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Episode38:お嬢さまもぐうの音がでない

それからしばらくして冒険会の会長である健人が、友人である田原に打診した。


「一志くん、もう黒鳥たちを説得するには彼らの言うようにバーチャルマシンで勝負するしかないと思う。そして小生が相手になる。暴れるだけ暴れれば落ち着くだろう」


「――それなら戦技研の部長である私が!」


「彼らは単純に弱い者イジメがしたいだけなんだ。だから誰かが犠牲になればいい。どうせ仮想空間でのことだ。死にはしない……」


それで相手の気が済むなら喜んでやられ役を買って出るという。

しかし、それでは戦技研の部長である田原の面目は丸つぶれになる。


「黒鳥、それから君たちは戦闘技術研究部から追放になるが、――それでも構わないのか!?」


これ以上にない脅しの最後通牒を田原は口にした。

だが黒鳥たちはいつも以上に、人を小ばかにしたような身振り手振りで彼をあざ笑う。


「べ~つにかまいましぇ~ん。オレっちたちは、あんたの綺麗ごとには飽き飽きしてんだよ。なァ♪」


「だよね~」


「規律、規律ってウゼーんだよ、力が伴わない規律とか誰が守るんだよ」


「イイ子ぶってんじゃねぇよ!このハゲ!!」


「あたしらはいつでも自由なんだよッ!」


挑発的な物言いをする連中だが、今日はとくにヒドイ。

一体、彼らをそこまで慢心させるものは何なのか?


罵詈雑言を部屋中に響かせながら、黒鳥たちは田原や健人に向かって騒ぎ立てる

そこへ今まで一言も声を発していなかった冒険会のメンバーである小太郎が、後ろの壁をバンと殴ったのだ。


「黒鳥!いい加減にしろ!!そんなに勝負がしたいなら、オレが受けて立つ!!!」


一瞬しんと辺りが静まり返ったが、黒鳥たちは小太郎の発言を聞いて笑い出した。


「お遊び会が何言ってんの~?だ~いじょ~ぶ~??」


「イッエーイ☆サンドバッグ、ゲットだぜっ!」


「ボクちゃん、ちゃーんとオムツは付けてるゥ~?」


ギャハハハハハッ!!


黒鳥たちは大爆笑する。


小太郎のとなりにいた真澄はびっくりしてギョッとした顔をしたが、カオルが彼の肩に手をおくと少し穏やかな顔つきに戻った。

一年の裕也はオロオロしながら小太郎を見ている。


そのとき、田原やラブの近くにいた愛奈が小太郎のとなりに来て、黒鳥たちに向かって人差し指をつきだした。


「アタシも小太郎と戦う!黒鳥先輩、いいですね?」


「お、小坂部さん!?」


「ちょっ、ラブ奈ちん??」


同じ戦技研の二人がびっくりして声を上げる。

一方、黒鳥たちは余裕の笑顔で『カモが増えた♪』と喜んだ。

その様子を見て、健人は複雑な顔をしながら田原の肩を叩く。


「小生もでます。――君はどうしますか?」


「黒鳥たちは五人。そしてここで私が出ないワケにはいきません。部のためにではなく、正義のために!」


「キャーッ!カズくんカッコイイー!!」


覚悟を決めた男二人に、黄色い声を上げるギャル。

これは真剣勝負であって、さっきのように自分が犠牲になるということじゃないという意思を健人から感じられた。


戦技研の部長が相手になるというのに、それでも黒鳥たちはニヤニヤとした顔つきを崩さずにいる。


四人のメンバーがそろったが、五人対五人のバトルにはあと一人足りない。

裕也は『自分、ムリムリムリっスー!!』と首を横にブンブン振りながら涙目になっていた。


真澄は恐る恐るカオルの顔を見つめて小さくうなずく。

カオルはそれを見てはフゥッとため息をつくいた。


「ワイが五人目や。そんでええな?」


複雑なほほ笑みを浮かべてカオルが手を上げる。


こうして黒鳥たちと、冒険会と戦技研の混成チームが出来上がったのだった。




冒険会のバーチャルマシンは十六台。

そのうち十体を使用可能にする。


このときボインボインこと楢井先生が、公平を期すために自分がバーチャルマシンの親機の設定をするといいだした。

戦技研のバーチャルマシンも先生がシステムなどの管理を担当していると田原が言うので、他のメンバーも了承する。


すると楢井先生は手慣れた手つきでバーチャルマシンをレギュレーションモードからクローンモードへ移行し、手際よく設定の調整をしてみせたのだ。


その光景を近くで見ていた健人は

「すごい……」

と一言発して息を飲む。


冒険会では親機となるバーチャルマシンの設定は健人が行っていた。

だから彼は先生のしていることを一番よく理解しているみたいだった。


ただ部屋の置き物のように立っていたひな子は、ここへきてマシンに乗らない真澄と裕也を捕まえて、どうしてこうなったのかを聞きだしてみようとする。


「どうして冒険会の部屋に黒鳥たちが来てますの?」


「えっとー、()()()()()()で挑戦状を送りつけてきたからっス」


「Sメッセージ……?」


「学園が運用、管理している伝達アプリですよ」


「??」


そんな名前、どこかで聞いたようななかったような~?


ひな子が首をひねって考え込んでいると、真澄が自分の情報端末を彼女に見せようとしたが、ネットにつながらないようで接続エラーの表示が現れる。


「えっ、ネットにつながらない!?」


「自分のもつながらないっス!」


真澄が端末を動かすのをみて、裕也も自分の端末をいじる。

一生懸命にネットにアクセスしようとする二人を眺めながら、まだ回線の復旧ができていないのだとひな子は思う。


それはさておき、肝心なことを真澄に聞くことにした。


「Sメッセージ?っていうのがあるということは分かりましたが、みなさんどうしてわたくしに内緒になさっていたのですか?」


「えっと、それは……」


ひな子の言葉にビクッと身体を震わせた真澄は、歯切れの悪い何か濁した返答をする。

そこへ同じくマシンに乗らないラブが寄って来て、ひな子の額にをちょんっと軽くデコピンしたのだ。


「か弱い女の子を守ろうとした男ゴコロを理解してこそ、イイ女なのよ~ん♪」


「イイ女でなくても結構。情報の共有の方が大切ですわ。報告・連絡・相談は社会のルールですのよ」


「そういうメンドくさ~い女に情報を送らなくて正解ですわん。ミャハ☆」


「なんつーか、旭川センパイもう少し自分で情報端末になれるように努力した方がいいっスよ?」


「やっだ~ァ。裕也ちゃんってば、セ・イ・ロ・ン♡」


「――ぐっ」


ラブどころか裕也にまで痛いところを突かれ、ひな子は言葉に詰まる。

コレが終わったら、竹谷から絶対に情報端末の使い方を教えてもらおうとひな子は決心するのであった。

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