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怪談

砂風呂

 高校二年の夏にあった出来事なんだけど、部活の関係で知り合った大学生と泊りがけで海に行ったんだよね。


 大学生4人と高校生1人。ボクを入れて総勢6人。


 急用とか学校の都合もあって、ボクと大学生の一人が先に向かうことになったんだ。

 コテージを予約してたから勿体無かったし、急用を伝えられたのも待ち合わせ直前だったしね。


 そんなわけで、ボクと大学生…名前を羽海(うみ)さんとしておこうか…ボクと羽海さんは二人で出発。


 お昼過ぎに日本海を見ることができたんだけど、チェックインの時間には早いってことで、砂風呂が体験できる施設を探して向かうことになったんだ。


 浴衣に着替えて二人で砂に寝転ぶ。

 従業員の方が砂をかけていくんだけど、なんだか脚が妙に重いんだよね。


 ボクは砂風呂初体験だったし、隣にいる羽海さんは特になにかあるようには見えなかったから、おそらくこれが普通なんだろうと思ってたんだ。


 妙に重い脚が気になったけど、砂が全身にかかってたからそのまま砂風呂続けてたんだよ。


 始めはそのままだったんだけどね、5分経つか経たないかぐらいの時間かな、段々と脚にかかる重さが強くなってきてたんだ。


 なんだろうと思って視線を向けるけど、首まで砂に埋まってるから当然見えないんだよね。


 隣に視線を向けると羽海さんは目をつぶってた。

 声をかけて足回りを見てもらおうとしたら脚への圧迫感が急に強くなったんだ。

 すぐに圧迫感が痛みに変わってきたから従業員を呼ぶことにしたんだよね。


 痛みに耐えて従業員を呼んで引っ張り出して貰ったんだけど、脚を見たら全体に赤い痕がついてたんだ。


 いや、赤い痕というよりも、赤い脚の中をもともとの肌の色が不規則な網目状に走ってる感じだったね


 従業員の方が応援を呼んで砂を確認してるのを眺めていたら、浴衣の裾をめくってボクの脚を見てた羽海さんが声をあげたんだ。


『これって手形じゃない?』って。


 そう言われてボクは自分の脚を改めて見てみると、確かに手形だったんだよ。


 大小様々な手形。小さなものは赤ちゃんの手ぐらいのサイズ、大きなものは大人の手ぐらいのサイズまで、脚全体をびっしりと覆うようについてたんだ。


 羽海さんの声に寄ってきた従業員の方達も、ボクの脚を見て固まってた。


 その後マネージャーさんが来て、応接室に連れてかれたんだ。

 お詫び、というか口止め料なんだろうね、封筒を差し出されて少し話をしたんだ。


 こんなことは初めてで、なんでこんな事が起こったのかは分からない。申し訳ございませんでした、って。


 ボクと羽海さんは顔を見合わせて、そのまま軽く挨拶だけして部屋から出たんだけど、帰りの車中で封筒の中身を見たら一人につき3万円が入ってたんだ。


 羽海さんが不自然な程明るい声で、『臨時収入もあったし、夕飯は奮発しようか』って言ったのが妙に記憶に残ったね。


 脚に付いた手形は一晩経つとキレイに消えてたんだ。


 あれは何だったのか、未だにわからないんだよね。


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