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はじめてのおつかい 規格外

 一橋(ひとつばし)(ゆめ)は、神童として有名だ。


 難解な学術書をたった5歳にして読み解き、誰も気付かなかったその書の矛盾を指摘して見せた。それだけに留まらず、その僅かな矛盾を解消し完璧な理論に昇華させて見せたのだ。


 これには学者である父親、一橋(かい)も驚いた。


 学者である解の広くゆったりとした書斎には、壁1面を覆う巨大な本棚に古今東西の論文や学術書が揃っている。

 それらは当然、世間一般の5歳の子どもが理解できるモノではない。

 しかし、努は小さな頃(5歳でも十分小さいが)からその書斎に入り浸り、暇さえあれば書物を捲った。


 最初は両親も父の真似をしているに過ぎないと、寧ろ微笑ましく見守っていた。


「ねぇ、とうたん。これはどういういみですか?」

「ん? あぁそれかい? それはこれこれこういう意味だよ」

「では、これは?」


 発語がみられてすぐ、努は父を質問攻めにした。生来が生真面目な解はそんな幼子の質問にも自分が受け持つ学生を相手にするように真摯に応えた。


-教育は年齢に関係なく平等に本物を。


 それが解の信念でもあったので、例え子どもの“質問ごっこ”だろうと誤魔化したりせず本物を与え続けた。

 当然、理解しているとは思わなかった。しかし、努は己の知的好奇心を満たすために質問を続けていた。

 それが意味する処は1つ。ちゃんと理解できていないことを理解していたということ。

 また、打てば響くように、包み隠さず本物を与え続けてくれるとうたんが大好きだった。


 いつの頃か努の質問攻めがピタリと止んだ。


 暫くしてそれに気付いた解は、本の少し淋しかったが、“質問ごっこ”に飽きて“読み耽るごっこ”に移行したのだろうと結論付けてさして重要視はしなかった。

 それでもまだ幼い努が解の書斎に入り浸り、難解な書物に読み耽る様は、端から見れば違和感の塊でしかなかったが、努が質問をしなくなった訳は割りと単純である。


-質問をしなくても、読み進めることが出来るようになったから。


 そうして努は、着々と己の知識を深め、冒頭の発見へと繋がった。


 さて、そんな努に1通の招待状が届けられた。差出人はアメリカの大学教授、コリン・ワトフォード。


 小さなレディへ


 まどろっこしいのは好きではないので結論から言わせてもらうが、私の長年のモヤモヤをあっさりと解消してくれた貴女にとても強い興味を持つに至った。

 ついては、是非とも貴女と楽しい一時を共にしたいと願うに至ったので、筆を取った。

 誠に遺憾ながら予算の都合で1人分の旅券しか手配が出来なかったが、叶うならばわたしの元に訪れて欲しい。


      コリン・ワトフォード


 用件は簡潔な癖に十分まどろっこしい言い回しのその手紙に努は心踊らせた。


―たった1人でアメリカへ行くなんて…


 渋る両親を論p…説得し、アメリカ行きを勝ち取った努の、国を跨いだはじめてのおつかいが幕を上げる。

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