオの方へと駆け寄った。
「お兄ちゃん!やめてよ!魔王様は私を守ってくれるって約束してくれたんだから!」
エリオは驚いた表情を浮かべた後、アリシアの肩を掴む。
「守る? 魔王が人間を?そんな戯言に騙されるな!」
「騙されてないよ!魔王様は私がここで暮らすのを許してくれたんだから。お兄ちゃんが反対したって、私はここにいる!」
「アリシア!」
二人の言い合いを眺めていた俺は、ため息をついて口を挟む。
「なあ、勇者。俺の城で騒ぐのはやめてくれないか?妹を奪い返したいなら、少なくとも礼儀を尽くすべきだ。」
エリオは剣を俺に向け、激昂した声を上げる。
「礼儀だと?お前が人間を平和的に扱う魔王だなんて信じられるわけがない!」
「信じるかどうかはお前次第だが、俺はこの婚約が魔族と人間の和平に繋がると思っている。それに……妹の意思を尊重する気はないのか?」
エリオは言葉を失ったように黙り込む。その隙にアリシアがエリオの腕を振り払い、勢いよく言い放つ。
「お兄ちゃん、いつも過保護すぎるんだよ!私はもう大人だし、自分のことは自分で決めるの!」
玉座の間は静まり返った。俺は密かに感心しながらアリシアを見つめる。彼女の勇気は、俺の想像以上だった。
「アリシア……」
エリオはしばらく黙っていたが、やがて剣を収め、深い息をついた。
「……分かった。だが、俺が納得するまで、この婚約を認めるわけにはいかない。」
彼は俺を睨みつける。
「魔王、次に会うときは妹を泣かせていないことを祈るんだな。」
そう言い残して、エリオは踵を返して玉座の間を後にした。
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アリシアはほっとした表情で俺の方を向く。
「魔王様、大丈夫でしたね!」
「まあ、あいつが冷静になっただけでも十分だ。」
そう答えながらも、俺は内心で複雑な気持ちを抱えていた。この婚約が本当に和平への第一歩になるのか、それとも新たな争いを生むのか――。
次回:婚約者アリシア、魔族たちとのドタバタ生活が始まる!
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