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Episode40:お嬢さまはどんなときでも冷静だ

(これは、ハメられましたね……)


ひな子は表情を変えず冷静にそう思う。


オカシイのはこの部屋だけじゃない。

黒鳥たちも正常な人間の範疇を越えた動きをしているように見える。


前衛の小太郎に愛奈、そして以外にもカオルもそれなりに健闘しているのに、それ以上に黒鳥たちが強い力攻めで圧倒していた。


前にバトルフィールド・コンベンションの観戦をしたが、こんなにも圧倒的な強さの戦士はいなかった。

もとより高校生のレベルではない。


どちらかと言えば――。


(愛奈さんが個人戦で戦ったNPC、……全日本チャンピオンとの戦い。いえ、それ以上ですわね)


ふと楢井先生を見る。


彼女がバーチャルマシンの親機の設定をしたが、クローンモードの場合、個人の能力を外部から底上げすることは通常は出来ない。

毎回、その人の身体能力のスキャンを行うのだ。


もし他者の能力を取り込んだところで、脳がその能力とのギャップに耐えられず仮想空間でまともに活動できるワケがない。

脳で処理できる身体能力しか、クローンモードで再現できないのが鉄則。


(それでは、アレが本来の黒鳥たちの実力なの……?)


ひな子が考えあぐねていると、田原の応援をしていたラブが驚いたように言う。


「えっ!?なんで、なんで、なんでー!!?黒鳥たちってカズくんやラブ奈ちんに今まで勝てたこと一度もなかったのに!!!――これって、ヘンだよォ」


その言葉を耳にし、真澄と裕也も黒鳥たちの異変に気づく。

しかし観ているだけで、こちらからは何も出来ない。


「ヒナタ、あのバーチャルマシンにおかしなところがないか、チェックしてみて?」


《了解しました。――スキャンを開始します》


こういうメカ物は、機械オンチな自分ではどうにもならない。

ひな子はヒナタからの情報を待つことにする。




一方、仮想空間の中では小太郎たちが苦しい戦闘を行っていた。


黒鳥たちの攻撃は重くて痛い。

防ぐのがやっとだ。


前衛の小太郎たちは苦戦を強いられている。

相手はすぐに勝敗を付ける気はなく、じわじわとこちらの気力を削るような攻撃を仕掛けてくるのだ。


それはまるで、猫が獲物を(なぶ)るように……。


「田原先輩、おかしいです!ダメージレベルが高すぎます!!」


「なんやえろう痛いと思ったら痛感MAXやて。あんのボインセンセー、なんちゅーことしてくれるんや」


「――楢井先生が、設定をミスるなんて………」


愛奈とカオルも異変に気づき、リーダー格の田原に言葉を投げつける。

だが、田原は今まで楢井先生がバーチャルマシンの設定や調整を行い、不備があったことがなかったので、この状況が信じられないようだ。


「一志くん、先生のことはあとだ。今のことを考えよう!」


「……ああ」


田原の近くにいる健人が声をかけ、彼の集中力を戻させる。

黒鳥たちを抑えこむような作戦も力もない今、チームの要である田原の戦意をそぐのはダメだと健人は感じていた。


健人自身はあまりクローンモードのプレイをしてきていない。

短い時間ながらもチームのメンバーの中で、自分が一番弱いということは確信している。


しかし前衛の愛奈をのぞいて、小太郎とカオルはクローンモードのソロプレイには慣れているように見受けられるが、チームプレイはあまりないのか”チームメンバーに合わせる”といったことはまるで出来ていない。


田原を前に出すと後衛が手薄になる。

だから彼には後ろから前衛へ指示をしてもらいたいのだが……。


そんなことを頭の中で考えている健人をよそに、小太郎が愛奈とカオルより前に躍り出たのだ。


「待って!小太郎ッ!!」


「おい、無茶すんなや!」


二人の叫びを無視し、小太郎は黒鳥のメンバーに殴りかかる。

黒鳥たちのメンバーは前衛後衛が交代で二人ずつで仕掛けてきていた。

なお、黒鳥本人は後衛に座り、小太郎たちが崩れるのをニヤニヤしながら眺めている。


「オレはずっとAOIと戦ってたんだ。アレに比べたらコイツらなんか敵じゃない!」


そう啖呵を切って小太郎は二人を相手しはじめた。


小太郎はAOIとの戦闘でダメージレベルMAXで挑んだこともある。

その時は物凄く痛くて痛くて三日ほど寝込んだほどだ。


でも黒鳥たちはAOIほどパワーもスピードもない。

ヒドイ廉価版AOIのようだ。


(もっと冷静になれば、コイツらの攻撃を見極められるはずだ。――AOIほど強くはないんだ!)


小太郎は相手のパンチを紙一重で躱し、やや前かがみになってハッと目を見開いて驚いているヤツの脇腹に膝蹴りを食らわす。


相手も同じようにダメージレベルMAXなのだ。

ダメージに耐久性が低ければしばらくは大人しくなる。


もう一人は後ろからケリをいれてきたが、小太郎は素早く横へよける。

空振りした相手は短気なようで、周りを見ずに距離を詰めてきた。

愛奈がすかさず後方へ回り込み蹴り倒した。


このあと二人に立ちあがられたら困ると、カオルが倒れているヤツらに追撃をする。


「ほなワイはこの二人をリタイアさせとくんで、会長も一人たのんます~」


敵からの一定のダメージを受けるとリタイア扱いとなり試合が終了するまで動けなくなる。

陣営から健人が走って来て、カオルといっしょにリタイアした者を陣地へ連れて行く。


しかし二人リタイアしたというのに、黒鳥たちはまだ余裕の表情を崩さない。


三対五になったというのに――。


前衛の小太郎と愛奈が困惑気味に顔を見合わせるのだった。

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