1 子育てで気をつけていることはありますか
本日、コミックス2巻発売日です!
よろしくお願いします。
「子育てで気をつけていること……ですか?」
それはある早春の日のこと。
わたしは、夫リカルド、義娘リーディアと共に、イーゼル殿下の子ども部屋を訪問していた。
今年の王国カタログのモデルとなるわたし達は、衣装用の採寸をしてもらわなければならなかった。
そのため、王家の権限で大転送魔法陣を臨時運行してもらい、わたし達ははるばるリキュール伯爵領から王都にやってきていたのである。
エタノール王国王妃シェリル殿下主導で進められるカタログには、いつの間にか、イーゼル殿下にエルヴィラちゃん、ディエゴ君にシルクちゃんも参加することになっていた。
楽しい再会を果たし、採寸を終えた五人の子ども達が楽しく交流している横で、わたしとリカルド、ウィリアム王太子殿下にスザンヌ王妃殿下の四人でお茶を飲んでいる最中なのである。
なお、エルヴィラちゃんの父リチャード様と母ナタリーさんは、国王夫妻やライアン辺境伯、レイモンド様、タシオと共に、辺境地域についての施策についての会談中である。
「はい。リーディア様はとても素敵なご令嬢なので、その子育てのコツをお聞きしたくて」
「イーゼルは今、国中の注目の的だ。私達もなんだかんだ王族だし、忌憚のない意見を聞く機会が少なくてな」
王太子夫妻の言葉になるほどと思いながら、わたしは頭をひねる。
子育てで気をつけていること。
何か特別なことをした覚えはないけれども……。
わたしがリカルドを見ると、彼は顎に手を当て、何か深刻な顔をしながら机の上の何もないところを見ていた。
「厳しくしすぎないこと、でしょうか」
「厳しく?」
「はい。子どもの間は筋肉をつけすぎるのも良くないので、知恵と知識をつける教育に特化すると思いますが、とはいえリーディアは女児なので、まだ森林サバイバル経験を積ませるには早いと私も思いまして」
「森林サバイバル!?」
「街中路上での路銀なし生存戦略についても、男児であった私と比較すると格段に難易度が上がるところですが、何分女児対策については父ロイド=リキュールからの引き継ぎが甘く」
「路上!? 生存戦略!!?」
「なので、現在は屋敷内での潜伏や避難行動程度にレベルを抑えて教育を……私は訓練を辛く感じたため、リーディアにはかなり優しい水準でことを進めています」
そこまで告げると、さらりと銀髪を揺らしながら顔を上げた彼は、至極真面目な表情で「こんなところでしょうか」と話を締め括った。
そして、唖然としているわたし達に、首をかしげた。
いえ、首をかしげたいのはこちらなんですけど!?
続きます。







