振り
カツン。
無機質な物同士がぶつかった音が木霊する。
カツン。
カツン。
カツン。
規則正しいリズムを刻んでいる。
所謂、『振り子』
糸に垂らされた鉄球が隙間無くいくつか並び、端の1つが振り戻されるとすぐ隣の鉄球に当たり、並んだ反対側の端の振り子が同じエネルギーで振られ戻ってくる。そうしてまた反対側の鉄球が動く。
何度も何度も。
ソレが規則正しい音の正体だった。
「美しいよね」
僕の目の前の人が声を発した。
その人物こそ、僕をこの部屋に誘った張本人。40代半ば、男性、教授。
くたびれたYシャツに紐タイ。グレーのスラックス、足元には薄っぺらなゴム製のブラウンのサンダル。少し後退した白髪交じりの黒髪は後ろに撫でつけられている。
細い銀縁の眼鏡越しの視線はずっと振り子に注がれていて、何が可笑しいのか笑みを浮かべている。
いい加減、僕は苛立っていた。
この部屋には彼に呼ばれたから来たというのに、彼はまるで僕に興味は無いというその態度。
この部屋に来て決して短くない時間を、ただただ振り子の音を聞いて過ごした。
もう充分だろう。
「あの、用が無いようでしたら僕はこれで」
革張りのソファーから立ち上がろうと前傾姿勢をとった。
「まぁ、待ち給え」
しかし、彼は僕を呼び止めた。
当然そうなるよね。
用があるから呼ばれたのだ。
僕は座り直して彼を見た。彼もやっと僕を見る気になったようだ。
「君を以前から見ていた」
その割に放置でしたけどね。
僕は心の中だけで毒づく。
「タイムリープ」
ボソリと呟かれたその言葉に、僕は頭を鈍器で殴られたような衝撃を受けた。更に、心臓を鷲掴みにされたように息苦しく、冷や汗が一気に噴き出した。
何で?
いつ?
どこで?
僕の混乱は留まる処を知らない。
「そんなに怯えなくても大丈夫」
彼の眼光が妖しく光った。