悪役令嬢にts転生しましたが、ヒロインとの仲は良好です!
「あーちゃん!」
と甘い声で後ろから抱きついてくるのは、親友の新庄渚だ。何を隠そうこの親友は『トキメキ学園』という某乙女ゲームのヒロインなのだ。その為、見た目もとても可愛いらしい。身長は150cmちょっとで、ミルクのように白い肌に綺麗な艶のある黒髪をロングにした日本人形のような少女だ。性格は明るく周りを元気にしてくれる子だ。しかも周りのことも良く見ていて、色々な気遣いが上手い。そんなところが攻略対象を引き付けるのだろう。流石はヒロイン!半端ない!
そして、そんな私は残念ながらヒロインの恋を邪魔する悪役令嬢的なポジションだ。容姿は茶色の髪をミディアムボブにした小悪魔系の可愛らしい見た目をしており、シルクのような白い肌に引き締まったウエスト、豊に育った胸。自分で言うのもあれだけど凄く可愛い。もし私が男なら間違いなくプロポーズしている。
……だって私の推しだし!マジ可愛い!
そう、もう気付いている方も多いと思うが、私は死んでこの乙女ゲームの世界に転生してきたのだ。私の前世での名前は前川敦という男子高校生だった。なんで男子高校生が乙女ゲームに詳しいかというと、マイシスターがこの『トキメキ学園』にドハマりしていたからである。
……何を隠そう前世の私はかなりのシスコンだった。その為、妹とゲームをする為にわざわざ『トキメキ学園』をお小遣いで買ったのだ。しかもただ買っただけではなく、妹に教えられるように隠しルートなどをネットで調べたり、かなりこのゲームをやり込んでいる。
そんな私の推しが悪役令嬢である二ノ宮あかりだ。何が良いって――もう容姿が抜群に私の好みだった。茶髪をミディアムボブした可愛い系の女の子とかもう最高!
とまぁ、それが現在の私なのだが……最初は凄いビックリした。まず自分の性別が変わっていることにも戸惑ったし、ヒロインの新庄渚が同じ幼稚園にいたことにも驚いた。
そして、ヒロインの存在を発見することでこの世界が『トキメキ学園』の中だと気づいた。初めは二ノ宮あかりという名前は推しと同じだなと思っていたが……まさか本人に転生しているとは。
そんなこんなで、私はヒロインと仲良くなることにした。
まぁ、ヒロインも凄く可愛いし、悪役令嬢であるあかりの次に好きなキャラだ。
私の前世は男子高校生なわけで、『トキメキ学園』に関しても妹が好きだからやっていただけなので攻略対象には微塵も興味がない。なんならヒロインとイチャイチャしたい。
※※
・そんなわけで冒頭に戻る
「あーちゃん!」
「ちょっと、いきなり抱きついてこないでよ渚」
口ではそんなことを言っているが、私の内心は渚に凄いデレデレしている。
「うーん!今日もあーちゃんは良い匂いだね!」
渚はすんすん!と鼻を近づけながら私の匂いを嗅いでくる。私たちは家が近いこともあり、二人で高校に向かっている。ちなみに渚とは幼稚園から中学までずっと同じ進路を歩んできている。
高校も何だかんだで『トキメキ学園』の舞台である桜田学園に進学した。選んだ理由としては家から近くて学力的にもちょうど良かったからだ。正直ヒロインである渚とは親友だし、攻略対象にも興味がないので、私が乙女ゲームのように渚と対立することは無いはずだ。
学校に着いた私が下駄箱を開けると手紙が入っていた。
というよりも多分ラブレターだ。
ぶっちゃけ、私は可愛いのでラブレターを貰うことはよくある。
「どうしたの……あーちゃん?」
「あー、ラブレターが入ってた」
「……そうなんだ」
「だから、昼休みはちょっと屋上に行ってくるね」
「うん、分かった」
私は昼休みに入ると、すぐに屋上に向かっていた。正直、誰が相手でも断るつもりだ。そんなことを思いながら屋上のドアを開けると予想外の人物が立っていた。
なんと攻略対象の爽やかイケメンが私の前に立っていたのだ。いや、どこでフラグ立ったんだよ(笑)
「来てくれてありがとう二ノ宮さん」
「前島くんが手紙を?」
「あ、あぁ」
彼の名前は前島あやと。攻略対象の一人で、何事もそつなくこなし、コミュニケーション能力も非常に高い。個人的にはホストとかバーテンダーとかやってそうだなとか思っている。
しかし、私ってばいつの間に彼を攻略してたんんだろう?
まぁ、渚が好きだから手伝ってほしいというパターンもあるが……
「もう単刀直入に言うね、君のことが好きだ!僕と付き合ってほしい……」
「……」
「返事はまた今度で良いから、それじゃあ……僕は教室に戻るね」
「え!ちょっと!?」
どうやら彼は結構緊張していたのか、すぐに屋上から立ち去ってしまった。まったく、私ってば罪な女……なーんてね。
※※
学校が終わり予定も特に無かった私は渚の家に遊びに来ている。お互いの予定がないと、どちらかの家で遊んでいることが多い。
「ねぇ、あーちゃん……」
と言いながら渚が私に近づいてくる。
いつも見たく抱きつかれるのかなって思っていると。
「……ん、んっ」
なんか柔らかい感触を唇から感じた。うん?え?私キスされてない!?とか動揺していると、渚の舌が口の中に侵入してきて、私の歯茎をなぞっていく。
「ん、んっ、はぁ……ち、ちょっと待って……」
何とか逃れた私は、いったん渚から距離をとる。
「い、いきなりどうしたの?」
「ん?キスしただけだよ?」
「普段そんなことしないでしょ」
「……」
いきなりどうしたんだろう?渚は何か考え込むように目を瞑っている。これは、彼女が昔からやるくせで、何か真剣に考えたいことがある時は目を瞑るのだ。
「私あーちゃんが好き」
「私も渚が好きだよ」
「……likeじゃなくてloveの方」
「うん、私もだよ」
「え!」
私も好きだよと言うと渚は凄い驚いた。
でも、何で急に告白してきたんだろ?
ラブレターが原因?いや、ラブレターは貰う機会は多いし?
「……あーちゃんは、前島くんが好きなのかと」
「は!……なんで?」
「だって……よく前島くんを見てたから」
「なるほど、それで前島くんが私に告白してきたから」
「うん、凄い焦ったよ。あーちゃん取られちゃうって」
「そっか~」
渚は私が取られると思って焦ったのか……ウフフ、いや~なんか嬉しいな!
大丈夫!私は前島くんのこと何とも思ってないよ!
「爽やかだなーって思って見てただけだよ」
「そっか」
「うん」
「つもりあーちゃんと私は両想い……」
「そうだよ!」
「じゃあ、もう我慢しなくていいよね」
「え?」
気づいた時には渚に押し倒されていた。
あれ?なんか渚が凄くやらしい顔してる……
「大丈夫……私にまかせて!」
「え?ちょ……服を脱がせようしないで」
「大丈夫、優しくするから」
そう言った渚の手が私のスカートのなかに入ってくる
ちょ、ちょっと待って!急展開すぎるでしょ!
これ逃げられないやつじゃん!
これR18のゲームじゃ無かったよね!
※※
そんなこんなで、気づいたら朝になってました。結局、あの後は渚に好き放題されてしまった。
うん、身体中が痛い。渚は「あーちゃん」とか寝言を言いながら爆睡している。良かった……朝から第二ラウンドが始まらなくて。
こうして私と渚の関係は少し進んだ。きっと、それはとてもいいことだと思う。こうして関係が進んだ渚と楽しいスクールライフを送れれば、私は満足だ。
それにしても……寝ている渚も可愛いな