【短編】現代社会の冒険
電車での過ごし方には、性格がでると言われる。
例えば、座る場所や足の仕草、目的地までの時間の潰し方。
でも正直、座る場所なんか気にしないし足の仕草だってそのときどきによる。
そんな事を考えながら車窓を眺めるのが僕の電車の過ごし方だ
電車に揺られ、知らない街の景観を見ていると
このままどこにでも行けるような気がする
その先には僕のことを誰も知らない街
新しい僕に出会えると、叶うはずのない淡い期待を胸に。
スマホの中の仮想世界には目もくれず
車窓の外の現実世界に向き合う。
スマホを見ることは一種の現実逃避だから、
日々、現実と向き合っている人は電車では現実逃避をして
日々、現実から逃げている僕は電車では現実世界に向き合おうとして
ここだけは「現実」に向き合わなくてもいい時間
ここだけは「現実」に向き合おうと挑戦する時間
そんな綺麗な対比は、側から見たら
僕はこれから初めて冒険に出る新米勇者なのだろうか。
魔王を倒す伝説の剣も
どんな攻撃も防ぐ最強の盾も
あいにく持ち合わせてはないけれど、
スーツという現代紳士の鎧を身に付け
「現実」に
冒険へ