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暗殺者肉迫

「ええ、ブルーノ。そこは心配しないで。冷たいお父様はともかく、わたしはあなたといっしょにいるから。いっしょに馬たちの世話をして、畑を耕したり雑草を抜いたりするし、粗食に耐え忍んでお風呂も十日に一回ペースぐらいでもガマンするから」

「……」


 自分でも何か違うって思いつつ、彼に約束した。


 だけど、彼は感動しているのか何も反応がなかった。


 そのとき、部屋の扉がふっ飛ぶような勢いで開いた。


 飛び上がりそうになったけど、座った姿勢から飛び上がるのは難しすぎる。


 飛び込んできたのは、黒装束に黒色のマスクをかぶっている男である。


 月光が射し込む中、こちらの様子をうかがっている。

 不気味きわまりない。


 暗殺部隊の隊員ってわけね。


 お兄様から渡されたナイフを握りしめる。


 相手は、腰を落として迫ってくる。


 そうね。小説みたいに焦らしはないわよね。


 即攻撃あるのみ、みたいな?


 その瞬間、ブルーノがわたしの腕をすり抜け立ち上がりつつ暗殺者に突進していった。


 止める暇なんてなかった。


 わたしの手がさまよい、いままでブルーノがいた床上で何かに触れた。


 視線だけそちらへ走らせると、ナイフの鞘が落ちている。


 ダメ。ブルーノが殺されてしまう。


「ダメーッ!やめなさーいっ」


 無我夢中だった。


 ナイフの鞘を抜きつつ、膝立ちのまま突進していた。膝頭がめちゃくちゃ痛いけれど、そんなことはどうでもいい。


 とにかく、ブルーノを助けなきゃ。


「ギャッ!」


 お兄様が言った通りにナイフを突き出した。すると、ナイフが何かにあたった。尻尾を踏まれた猫みたいな悲鳴がきこえてきたときには、立ち上がりつつ小さな手をつかんで窓から飛び出していた。


 もともとよく窓から出入りしているので、鍵をかけていないのである。


 どうして窓から出入りするのか?


 時短とラクだからにきまっている。


 とにかく、小さな手をひっぱり足を動かし続けた。


 向かうは、馬小屋。


 馬小屋の扉は開いたままで、そこに飛び込んだ。


 月光満ちる馬小屋内に、馬たちの気配は感じられない。


 各馬房のません棒が外されている。


 お兄様ね。敵を察知した瞬間に、馬たちに危害が及ばないようません棒を外して馬たちを逃したに違いない。


 さすがね、お兄様。


 って、感心している場合じゃないわね。


「ルイッ」


 ブルーノに呼ばれ、ハッとした。


 とりあえず、彼はなんともないみたい。そこは、ホッとした。


 彼の手を握っていない方の手には、まだナイフが握られたままになっている。


 わずかな月光の中、その刃に血がついているのがわかった。


 なんてこと。突いたときに感触があったのは、ナイフがあいつの体のどこかにあたったっていうこと?


 まぐれあたり?賭け事みたいにビギナーズラックってこと?


 って、そこじゃないわね。


 振り返ると、さっきの黒装束の男が馬小屋の入り口に立っている。


 なんてことなの。増殖しているじゃない。


 三人。まったくおなじ恰好で、馬小屋に警戒しつつ入って来る。


 なにも言わず、手にしているナイフをぶん投げた。


 それから、また小さな手をひっぱって馬小屋の片隅に突進した。


 目的は、その片隅にあるもの。


 小さな手をはなした。


 それから、そこにある大量の物を左右それぞれの手でつかんだ。

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